魔法使い、世は情け

「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

「!?」

 突然、僕の回想をさえぎって空から叫び声?が響いた。空を見上げた瞬間、なにかが僕の顔に落ちてきた。僕はそのなにかの下になってしまい下敷き状態になった。

「いって〜」

 僕は顔をあげた。

「ぁ…その…えっと…ご…」

「ご?」

「ごめんなさい!!!今すぐにどきます!!」

 なにかがそう言った。その瞬間、自分の上に乗ってきたなにかがどき始めた。僕は改まってよく見てみると、なにかは女性だった。紫のフード付きロングマントを着ていたが、僕が下なので彼女の顔がよく見えた。彼女の顔は世間一般のきれいで可愛らしい顔だった。そして、彼女の目は空のように透き通っている色だった。

 

「あぁ…僕は大丈夫だ。君こそ大丈夫だった?ケガしてない?」

 僕はそう、尋ねた。

「は…はい!大丈夫です!」

 彼女は、ビクビクしながら答えた。


「いたぞ!下にいる!」


 その声は、先程彼女が落ちてきた屋根の上から聞こえてきた。


[ビクッ]


 その声に彼女は驚いた様子であった。そして、先程よりもさらにビクビクしていた。

 その時、上からフードを被った人間三人が降りてきた。彼女は、そんな彼ら(もしくは彼女ら)に隠れるかのように僕の後ろに回った。


「そこのオニイさん。」


 フードを被った誰か一人(深く被っているせいで誰が喋っているのかはわからない)が僕に喋りかけてきた。声の質が低かったため男性であろう。

「そこから右か左に一、二歩動いてクレルかな?」


 僕は彼女を見た。

 ひどく怯えた顔そして、涙目になっている空色の目で僕の顔を見上げていた(僕の身長は165cmだが、彼女の身長は僕よりも3cmぐらい小さい)。僕も男だ。そんな目で見られてしまったら答えは一つしかなかった。


「断るっと言ったら?」

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