災禍とは
ここで一度、災禍の七獣について情報を整理してみよう。
現在、個体名まで判明している災禍は以下の三体となっている。
・絶龍リヴァイスハーカ
・緋皇ベルフレア
・天魔ネロデウス
この三体は、既にいずれかのプレイヤーと遭遇したことがあり、
ネロデウスとベルフレアは日中と夜間それぞれ時間帯は異なるが、パスビギン森林を越えた全てのフィールド、エリアでランダムエンカウントし、リヴァイスハーカは大陸東部の海域を中心に出現するとのことだ。
それから二つ名だけが判明しているのが三体。
まさかその内の一体が判明していたとはな。
宝君エルドマム——念の為、幾つかの攻略サイトとか掲示板を巡回してみたが、エルドマムという名称は特に見当たらなかった。
もしかしたらダイワみたく情報を秘匿しているプレイヤーが他にいる可能性はあるものの、少なくとも大っぴらになっていないことは確かだ。
まあ、だからといって実際に攻略しに行こうとはならないが、エルドマムが潜伏しているかもしれないって場所には興味がある。
ダイワが言っていたが、ワンチャン一攫千金も狙えそうだしな。
そして、最後の一体に関しては完全にノーデータだ。
NPCを含め誰も存在の断片すら知らないし、ちょっとした手掛かりすらない。
なんなら未だに眷属の一匹すら確認されていない始末だ。
判明している……というより、予想されていることはたったの三つ。
恐らく、そいつが第二の獣だということと、司るのが”白”と光属性だということ。
ぶっちゃけ他の災禍の情報が手元にあれば、考察勢でなくとも辿り着けそうな内容でしか無かった。
マジでそれくらい最後の一体の情報が無いという表れでもある。
とはいえ、現状だとメインストーリーにも関わることはないだろうから、これについては完全放置でいいだろう。
「さてと……それじゃあ、今日もアルクエ頑張るとしますか」
春休み三日目。
目が覚めた時には十二時を回っていた。
ガッツリ徹夜でアルクエをやってしまい見事に生活リズムが崩壊してしまったが、まあ長期休みなんてそんなもんだろう。
ミネラルウォーターとカロリーバーで水分と栄養補給を済ませ、俺はアルクエにログインした。
「——という訳で、これで刀を一本打ってくれないか?」
真っ先に向かったのは、クランハウス地下一階——武具工房。
昨夜、霊峰で起きた事を説明しつつ、採掘した大量の鉱石をライトに見せれば、なんとも苦々しい表情が返ってきた。
「……色々と突っ込みたいことがあるが、まず先に言っておく。残念だが、これらの素材で武器を作っても、今のジンムには装備できないぞ」
「え、マジ?」
「ああ。霊峰で入手できる素材を使った装備は、大半がレベル99になったプレイヤー向けの性能をしているから、十中八九装備要求ステータスに届かないだろうな」
うっわ、めんどくせえな……。
となると……前もってぶっ壊れ性能の装備作って、エリア攻略ヌルゲー化計画はおじゃんか。
あわよくばと思ったけど、それなら仕方ない。
当初の予定通り全部売っ払って今後の資金にするとしよう。
「——だが、これなら今のジンムでも扱える武器を作れそうだな」
言って、ライトが手に取ったのは、墨のような色合いの光沢の無い鉱石だった。
「それは?」
「
「ボスクラスの素材か」
「何でもいい。昨日のレッサーグリフォンの素材でもいいし、一昨日の正体不明のエネミーの素材でも構わない」
「……そう言われると、逆に悩むな」
果たして何の素材を使ったらいいものか……。
インベントリに格納されたアイテムをばーっとスクロールする。
が、どれが正解なのかが思いつきそうにない。
「ちなみに参考として聞くけど、ライトはどういう奴の素材を使って武器を作ってたんだ?」
「俺か? 俺は……エリアボスに有効そうなのを片っ端から作って、複数の武器を運用してたな。俺の場合は素材さえ集められたらいつでも作れたし、装備作成スキルのレベル上げにもなったからな」
「なるほどな。すまん、全く参考になんねえ」
「だろうな。……悪い、忘れてくれ」
ライトは、一つ咳払いをしてから、
「まあ、無難な回答で言うと、メイン運用なら汎用性が優れているか、今後の拡張性の高そうな素材を使うのが良いと思うぞ。武器は後から強化させられるが、ボスの種類によっては性能の頭打ちが早い物もあるからな」
今、ジンムが装備しているクァール系の装備とかが典型的な例だ。
続けてライトは、そう補足を加えた。
(……なるほど、汎用性と拡張性か)
いまいちどれがそれに当てはまるのかは分からないが、つまり似た系統の上位個体が多くいそうな奴がうってつけってことか。
……つっても、なんかいたかな。
今まで倒したことがあって、それでいて上限が高そうな奴……ん?
「あ、これとかどう?」
「……悪くない。そうか、そういえばジンムにはこれがあったな」
インベントリの奥底に眠っていた
「すぐ作業に取り掛かるから、ジンムは上で待っていてくれ。完成したらそっちに持って行く」
そして、黒煇鉱石を手に早速作業に取り掛かった。
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災禍の七獣”第◯の獣”の◯に入る数字は強さによる序列ではありません。
なので仮に災禍同士で戦った場合、誰が勝つかはその場の状況次第といった具合になります。
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