第5話「件の盗賊ってコイツらか?」(※Bt
列車の建造を意気込んでから一ヶ月が経とうとしていた、
この一ヶ月とても長かった列車の車両を作るにも部品量が多く何度も挫折しそうになった、仮面ラ〇ダー電王に出てくるデ〇ライナーの様に空中を走るようにしようとした時はどうしようか悩んだものだ、然し、諸々の試行錯誤の結果・・
「遂に・・・遂に出来たぁ――――!!」
両手をブンブン振り子供の様にはしゃぎ喜ぶ男の前には紙に描いたイラスト通りの見た目をした列車が鎮座していた、
「いやーにしても、、これは列車ではあるけど、要塞みたいだな、」
その外見は望んだ歯車や光の線が刻まれ、車体全体をパイプラインが駆け巡っている、メインカラーはダークパープルを採用した、
然し、内部を凝ろうとした結果、全体的に大型の作りになってしまった為、軍事要塞と言われても仕方が無い程巨大になってしまった、まあ確かに装甲列車も少しは考えていたが、
「まあ、取り敢えず今日はここを旅立つんだし、最後のこの場所を満喫しますかね、」
そう、列車ができたということは遂に旅行の準備ができたということだ、然し、最後の日ぐらいは見納めにこの森を散策するのもいいかもしれない、結局食料も最初にアルトレア皇国で買った食量の
「それじゃ歩いてみますか!、」
男は意気揚々に森に歩き出した、
まだ昼間だから明るく、木漏れ日が眩しい、青々とした草や折れた小枝の上を歩く音がサクサクと響き耳心地が良く、鼻を通る青々しい香りは自然を感じるいい香りだ、気分がとても落ち着く、
「これがマイナスイオンって奴なのかな、」
吞気に森を堪能しながら歩いていると、後ろの草むらから葉の擦れる音が聞こえた、男は即座に振り返るが草むらから出てきたのは、小さい兎にユニコーンの様な一角が生えた小さい獣だった、
「なんだ、この生き物、」
男が小さい獣を眺めていると、その獣は小さく「キュイ!」と一鳴きして男にすり寄ってきた、
「ん?どうした?」
足にすり寄ってくる獣を抱きかかえると、その獣は男の腕の中でゆっくりと休むように眠ってしまった、
「急に、なんだ?」
この獣、列車建造中の休憩に読み漁っていた本の中で見た気がする、
「確か、
男は腕の中で眠る獣を見て起こさぬ様にそう呟いた、
確か、好奇心旺盛で人懐っこい性格だったか、生物生体図の中に書かれていた内容だから正しいはずだ、
「何でこんなところにいるんだ?地形詳細の情報ではここら辺の平原には出ないはずだが、」
まさか、俺がこの森を作っちゃったから生物の分布が変わった・・とか無いよな?
・・・
不意に沈黙が落ち、森に静寂が響く
「いや無いな!うん!無いはず!きっと!多分!恐らく・・、」
無いであってほしい・・、
そして、焦って大きい声を出してせいか、腕の中で眠ったはずの
「・・・、やめて、そんな澄んだ目で俺を見ないでください、お願いします・・」
何となく気まずくなりそう言うが、
大して重いわけでは無い、首で支えられない訳でもない、だが何故か、何となく身体全体に圧がかかってる気がした、
「あ、戻ろうですか、さいですか、わかりました戻りましょう、」
猫に似た自分勝手だが可愛い、そんな圧に操られている、そんな感じだ、男は再び「キュイ!」と元気よく返事をした
「キュイ!キュイキュイ!!」
家に着いた
「さて、何か、懐かれてるな、俺、」
今やほとんどを列車に移動して、本棚が残るだけとなった洞の中を飛び跳ねる
「まあ懐かれたのなら、名前を付けてあげた方がいいのか?」
「どんな名前にしよう」そんな風に悩み始めるとさっきまで洞の中を飛び回っていた
「そうだよな、お前も名前が欲しいよな!」
男が両手で掲げながらそう言うと、また同じように、「キュイ!!」と元気溌剌に鳴いた、
「だよな、そうだなぁ、キュイって鳴くから〈キュウ〉はどうだ?」
男がそう言うと、
「あれ?嫌か?じゃあ、
男が再度考えた名前を言って見ると、モチは顔を輝かせて「キュウ!!」と喜びながら鳴いた、
「よし、それじゃ取り敢えず今は列車の中でゆっくりとしてくれな、」
そう言って男はモチを腕に抱え駅を模した木造の土台へ上り、客車を模した個室型車両の前に立つ、入り口を開ける為の
「外壁を複雑にしたら扉も分厚くなったからついでにかっこよくしてみたけど・・やっぱいいな、この扉の機構」
近未来な隔壁扉を見てその動きを堪能しながら、中へ入り腕の中のモチを広いリビング仕様の車両の中に解き放つ、「キュ~ウ!!」とまだ見ぬ場所への興味からか、室内を飛び跳ねるモチを見て、「可愛い・・」と語彙を失いながら飛び跳ねる姿を眺め堪能すると、静かに隔壁を閉じた、
「そろそろ夜になるな、この洞とも、もうお別れか、」
洞の中に入り、木の内側を撫でながらそう思う、長いようで短かった、そんな気がする、一ヶ月もいたのにこの洞の中で過ごした期間は短い、本を取りに来たり食事の時に利用したぐらいだ、
「あと残ってる仕事と言えば、この洞の清掃とここら一帯の安全確認ぐらいだな、」
日が傾き空全体が夕焼け色に染まっている、ササっと済ませるが吉だろうな、
「それじゃ、やりますかね、」
例えば
「これで掃除兼住居の整備は終了ってもう夜じゃん!」
掃除が終わり空を見上げるとさっきまでの夕焼けは何処へ行ったか、見えるのは漆黒となった
「これは急がないと出航が明日になっちまうなぁ、さっさと一帯を見ちゃいますか」
男は背中に持ち続けていた片刃刀を抜刀しその剣先を地面に刺した、
探りの魔法:
「
地面の感覚がじわじわと脳内に直接流れ込んでくる、これは慣れそうに無いな・・気持ち悪い感覚だ、
男が瞳を閉じながら顔を歪めて地面の感覚に集中していると複数の地を駆ける振動があることに気付いた、
「なんだ?振動が一・・三・・・六人?いやもっと・・」
獣にしては規則的過ぎる振動・・然もどれも一様にこっちに向かって来る、、まさか、これが
男が真剣にその振動を追っていると最早振動ではなく、はっきりと男の耳で足音を捉えた、
「!!・・後ろか!」
男は反射的に地面に根付いた剣を地面から引き剝がし背後に回す、すると相手側が振り下ろして来たらしき、武装と片刃刀が衝突し、火花が散る、
「チィ!!」
舌打ちと共に背後の人影が距離を取る音が聞こえる、男は勢い良く振り返り人影を見た、ボロ布のフードマントを羽織り、フードで顔を隠した姿は
男が冷静に盗賊の一人を観察していると、その盗賊は再び男を切り捨てようと、剣を振るいながら踏み込んで来た、
ちょうどいい、何故か最近、戦闘だとかに対する能力が著しく冴えている、ならばその目覚めた才を存分に使ってやろうじゃないか!!
「オラァ!!」
盗賊は叫びながら剣を振り下ろす、男は瞬時にその剣を片刃刀で抑え、刀身の根元に付いたソードブレイカーの凹みへいなす、剣が凹みにはまったことを確認した直後、片刃刀を捻じり梃子の原理で剣を破壊した、
「なっ!?」
盗賊は剣が砕けた勢いで体勢を崩した、男はその刹那を逃さずに即座に片刃刀の柄を盗賊の腹部へねじ込む、「アガッ!?」と盗賊は柄をねじ込まれた衝撃で腹部を抑えて膝から崩れ落ちた、
「・・・危ねぇ、殺すところだった、」
流石に人殺しなんて業を背負って旅はしたくない、剣柄を先頭に向けずに刃を先に出してしまっていたら、考えたくは無い、
「取り敢えず一度列車を隠そう、さっきの振動、一つだけじゃなかったしな、
男は魔法を唱え、列車を空虚に同化させる、
「さてと、残りの奴らは何処だ、」
列車は隠し、視界も開けた、敵影を見つける為なら絶好とまでは行かなくても充分な条件は揃っただろう、ここら一帯の約半径百メートル圏内も大体は今日までに伐採してある、来るなら来いだ、
男が辺りを見回していると、森の端に敵影を確認した、先に戦った者と似た格好の人影が六人、多少大柄な人影が二人、それと・・
「・・・狼?」
人影の群れの中央を歩く大型の狼の様な獣、ライオンと狼を足し合わせた様な大型の巨躯に狐の様なふわりとした白き獣毛、そして分かりやすく表すならサーベルタイガーに似たような口に収まり切らない程巨大な牙に、貫かれそうな眼光の蒼の瞳、そして額から生える二本が捻れあった様な一角、脚からは短剣の様に鋭い爪が顔を覗かせている、
「なんだあれ?」
男は
「
名:
種属:牙狼獣・???
属性:
魔力特性:有
属力:盗賊
「
本にも出ていない生物、つまりは変異種だ、稀に通常の生き物が特定の地域に依存してその地域に適した形に変わると、
「
フェンリルは夜行性の牙狼獣だ、牙狼獣の中でもトップクラスの凶暴性を持っている上に通常の牙狼獣と違い星力を使う、
「確か、その凶暴性と強さから、《夜の獣王》って呼ばれてるんだったか・・・」
百獣の王みたいだな、だがそうなると、それを従えてるあの盗賊は普通じゃない、確か図鑑に、
男がそうして近寄る盗賊に目を凝らしていると、左右から近寄るさらなる盗賊に気付く、男は一度意識をその左右の二人に移し、勢いよく飛びあがる、盗賊は殴り掛かって来ていたのか、飛び上がっている間に同士討ちしたらしい、着地した時には気絶した盗賊二人がいた、
「取り敢えず何とか・・なったのか、」
男は「それじゃあ後は、」と正面から迫る人影の群れに目を向けるが、その時には既に盗賊はこちらに駆け出していた、こちらから攻め込んでも良かったが、その結果として誤って殺しては意味がない、狙うは不殺の勝利、攻撃を誘い隙を突いて気絶させる。
人影の一つがフードマントから両腕を出し、腕に取り付けられていた仕掛け武器を起動する、見たところ腕につけられたそれは、遠目から見れば見えないほど短い極短剣だ、恐らく暗器の部類だろう、人影はそれを拳に紛れて振りかざし、連撃を始めた、他の人影もそれに続くように同種の暗器で攻撃を始める。
男は全ての連撃を間一髪で躱し続け距離を取る、男は人影を視界から決して外す事なく、慎重に息を整える、人影は舌打ちをすると叫んだ、
「めんどくせぇ動きしやがって、とっとと有り金全部置いてきやがれ!!」
「流石、盗賊らしいセリフだな、」
「んだとコラァ!!!!」
男は挑発するように言い放つと案の定、人影は怒鳴り何かを合わせるように他の人影と見合わせると散開するように走り出した、多方向に別れた事から、挟み撃ちでも狙っているのだろう、男は全方位を警戒し目を凝らしその時を待つ。
ざくりと言う一人の土を蹴る音を皮切りに他五人を入れた全ての人影は極短剣を構え駆け出した、男はその時を待ってたように僅かに口角を上げた。
初めて使うがやるしかない、周囲が寸前にまで迫る中、自らの立つ地面に手をかざし叫ぶ、
「
男が叫んだ直後、男の周囲の地面が途轍もない勢いで
男は空間魔法の応用で
男は息を
あの重撃を何度も連発され喰らうのは分が悪い、流石は
男は慎重に思考し、何とか正面に立つ《夜の獣王》を退ける方法を考える、が、獣王は非情にもその思考する隙を与えず、瞬速でとびかかる、男は片刃刀を構えその重撃を何とかいなすが、
非常に不味い、獣だと侮った訳ではないが、それだとしても異常と言える強さだ、然も依然として次なる攻撃を始めようしている、このまま肉弾戦を続けていれば、防ぐことすら限界を迎えて、死ぬ、
「肉弾戦も限界なんだ魔法を使ったって、もういいだろう」
「
男が叫ぶと同時に
土煙が消え、開け始めた視界には、未だ悠然とした姿でこちらを睨む白き獣がいた、男は片刃刀を息を呑みながら構える、だが、
「魔法を使うか、外道、」
「・・・」
喋った。
男は驚愕しつつも、それを表に出さぬように冷静を装い、
「・・・驚いたようだな?」
「!!・・何故そう思う、」
「我が話し始めた一瞬、顔が強張っていたぞ?何とか抑えようとしたようだが、反射はどうにもならなかったようだな」
ばれている、どんなに抑えようとしても、やはり完全に感情を抑えるのは無理だったようだ、
「そりゃあ獣が話すなんて聞いた事が無かったからな、」
「獣?ああ、そうか、」
何処からか現れた。盗賊の人影が着ていたものと同じボロ布のフードマントを獣である身体に被せる、そうして身体全体は覆われ見えなくなると、
「あたしが何者か教えてやる、」
そう言った、
「これでわかった?」
「お前を殺す理由も、」
「さあな、殺される理由は全く理解出来ないね、」
男は
ほとんどの結果は変わっていない、然し、一つだけ、明確に変わった場所がある。
名:
種属:牙狼獣・獣人
属性:
魔力特性:有
属力:盗賊
《獣人》、???と言う表記が消え、獣人に変わった、男は
だが、男が違和感を覚えた事は別にある、獣の姿をしていた時には見なかった左目を覆う眼帯だ、それだけなら気に留める程では無かった、然し、その眼帯の裏、そこが
男が獣人に見極める中、獣人は烈火の如く叫ぶ、
「殺される理由が分からないだと!?、あたしの同胞を殺したのはお前だろうが!!!」
「いや、殺してna・・・────」
「黙れ!!!そんな外道を生かす気は無いこの森の中で死に絶えろ!!!」
獣人はこちらの話も聞かずに
三日月刀は男の片刃刀と共に地面目掛けて振り下ろされ深く埋まり込む、獣人は三日月刀を即座に手放し、飛び下がると共にその腕を
「この化物が・・」
「どっちが化物だ、どっちが・・」
獣人は男を化物と言うが男から見ればあんな破壊の一撃を放つ獣人側が化物である、何とかいなす事はできたがもし押し負け切られていたらと思うと、身体中に冷や汗と鳥肌が走る。
獣人は男を睨みながら地面に片手を着く、直後、獣人の真下には純白に輝く魔法陣が開かれた、
「これで潰す!!」
男は固まっていた、当然だ、通常なら決して有り得ない事が起きたのだから。
この世界の本の中には種族のルーツの様なものが記された物もある、それに書かれた獣人の内容は、簡単に言えば、
〈獣人は魔法が使えない〉
そう、使えないはずなのだ、詳しく深掘りするのを今はやめておくが、そのままの意味で、獣人は魔法を使うことは不可能、その筈だった。
男の前で起きる決して起きないはずの事象、世界のバグと言っても過言ではないだろう、だがそれでも、そうだとしても、今はそんな事に固まっている暇は無い筈だ、このまま固まっていればあの陣によって発動する魔法か、その魔法により起きた間接的事象に、自分は殺される。
それだけは御免だ、
男は即座に魔法陣の能力を
名:
男は視た内容を確認し、安堵の息を吐く
この魔法なら対応できる・・
男は
上だ、男自身の前方上空、そこに最終転移地点がある。そこまで読んだ所で男は目を開き正面を見る、然し既に獣人はそこにはいない、右へ左へはたまた宙に、至る所を飛びながら男へ迫っている、だが、既に最後の転移地点を読んでいる男はそんな迫る獣人を落ち着いて目で追う、いや、追うというよりは現れた箇所へ即座に視線を移す感じだ、そしてそのまま読んでいた通りに獣人は最後、男の前方上空に転移し、獣腕を振りかざす、
「死ねぇ!!!」
獣人は落下の勢いを借り、そのまま先程の破撃を放とうと空より降り迫る、男は殺意に滾る獣人の目に視線を向けず、片手だけを獣人へ向ける、
「
直後、掲げた片手の中には風の種が生まれ一瞬の内に爆風とも言える程の風圧が起きる、
「うにゃ!!」
獣人はそのまま吹き飛ばされ、可哀想な事にそのまま真っ逆さまに頭から落ちた。
────
後書き
どうも
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