第4話「旅の乗り物作りましょう!!」
「はぁ・・はぁ、」
男は今アルトレア皇国を出国し、最初のスポーン地点とでも言おうか、、に向かっている、
「はぁはぁ、相変わらず広い、この平原・・・」
道は真っ直ぐに歩いて来ただけだから迷う訳は無いが、ただただ何も変化の無い道を歩き続けるのは中々の苦行だ、
しっかし、こんなに長かったか?この道、、何か最初に歩いた時より長く感じる、、
「あー疲れた・・って、は?」
俯きながら歩いてたせいで気付かなかったが正面を見れば雄大な青々とした大森林が広がっていた、
「なんだ、これ?」
道を間違えたかな?いやいやいや!一本道に歩いたのに間違えるはずは、、
「取り敢えず突っ切って見ますか、」
まあ、何事も冒険って言うしな、
男は落ち着いて森の中へ入って行った、
「にしても、ここまでデカい森っていつ間に出来たんだ?一日でってのも考えずらいし、、」
大体、こんなデカい森があれば、アルトレアに行く時にだって気付けたはずだ、つまり、それから導き出される結論は、
「道を間違えた・・だよなぁ・・」
要するに迷子、遭難だ、そうなんですねぇ、何て冗談言える状況でもないな・・
「まあ、まずは森突っ切ってから考えよう、」
男はそう呑気に考えながら森を歩いて行った・・
しばらく歩いていると森の中でも一際大きく巨大な針葉樹に近い見た目の巨木が姿を見せた、
「デカい巨木だな・・」
その壮大とも荘厳とも言える程に巨大なその樹木からは神々しささえ感じられる、男はその木を眺めて気付く、
「ちょっとまてあの剣って、」
男は視線の先には目印にと刺していたはずの剣が木の根元に突き刺さっていた、男は驚愕の顔をしながらも、ひとまずは剣を回収するために向かった、剣の正面に立つと男は片手で柄を掴み力を入れる、
「うおりゃ!!、って固い!!ふんぬぅ!!おんどりゃ!!」
男は剣を片手で抜くことを諦め両手でがっしりと掴むと体重ごと利用して思い切り引っ張る、そうして引っ張っていると、ガシャ!!と音が鳴り、そのまま勢いよく振り抜けた、然し、その勢いのせいで男は後方に激しく転倒してしまった、
「痛った!、ってなんだこれ!?!?」
頭を抑えながらを剣を見て男は目を丸くする、剣の地面から下に刺さっていた部分が土汚れが付いたなどではなく力を失ったかのように真っ茶色に錆付いた
「錆付いたってレベルの錆じゃねぇぞこれ、、所々刃こぼれ起こしてるし・・一日だけでこんななるか?かなり年月経ったって言われた方が納得できるぞ、」
男は「まさか」と巨木に振り返ると考える、この木が剣の力を吸った?有り得ない、とは思いたけど、それしかないよな、一日でこんな森ができるってことは・・それぐらいしか考えられん、この剣は俺が作り出したし、これが俺の魔力?の塊だとすればアニメとかラノベ理論の適用でどうとでも言える、
「と言ってもなぁ、凄すぎだろ・・俺の魔力・・」
その魔力で森出来ちゃった理論を適用すればこの森の一日で出来た理由も頷ける、まあ出来てしまったのならそれはそれでラッキーだったかもしれない、
「この巨木の根元、いい感じに洞になってるしな!、ここを拠点として使えば仮拠点を作る手間も省ける、」
そうだ、そう考えれば良いこと尽くめではないか!さっき歩いて来た時に木の実も見つけれた、食料も問題ない、そして仮の住処まで手に入って、
「異世界生活っぽくていいじゃねぇか!!」
男は喜びの声を上げた。
────
「さてと、、こんな感じでいいかな?」
男は巨木の周りの木を伐採し、家具や生活用品を作って巨木の洞の中に運び入れていた、本棚、テーブル、椅子、ベッド、少ないけどこの四つのがあれば生活は出来る、え?料理はどうするかだって?簡単さ、金を作り出したのと同じ要領で複製する、そうすれば飯には困らないしね、
「よし、以外と様になってきたな、日陰になってるから涼しいしちょうどいい」
「さてと、」男は洞の中の運び込んだ椅子にすわるとテーブルに向き、収納魔法を出す、そしてあの本屋で本をしまう時とは逆の事象を思い浮かべる、すると、
「おお!、出てきた、けど・・」
男は自分の目の前に再び現れた本積みの塔に飽き飽きしながらもちゃんと本を出すことに成功したことに安堵した、
「さーてこの塔の中から地形書を見つけ出せと・・」
はぁ、大変だ、こんなに大量の本から一冊を見つけなければいけないとは、めんどくさい、
男はダラダラとしながらも着実に一冊一冊確認していく、
「えーっと〈神歴創世書〉、、違ぇ、〈
男は本を取っては避けて取っては避けてを繰り返し探す、が中々見つからない、男は半ば投げやりに本を取ると、遂にあった、
「あったこれだ!
男は歓喜に満ちながら地形書を開くと表紙から先の中身が落ちた、「は!?」男は焦って拾い上げるが理由がわかった、表面の表紙に分厚く巨大な地図が折り畳んで挟み込まれていたのだ、
「そういうことか、焦ったぁ~、」
男は落ち着いて地図を広げると巨大な地図が姿を現した、
「でっか・・」
なるべく大きめに作ったはずのテーブルぐらい大きさがある気がする、男はテーブルの上の本を床に下ろし、テーブルいっぱいに地図を広げる、
「これがこの世界の地図か・・取り敢えずまずはアルトレア皇国を探そう・・・」
男は地図に指をなぞらせ探す、中々にこの世界は大きいらしい、中々見つからない、、
「・・あった!!でその下に広がってる平たい地形が・・〈エンデリア幻草原〉、、」
指の先にあるアルトレア皇国の下に描かれた、地図に描かれてもはっきりわかるほど大きい草原の名前を確認する、
なるほど幻とでも思えるぐらい巨大な草原ってことか、納得だ、で、アルトレア皇国以外に近くにある国は・・
指をなぞらせアルトレア皇国のエンデリア幻草原を挟んで向かいにある国を指さした、
「〈ルラスタラ星聖国〉・・・面白そうだな、ここにしてみよう、」
この世界でのんびり旅をするのはもちろんだが、、旅の終着点はどうするか・・・そうだな、この異世界の国全てを旅しきる・・何てどうだろう、面白そうだ、
昔アニメか何かで見た旅物の物語、色々な国をみて渡り歩く、素晴らしいじゃないか、きっと大変な事もあるだろうが面白さを最優先で行こう!!
「そうと決まれば移動用の乗り物がいるな、何がいいだろう、」
よく異世界で移動する人は馬を使うけれど、乗馬って大変そうなんだよなぁ、然も生き物だから、その馬の健康状態にも気を配らなければならないし、そうだなぁ、別に、生き物じゃなくてもいいんだよな?
男はそう考えてニヤリと笑みを浮かべる、
「列車・・・何てどうだろう、面白そうだ、」
元の世界にいる時に一度やってみたかった夜行列車の旅行・・費用高すぎて行けなかったけどこの世界でなら出来そうな気がする!!
「となれば列車のデザインを考えないと・・フッ!元の世界でイラストレーターをしていた腕がなるぜ!!」
男は元気よく洞を出て先程の本から覚えたこの世界の紙の材質を複製し、なにも書かれていない無地の巨大な紙を広げる、
「さて、どんな見た目にしようか、」
どうせなら物凄くカッコイイ見た目にしたい、そうだな、近未来感のあSF的なデザインにスチームパンクな要素を混ぜて見たらどうだろう、うん、絶対かっこいい!、
「さて描きますか、」
元の世界のイメージを元に様々なペンを生み出すと男は直ぐに嬉々として描き始めた、
────
「出来た・・・」
何度も書き直し一日ぐらい書いただろうか、一度夜になった気がしたが何となく明るくなってほしいと思ったら光の球を作れたりしたせいで、あまり夜を過ごした実感がない、
男が描き切った列車は、寝台列車の瑞風とブラックラピートを組み合わせたような先頭車両にパイプラインや歯車、そしてスチームパンク感を出すため推進機構には蒸気機関を使うことにし、SFチックな光の筋が張り巡らされた途轍もなく良い見た目をした列車なった、しかし、
「これを作るんだよなぁ・・」
男は凄い意気揚々と描いたは良いものの、いざ書き終わりシラフになった今思う、
これ、建造するの無理じゃね?
確かに俺には絵を描く画力はある、だがしかし、
「ものづくりの才まであるとは言っていない、、」
テーブルや椅子みたいなシンプルな見た目の単純な作りの物ならまだしも、こんな複雑な列車は建造するとなるとかなりの時間・・というか、作れない、
「うーん、そもそもこの世界の金属とか諸々の素材についてもまだ理解できてないしなぁ・・・そうだ!」
鉱物辞典みたいなもの買ってないだろうか?あれだけの本を大人買いしたんだ、動物と植物の辞典もある、だったら鉱物辞典を買っててもおかしい話ではない!!
男は再び洞に戻ると急いで床に置かれた本の塊を漁り始める、すると・・
「ほんとに買ってた、」
男が手に取った本には〈鉱物標本付図解書〉と書かれた分厚い鉱物辞典だった、
「まさか、本当に買ってたとは、、辞典系が並べられてた箇所でも買ったのだろうか、まあ何にせよあってよかった、」
そんな事を考えながらページをめくっていく、表紙に標本と書かれていた通り、一枚一枚が普通の紙より僅かに分厚い1ページの中には鉱石や金属等の説明書きと共にその現物だと思われる鉱石や金属の小型の標本が紙に埋め込まれていた、
「えーっと・・俺が見たいのは宝石とかじゃなくて金属とか合金の説明なんだが・・」
そう言いながら、パラパラとページをめくっていくと〈合成金属・錬金魔鋼〉と書かれたページにたどり着いた、
「ここら辺だよな分類名的に・・・列車って確か昔は鋼とかを使ってたんだっけ、でもそんな物よりもっと強度のある素材を見つけたいなぁ、」
この世界は魔法だってある、ならきっと魔物などと呼ばれる部類の生物もいるだろう、だからこそ、そういった生物の攻撃を受けてもビクともしない位の強度が欲しい、重量的な問題は・・・多分魔法で何とかなる!!
「!!、これは・・いいかもな、」
男が見つめる先には、〈
〈
錬金魔鋼の一つ、
「おぉ・・何かよくわかんないけど、強そう、」
これはきっと、いや絶対丈夫だ、
「でも建造するのも部品の量的に不可能・・・」
イラストレーターの仕事の中で何でもとことん凝りに凝ったイラストを作るために、依頼された乗り物だの道具だのは、一度しっかりと部品の細部まで調べてから描くことにしている、
「一度だけ依頼があった列車も描く為にしっかり細部まで部品を調べて頭に入れたが・・」
男は独り言であっても言葉に詰まるぐらい言いたくない、
「部品量は異次元レベルなんだよな・・」
そう、部品や構造は分かるが工具のそれとは部品の量が桁違いだ、
「
男は初めて自分で魔法に名前を付けたことに興奮してガッツポーズしたが、直ぐに直近の問題を思い出し、首を振る、
部品を一つ一つ作る以外の方法・・試しに部分部分を既に組み合わさった複合部品として製造して、それを組み合わせるプラモデルみたいな作り方をすればどうだろう、、
「試しに一つ作ってみるか、」
構造的にはセミ・モノコック構造を用いた車体構造にすることは決まってるし、まずは試しに台車部分だな、素材は鉱物辞典に載っている標本の
洞を出て直ぐに実践しよう、洞を出てすぐ目の前の森に囲まれた広場で男は手をかざす、手の内に魔法陣が生まれ、その魔法陣の元から
ガコン!!と重々しい金属音が響く、
「出来はしたけど、どうだ?」
中々に重そうな音を響かせていたが、やはり重量は中々なようだ、男は早速細部を確認しようと手で触れるが、
「おっと!?」
台車はいとも簡単に動き、男はよろめいた、
「あれ?あれだけの音響かせといて、案外軽いのかどっちなんだ?」
胸下程まである台車のあまりの軽さに驚きながらも手で一部を掴みながら動かしてみる、ガタンという振動と音が響き早速欠陥が見つかった、
「やっぱり全部を一つの金属で作るのは無理か、」
どうやらさっきのガタンという音は簡単に言えば台車のスプリング部分にも
試しに軽いのを活かし前進と後退を素早く繰り返してみるがあるタイミングでバキン!という音と共にスプリングが折れてしまった、硬いからこそスプリング部分に振動の負荷が集中してしまったようだ、
「しゃーない何か変わりになるものを辞典の中から他で探そう、」
そうして台車を放置して洞へ戻ろうとする、洞の入り口前に来た時だった、
ジュゥ~・・
「は?」
振り向くと生み出した台車が湯気の様な絹色の煙を上げて溶け、液体金属のようになっていく最中だった、男は慌てて駆け寄ろうと、近くまで走ると溶けた台車は時が巻き戻る様に台車の形を取り戻す、
「なんだ?」
男は試しに溶けるか溶けないかのギリギリに立つと一歩身を引く、すると台車は再び溶け始め、男が一歩近寄ると再び形を取り戻す、どうやら生み出した物は距離を取り過ぎると形を保てないらしい、
だがおかしい点がある、アルトレア皇国で出した金塊は距離が離れても溶けていないのだ、今の台車との距離は二メートル程つまりそれ以上離れれば形を保てないはずだ、然し俺が出した金塊は形をそのままにしていた、
「何か台車とあの時の金塊に違いがあるのか?」
男は小さい掌サイズの
「溶けない?」
何故か小さい塊は溶けずに地面に鎮座している、どうやら大きさが関係あるようだ、だがそれが分かっても、台車以上の大きさでも形が維持できる方法が見つからなければ意味がない、
「俺から離れても形を維持させる方法は・・」
とにかくまずは形状維持の方法を見つけなければ、
「あ、そうだ、」
アファスさんが言ってた
「《形状維持》、」
放った言葉は、剣の時と同様に台車に絡み付きその魔言を染みつける、
「どうだ?」
再度男は離れるが、今度はなにも起こらず台車はそのままの形を維持していた、
「成功した?」
男はそのまま洞の入り口まで離れてみるが形を変えない台車を見てやっと成功を喜んだ、そしてそのまま戻ると辞典からメインの目的である、スプリングに利用できる金属を探す、
「これは・・」
男が開いたページの名称には、《
《
合成金属の一つ、
素晴らしい、まさに利用価値しかない金属である、これならスプリングに思う存分使えそうだ、
「これを使ってみるか、」
男は紙に埋め込まれている
感覚もしっかりと掴めたので改めてスプリングの部分だけを今の
男は洞の外で再び生み出した台車サンプル二号を触る、手触りは変わらないが、動きはどうだろう、一号と同じく前後に動かすがスプリングを変えたおかげか、今度はあまり直接的な揺れや衝撃は感じない、
「これで台車は問題は無さそうだな、」
さて、台車の問題は解決したと言って良いだろう、加えて複合部品として出しても問題なく動く事もわかった、これなら建造することが夢ではなく実現できるかもしれない、
「となれば今度作るべきは車体ってわけだ、でも待てよ、車体と台車はできてもその二つを組み立てる時に接合部がズレたりしないか?」
組み立てるとしてもこの世界にクレーン何て都合の良い物があるわけないだろう、要するに自分のさじ加減で接合しなければならない、
「となると台車の位置を平行に揃える為にも、線路が先か?」
男は少しの間思案する、
「まあ先に線路作った方が台車の置き場にも使えるし、先に作るか、」
線路はまだ作るのがらくな部類だ、等間隔に並ぶ枕木にレールが乗っているイメージをすればいい、気を付ける事とすればレールの熱膨張を視野に入れレールの隙間をしっかりとることだろうか、
「よし、出来た、」
十メートル程の線路を生み出すとその上に台車を乗せる、しっかりと車輪がレールと噛みあったようだ、横にずらそうとしてもビクともしない、だが前後にはちゃんと動く、
「完璧だな、」
完成した線路を前に笑みを浮かべた、
「さて、今日はここまでにしますかね、」
気付けば空は夕方特有の橙色に染まっていた、興奮して気付いてはいなかったが相当疲れがたまっていたようだ、男は洞に戻ると食事も忘れて直ぐにベッドに倒れこむと死んだように眠った。
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