アイドルたちの心境 有明彩未の場合


 ふう、今日はほんとよく食べたなぁ。マネージャーの奢りだったからたくさん食べちゃった。……それにしても、あたしってほんと冷静になれないなぁ。あんな煽り無視すればいいのに、報復のつもりで余計なことしてダンスかき乱して……。


 こんなんだから、前のグループでもいっつもメンバーと喧嘩して、担当してる前のマネージャーにも嫌われて、挙句クビになる始末。あたしの可愛さに嫉妬されるのは仕方ないけど、事態を酷くすることは直さないといけないなって、反省してる。


 【有明彩未またやらかしてやんの笑】

 【てかまだアイドルやってんのかよ】

 【ファン0人説あるぞ】


 でも、エゴサしてこんなムカつく投稿見てたら言い返したくて仕方ない。そもそも、あたしにはマネージャーっていうファンがいるんですー。0人じゃありませーん。ああ、やっぱり我慢できない、リプおく——


「あれ、電話?」


 ろうとしたら、ちょうど電話がかかってきた。あれ、マネージャーだ。


「もしもしマネージャー、どうしたの?」


「ああ、ちょっと話がしたくてな。今大丈夫か?」


「うん、平気だよ」


「よかった。……今日のことなんだけどさ、お前のやらかしはあったけど、途中までは本当によかったと俺は思ったよ。だから、自信は無くさないでほしい」


「え、い、いきなりどうしたの?」


「いや、ツイッターでお前の名前を検索してたら、悪口書かれてたからさ。心配だったんだ、彩未のこと」


 マネージャーが心配してくれた。なぜか、それがあたしの胸をどきっとさせる。な、なにこれ……どうしたんだろう、あたし。


「ファン0人説なんてこともないからな。少なくとも、俺はずっとお前のファンだから」


「……あんがと。喧嘩ふっかけよーかなって思ってたけど、マネージャーが励ましてくれたおかげでやめる気になったよ」


「……ギリギリセーフか」


「ん?」


「いや、なんでもない。それじゃ、明日からまた頑張ろうな。おやすみ」


「お、おやすみ!」


 マネージャーが電話を切ってしまったことが、ちょっと残念に感じた。もっと話したかったな……なんて、あたしらしくないこと思ってしまったのかな?


 でも、本当に嬉しかったな。あたしのこと心配してわざわざ電話かけてくれるなんて……あれ、もしかしてマネージャー、あたしに気があるのかな?


 いやーそうだよね! こんなに可愛いアイドル担当してたら恋に落ちないわけがないもんね! ほんと、マネージャーも隅に置けないなぁ……事務所的にも禁止されているから、告白とかしないってことだよね。


 ……そんなこと気にしないで、してくれればあたし……う、ううん! 今はアイドルとして、もっと人気になることを優先しないとね! マネージャーのためにも、恩を返してあげたいし! 


 よーし、それじゃあ今からマネージャーにラインでたくさんアイデアおーくろ。あたしのこと好きなんだから、すぐに返信してくれるに決まってるよね!


――――――――――

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