牧野内千秋はとにかくすごい


 午前の練習を終えて、みんな各々休憩に入った。全員経験者ということもあって、踊りに関しては俺から言えることなんてないだろう。特に彩未に関してはもう言わずもがなって言ったところか。


「お、千秋」


 自販機で飲み物を買おうとしたら、ちょうど千秋も買いに来たようで、ばったり鉢合わせた。


「……どうも」


 気怠げに挨拶をして、千秋は買った缶コーヒーを飲みだした。そういえば、千秋とは二人きりではあまり話せてないな。いい機会だし何か話そう。


「千秋はコーヒーが好きなの?」


「……まぁ、そこそこ好きです」


「そっか。どんなコーヒーが好きなの?」


「……別に、ブラックならなんでも」


「へぇ……」


 やべぇ、千秋はどう会話を広げていったらいいのかよくわからない。他の二人は勝手に話してくれるからやりやすいんだけど、千秋はそういうタイプではなさそうだからな……さて、どうしたものか。


「それにしても、千秋ってスタイルいいよな。何かトレーニングしてるのか?」


 とりあえず、他の話題をふってみることにした。すると、千秋はピクッと反応して、俺のことをじーっと見始めた。あ、あれ……地雷踏んでしまったか俺?


「どれぐらいいいと思ってる? グループの中で誰が一番?」


「え? う、うーんと……みんな良いと思うけど、スタイルはダントツで千秋だと思う」


「ふーん……。私、毎日ジム行っているからその成果だと思う。他のメンバーと違って、そういうところにも気を配ってるから」


「そうだったのか。毎日ジムに行くなんてすごいな」


「でしょ、私すごいから。マネージャーはわかってくれててよかったよ。それで、他にはないの?」


「え、他には?」


 物欲しそうに褒め言葉を千秋は要求してきた。もしかして、褒められるのが

好きなのか?


「うーん、ダンスもすげー上手。あとやっぱり顔がいい」


「うんうん、そうだよね。私ダンスも練習してるし、顔も他のメンバーなんかの比じゃないぐらいいいから。やっぱりマネージャーは理解があるね」


 ドヤ顔で千秋はそう語る。やはり、褒められるのが好きなんだろうし、自分に対しても圧倒的な自信があるんだろう。比じゃないのは言い過ぎな気はするが……多分、それ指摘したらめんどくさいことになりそうだったので、言わないでおく。


「あ、ああ。千秋はすごいよ。きっといつか、アイドルとして人気になれるはずさ」


「もちろんその予定だよ。このグループでも、日本でも、世界でも、私は一番を取るから。その特等席、マネージャーにあげるよ」


「あ、ありがとう……じゃ、じゃあ俺もずっと千秋のこと、ファンとして応援し続けるよ」


「……ありがと」


 千秋の思ってもみなかった一面を見れて、なんだかんだ話してよかった。でも、俺が思っていたよりかは……まともじゃなさそうな感じがするのが、少し不安要素だな。


――――――――――

星が欲しい……人気欲しい……。

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