弓田紫音は自分に自信がない
「あ、紫音」
彩未のお願いでコンビニにスイーツを買いにきたら、偶然紫音と鉢合わせた。どうやら紫音も買い物をしている途中だったらしい。
「ま、マネージャーさん……お、おはようございます」
「おはよ。紫音も何か買い物?」
「は、はい……わ、私の生命線であるストロングゼロを買いに来たんです……あ、な、何するんですかマネージャーさん! か、返して……私の生命水を返して!」
ヒョイっと俺は紫音からストゼロを取り上げて元の場所に戻す。すると紫音は俺のことをポコスカ殴って取り返そうとするが、全く痛くないので気にしない。
「こんなものを生命水にするな! せめて月一のペースにしろ」
「む、無理です! そんなことしたら私メンタルが耐えられなくなっちゃいます! か、返してくださいぃぃぃぃお願いですぅぅぅぅぅ!」
早くも禁断症状が出たのか、紫音は俺の服を掴んでコンビニの中で懇願してくる。当然、狭い空間なので俺たちはすごく目立つ羽目になり、いろんな人から怪訝な視線を送られる羽目になった。
「わ、わかったわかった一本だけなら買っていいから!」
それに耐えきれなくなった俺は、一本だけ許可した。いや……このまま叫ばれ続けたら警察呼ばれかねないし。
「ほ、本当ですか!? よ、よかった……これで今日も生きていける……!」
今までにないぐらい嬉しそうな笑顔を向けて、紫音はさっさとストゼロを買っていった。ついでに、俺も早く店から出たかったのでテキトーなスイーツ買って外に出た。
「全く……」
「ご、ごめんなさいマネージャーさん。で、でも……本当に、これがないとやってられないんです」
「それはよーくわかったよ。でも、どうして紫音はそこまでストゼロが好きなんだ?」
「……好き、というよりはやめられないんです。私、自分に全然自信が持てなくて……でも、これを飲んだら全てを忘れられるから……」
「そもそも、どうして紫音はそんなに自信がないんだ?」
「え? い、いや……私、他のアイドルの人たちと比べて全然可愛くないし……全然売れたことないし……前のグループの人気投票もいつも最下位だったし……何も、うまくいったことがないんです」
紫音はうつむきながらそう教えてくれた。そうか、成功経験がないからここまで卑屈になってストゼロに頼るようになったのか。
「でも、昨日も言ったけど俺は本当に紫音のこと可愛いと思ってるよ。絶対、人気が出る素質もある」
「ふぇ!?」
「守ってあげたくなる可愛さがあるし、それに声だってとても素敵だ。他の人が気づいていなくても、一ファンとして俺がその魅力に気づいてるからさ。もっと自信持ってよ」
「そ、そんなお世辞なんか言わなくても……」
「お世辞なんかじゃないよ。俺は本気だ」
「ほ、本気……? じゃ、じゃあマネージャーさんは……わ、私がどんなにゴミクズでも、ずっとファンでいてくれるんですか?」
「当たり前だろ。俺はお前たちのファンだからさ」
嘘偽りなく、本音をしっかり伝えたら紫音は照れつつも嬉しそうにしてくれた。実際、俺は紫音が絶対人気アイドルになれるって信じてるから。
「ふ、ふふっ……ま、マネージャーさんに褒めてもらえて……ちょ、ちょっとだけ自信が出ました……そうだ、お祝いに一緒にストゼロ飲みます?」
「練習前なんだからダメに決まってんだろ!」
結局ストゼロを飲もうとするこの癖は絶対に直させるけどな。
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星が欲しい……人気欲しい……。
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