有明彩未はトップアイドルになりたい


「さて、先に準備しておく……あれ」


練習場所の準備を先に整えておこうと思って早めにやってくると、すでにステップを刻む音が練習場から聞こえてきた。どうやら先客がいるようだ。


「あ、おはよマネージャー。早いじゃん」


扉を開けて様子を見てみると、そこにはすでに汗をかいた有明さんの姿がそこにあった。今来たばっかりではなくて、すでにある程度練習をしているようだ。


「おはよ、有明さん。有明さんこそ早いですね」


「よーやく新しいグループとして活動することが決まったからね。頑張ってトップアイドルになりたいからさ、いてもたってもいられなくて早めに来ちゃった。もしかして、ダメだった?」


「全然。それだけやる気があることはいいことですから」


「でしょー。てかさ、マネージャー固過ぎ。もっとフランクに接してよ。」


「うーん、でも仕事の関係ですし……」


「あたしがそうして欲しいの! みんなもそう思ってんじゃない?」


 そういうものなのか? でも、確かにちょっと固過ぎるかなぁって気はしていたから、ちょっとフランクに接してみることも大事か。


「じゃあそうするよ、有明さん」


「え、下の名前で呼んでくれないの?」


「わ、わかったよ、彩未」


「ウンウン、よしよし。じゃあ、ご褒美にあたしのダンス見せてあげる!」


 どうやら機嫌が良くなったようで、彩未はダンスを俺に見せてくれた。……す、すげぇ、あれだけ自分に自信があるということも納得できるほど、彼女のダンスはすごかった。


「どうだった?」


「す、すごかった……」


「でしょでしょ〜。……でもなーんか、性格のせいでイマイチダンスは注目されないんだよね。みんな、あたしの悪口ばっかり言っててさ。そりゃ、あたしに嫉妬して言ってんだろうけど……」


 普段自信満々な様子を見せている彩未が、ちょっと弱音を吐いていた。そっか、ネットで叩かれていることなんて気にしていないと思っていたけど、彩未だって傷つくに決まってるよな。


「でも、俺は本当に感動したよ。他の奴らが悪口ばっかり言っても、俺は彩未のダンス、いろんな人にオススメするよ」


「ほ、ほんと?」


「ああ。きっと、お前の一ファンとして俺はいつまでも応援するさ。そのためにも、お前たちを高みに絶対導くから」


「ま、マネージャ……。絶対、約束だよ。ずっとあたしのファンでいてくれるんだよね?」


「もちろん、お前たちのずっとファンでいるさ。」


 担当しているアイドルがより良い結果を出せるよう、一ファンとして全力で頑張るのがマネージャーとしての役目だからな。


「でも、炎上はほどほどにしろよ。前のグループでは男性アイドルと匂わせして炎上したんだろ?」


「そ、それ違うから! 向こうが勝手に言い寄ってきて、それをあしらったら逆ギレされてああなっただけ!」


「え、そうだったの?」


「そう! そ、そもそもあたしまだ誰とも付き合ったことないし……」


 彩未は頰を赤らめて、恥ずかしそうにそう言った。てっきり俺はあの記事が真実だと思っていたけど、彩未は本当じゃないことにずっと苦しめられてきたんだな……。


「ごめんな、俺もそんな嘘信じちゃって」


「全然大丈夫。……あ、でもお詫びに美味しいスイーツ買ってきて欲しいなぁ」


「わーったよ。ちょっと待ってな」


 お詫びということで、俺はスイーツを買いに練習場を出て行った。それにしても、嘘で炎上していたとは中々彩未も大変だったな。このグループでは、そんなことないように、俺がしっかり情報管理しておかないと。


【マネージャー、まだ?】

【マネージャー、まさかあたしのこと見捨てたの……?】


 数分後に、彩未から結構な数のメッセージが溜まってしまった。このめんどくさい性格は、改善してもらわないといけないな。


――――――――――

星が欲しい……人気欲しい……。

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