アイドルたちと打ち合わせ
「おはようございまーす」
「おはよ、マネージャー」
「お、おはようございま……す」
「おはよう」
グループ結成が決まった翌日の朝10時過ぎ。メンバー全員に事務所に集まってもらい、今日は会議をすることにした。どんな活動路線で行くのか、誰をリーダーに任命するのか、グループの名前はどうするのか……まだまだ、決めないといけないことがたくさんある。
それを今日のうちにある程度は片付けておきたい。そもそもこいつらを相手にする場合、正直どんなトラブルが起こってもおかしくないから余裕を持ったスケジュール管理をしないと。
「じゃあ、今日は活動路線とかグループの名前とか決めましょう。じゃあまずは活動路線として……どんな歌とかダンスをしたいとか、意見あります?」
「はいはいはい!」
おお、元気よく有明さんが手を上げてくれた。意見が全く出なかったらどうしようと思っていたけど、これなら問題なさそうだ。
「あたしが一番目立つ歌とダンス!」
あ、役に立たねぇ。
「あ、有明さん。あくまでグループとして活動するわけですから……皆さんを押し出す案とかはありませんか?」
「え? あたしがすごく人気になればグループも人気になって、みんなパッピーじゃない。これ以上のベストはないと思うんだけど」
すごい自分に対する自信があるなこの子。それはいいことなんだけど、さすがにその案は受け入れられないな。……上司からも、全員が人気出るようにしよろ、って圧かけられたし。
「す、すごい自信ですね有明さん……わ、私なんかそんな根拠のない自信ありませんよ……ああ、やっぱり私は道端に転がっている石みたいに誰からも相手にされない人生を過ごしちゃうんだ……ストゼ」
「飲ませねぇよ!」
弓田さんが勝手に自爆してストゼロをまた飲もうとしていたので、ギリギリそれを今日は阻止することができた。それにしたって、こいつはいつもストゼロを持ち歩いているのか……?
「こ、根拠のない自信!? 紫音、あたしが人気でないって言いたいわけ?」
やべ、有明さんのスイッチが入ってしまった。
「ち、違います……。有明さん、見た目は確かに可愛いし、踊りもすごい上手なの私知ってるけど……せ、性格ゴミだから」
なんか、意外と毒舌だな弓田さん。オドオドしながらも有明さんの怒りのツボに刺さる言葉をぶっ刺している。それに対して有明さんは大人の対応なんて知らずに、喧嘩を買ってしまう。
「あ、あんたがいう!? 少なくとも勝手に自爆して暴れる奴よりかはマシよ!」
「う、うう……それを言われたら……ううう」
げ、泣き出してしまった。仕方ない、慰めよう。
「だ、大丈夫ですって弓田さん。弓田さんは見た目も可愛いですけど、何よりその小柄な身体にも関わらずストロングゼロ大好きっていうギャップ、とても良いと俺は思ってますよ」
「ほ、ほんとですかマネージャーさん……」
「はい、だからもっと自分に自信を持ってください。俺も、全力でサポートするので」
「あ、ありがとうございます……や、やった……褒めてもらえた……嬉しい……お祝いに、ストゼロ飲んじゃおっかな……ふふっ」
「いや、ダメですから」
褒められて口元がゆるゆるになり、すごいウキウキとしだした弓田さんだけど、ストゼロを飲もうとしたので全部没収した。嬉しい時にも飲みだしてしまうのか、こりゃ重症だ。
「マネージャー、あたしは?」
「有明さんもすごく可愛いですし、昨日見せてもらった自撮りもとてもよかったですよ。それに、自信満々なところ、とても頼りになります」
「でっしょー。いやーわかってるわね、マネージャー。あんたこそあたしのことよーく理解してて良いと思う!」
「ど、どうも」
有明さんもとりあえず褒めておいたら機嫌を直した。なんか、この子らひたすら褒めてあげればとりあえずなんとかなる気がしてきたな。さて、そろそろ本題に戻したい。
「じゃあ、本題に戻りましょう。そうだ、牧之原さんは何か案とかありますか?」
今日これまで二人の相手をしてばかりだったので、話を牧之原さんにふる。すると彼女は、一言こういった。
「……なんでもいい」
一番困る奴だそれ。牧之原さん、何を考えているのかよくわからないから、潜在的なニーズとかも全く検討つかない。うーん、そしたら活動方針は一旦おいて、グループの名前から決めよう。
「じゃあ先に名前を決めましょうか。一応こちらで出した案はこれになるんですけど……」
予めこちらで出しておいた名前の案をみんなに見せる。じっと見つめては、色々と熟考しているようだ。そりゃこれから活動していくにあたって、グループの名前はすごい大事だからな。
「うーん……これ……いや……」
「む、難しいのです……」
「……」
数時間後。
「いや、これ……やっぱ……」
「ぜ、全然決まりません……」
「……」
結局、日が暮れても名前は決まらず。今日決定したことは練習のスケジュールだけだった。
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