担当したアイドルは想像以上の地雷でした


「……疲れた」


 家に帰るなり、俺はすぐにベッドへ横たわった。新しいプロジェクトに対する緊張とかももちろんあるが、何より担当することになったあいつらの対応が疲れた。


 まず弓田紫音。彼女が呑んだくれた後始末がすげーめんどくさかった。


「ご迷惑をおかけしてすみませんでした……ああ、やっぱり私はこの世にいちゃいけない人間なんだ……何もできないゴミクズなんだ……ああ、やっぱり飲まないとやってられない……」


 といった調子で、シラフに戻ってもまたストゼロを飲もうとするのでそれを止めるのを抑えるのに大変苦労した。なんで彼女はあんなに自己肯定感が低いんだろうか……そんな悲観することないと思うんだけどな。


 でもまぁ、それだけなら問題なかったんだが。


「マネージャー、この自撮りチョー可愛くない?」

「マネージャー、この角度も最高じゃない?」

「ねぇ、なんで返信しないの?」

「まさかあたしのこと見捨てたの?」


 弓田さんのことを介抱している最中に、有明彩未からそんなラインが沢山来ていた。自分に自信があるのはいいことだけど、これはこれで極端だよなぁ。気付いた時にすぐ返信して誉め殺したから機嫌直したみたいだけど。


 どっちかの性格を足して二で割ればちょうど良さそうなんだが……まぁ、慣れればどうにかなるだろう。うん、多分。幸いにして牧之内さんはまともそうだし、メンバー全員がイかれているわけでもないからな。よし、風呂入ってあいつらのこと調べたら寝よ。


 そんなこんなで風呂に入って体の疲れを洗い流し、近くのコンビニで買ってきた栄養ドリンクを飲みながら、あいつらのことについて調べ始めた。さて、まずはフォロワー10万人いる有明さんのことから調べるか。


「おお……アンチスレとかあるじゃん。結構嫌われてるんだなぁ……ん、【いちご娘解散のきっかけを作った有明彩未についてまとめてみた!】なんて記事があるな」


 確かいちご娘って他の事務所のアイドルグループだったっけ。今まで仕事がアイドル以外のものだったからあんまり詳しくないんだけど、有明さんはそのグループのメンバーだったのか。


 記事の内容を見ると、誰でも書けるような前置きが長ったらしく書いてあったので、それは飛ばして肝心のところを読んでみる。するとどうやら、有明さんは男性アイドルとの匂わせ疑惑で炎上し、それに対して喧嘩腰の対応を続けてしまったようだ。


「炎上に喧嘩腰で対応とか一番しちゃダメなやつだろ……そこはしっかり教えておかないとな。それに男性アイドルとの疑惑もしっかりと追及しとかないとな」


 そして記事の続きを読んでみると、その対応がメンバーの怒りにも触れて、有明さんを除いた他のメンバーで新たなグループを結成したらしい。つまり、はみ出し者ってことか……こりゃ中々な経歴で。


「うちの会社も結構な博打に出たってことか。下手したら会社も燃やされるかもしれないってのに……でも、確かに可能性は感じるよな」


 性格にこそ難はあるかもしれないが、アイドルとして必要なものは兼ね備えているし、何より本人もやる気がある。上手くいけば、トップへの道も夢ではないだろう。


「それを実現できるよう、俺が頑張らないと。さて、次は弓田さんだな」


 弓田さんのことを検索にかけると、有明さんほどではないもののヒットした。どれどれ……うわ、新宿で酔いつぶれているところを写真に撮られてんじゃん。【メンヘラアイドルの末路】とかタイトルつけられているし。


 あ、事務所をクビになったって前にツイートしてる。大方酒関連でやらかしたんだろうな……絶対禁酒させよ。え、あの子23歳だったの。確か有明さんが19で、牧之内さんが21だから一番年上なのか……むしろ逆だと思ってた。


「とにかく酒をやめさせないとまずいな。あとは自己肯定感をどうつけていくか……メンタルトレーナーを検討してみるか」


 弓田さんも持っているものは間違い無いんだ。ダメなところをマシにして、いいところを伸ばしていけばきっと上のステージに行ける。


「次は牧之内さんか。……あれ、特にヒットしないな」


 資料によると経験者であるらしいんだけど、特にヒットしたりしない。モデルとして活動してることはわかったけど、口コミとかも特に見当たらないな。まぁ、何も無いほうがこちらとしてはいいから問題ないけど。


「牧之内さんは真っ当になるようしていかないとな。……ああ、プレッシャー半端ないけど、俺にとってもチャンスなんだから、頑張っていこーおー!」


 覚悟を決めるために一人でオーっと腕を上げた。……ちょっと虚しいなこれ。


――――――――――

人気が出ないと僕のメンヘラも発動しそうなので、

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