第3話

通所初日、遅刻することなく到着した。

スタッフのお一人が、おはようございますと大きくも小さくもない心地良い声で話しかけてくれた。

嬉しかったし、安心した。

しかし、「今日は自由にしてくださいね」と言われて、少し戸惑った。

本棚にある北野武さんのハードカバー『余生』を手に取った。

ホワイトボードと輸入家具と黒板の大きな部屋に座りたかったが、先に6名が談笑されていた。

僕には、もうすでにコミュニティーが形成されているように見えて、入る勇気など無かった。

結局、道路を見下ろす木製の高いテーブルにある足の長い椅子に腰を下ろした。

視野の右側にはラブホテルがあり、スーツを着た方々が何人も吸い込まれていった。午前中からまずまずの客足だった。

若かった頃のことを少し思い出したりもした。


少しずつ、大きな部屋(訓練室)に入ることが出来るようになっていった。


通所期間にかけがえのない存在を得た。

友達がいなかった僕は、尊い存在を得た。

それは、シンパシーとは真逆のものだった。

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