第2章「逆転の夢」

 鳴り響く騒音。僕はこの音がいつまでたっても気に入らないが目を覚ますのには最適だろう。

 スマートフォンに手を伸ばしその音を止める。時刻は午前6時40分を表示していた。やけに目覚めに違和感を感じたが特に気にはならなかった。

 いつものようにカーテンを開き洗面所に向かい顔を洗った後自分の顔を見つめる。

「ニキビ、、、」

 どうでもいいことばかり気になってしまう。僕の悪い癖だ。朝食はいつものように昨日買ったパンを胃の中に流し込む。起きるのは遅れたが今日は大学まで急ぐ必要は無さそうだ。

 大きなあくびをしながら今日もバス停に向かう。バスはやけに混みあっていたので今日は立つことにした。何故か立ってバスに乗る時だけは憂鬱な時間だった。重力の影響なのか疲れているかなどマイナスなことしか考えられない。同じはずの時間が長く感じてしまうのは僕の中でも長年の不思議だった。

 大学の最寄りのバス停で降りるとそこからは歩きになる。門の前に着けばそのまま真っ直ぐ進めば玄関に着く。そしていつものように講義室に入るとやはり彼女の姿があった。

 「いつものように」彼女との間に少し空間を開けて座る。今日隣に座ったのは他でもなく彼女をデートに誘うためだった。

そして僕は口を開く。

「ねえ、今日の午後予定あるかな。」

「特にないけど、どうしたの?」

「駅前に新しいカフェが出来たんだけど、一緒にどう?」

「それってどんなとこ?見せて!」

僕はポケットからスマホを取りだしカフェが写ってる写真を彼女に見せる。

「ここ知ってる!行ってみたかったんだよねー」

「ほんとに?よかったらどう?」

「もちろん!」

 違和感が少しあったが彼女らしいイエスの答えが帰ってきた。

 その後講義を終えて、昼食を別々で摂ってから午後の1時50分に駅前に集合するという約束でカフェに行くことになった。時間に余裕があったため僕は少し遠めの気になっていたファミリーレストランに向かって昼食を摂っていた。

 ゆっくりしていたら気がつけば時刻は午後1時40分となっていた。ここから集合の駅前までは10分ほどかかる。デートに自分から誘っておいて約束に遅れるなど言語道断だ。少し急ぎで駅前に向かうと横断歩道越しに見える彼女の姿があった。

 信号が青に変わったことを確認して彼女の元へ向かう途中、

「危ない!」

「えっ、、」

 聞こえた時にはもう遅かった。強い衝撃を浴びた僕は次第に目の前が見えなくなっていった。聞こえたのは彼女が啜り泣く声と周りの野次馬の声だけだったを

 やがて目の前が真っ白になると共に意識を失ってしまった。

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