第三十話 漆黒の夜
【雷の領域、メイン・スター・ライ星】たった数秒前、雷帝を含めてすべての雷の領域の者たちは、誰もがソロムネスの動きを見定めることができなかった。
ソロムネスはベルトに帯びるアンデッドの咆哮が轟く細い剣を取った。空気に漂う死者の息吹は見た人の魂を巻き上げ、食い尽くす。剣の刃は真っ黒で、たとえこの雷の光が瞬くこの宮殿の中でも全く周囲の光を反射しない。
その後、ソロムネスは玉座の下に激しく投げ込んだ。すると破壊の力は雲のように光を遮って星の空を暗くし、星の大地が裂く。ライ星はこの一撃だけで崩壊しつつある…
星全体が徐々に崩壊する一方、宮殿内ではソロムネスは彼の力に驚いた目を見はっている少女、雷帝と彼女の従属たちに無視されている。彼の後ろに金色の転移魔法陣が非常に展開しているが、【滅世の瞳】がなければ時期にパーリセウスがここに来るであろう。呪文を数秒間唄ったソロムネスは魔力の嵐と共に姿を消した。
そして、ソロムネスが残したその剣は、呪文の魔力と共鳴する。拡散された使者の息吹は数倍増幅し、雷帝のノギとタイガーキング・ドゥードイ以外すべての兵士を生者から一気に死者の魂に変えた。その効果はセミトスの「逆世の審判」に等しいが、より強力な魔法だ。
そして、次の瞬間、空の巨大な黄金の六つの六芒星魔法陣によって放出された光が消え、創世帝・パーリセウスが降臨した。
彼の目の前では凄惨と言ってもいい光景であろう。すでに重力を失い、ゆっくりと空中に浮かぶ惑星の破片。その中に雷の領域の兵士たちの残骸や宮殿の瓦礫が混ざり合っている。
パーリセウスは腰の右に下げる三本の剣の中で最も豪華な金色の剣を前方に引き抜いて指した。すると金色の剣から魔力の衝撃波が飛ばし、飛び上がるすべての破片など、彼の視界を妨げるすべてのものを粉砕した。
だが、パーリセウスの眉は顰めた。なぜならば彼が倒したい敵、ソロムネスの姿を見つけていない。
そこで彼は金色の剣を納刀した。同時に左手を伸ばして拳をつかみ、ライ星の崩れた大地はパーリセウスの魔法が吸引力を付着させ、元の位置に引き戻された。
しかしソロムネスが剣を投げた場所にはまだ大きな穴が残っている。その影響により、玉座の上で座っているノギと彼女を庇うドゥードイは、この時点ですでに下の剣から発せられる死の息によって侵食され、徐々に意識を失っていく。
この光景を見た後、パーリセウスは一瞬躊躇したが、ソロムネスに精神をコントロールされた者は例え自分の最愛の親友でさえ冷静に殺す。彼は誰よりもわかっている。だからパーリセウスは右手を出して人差し指でノギを狙った。
だが、ちょうどその時、真っ黒な剣が突然爆発し、小さなブラックホールを作った。意識を失ったノギと彼女の執行官であるドゥードイ、そして多くの兵士の魂を中に吸い込んだ。
一方、パーリセウスの体は光の加護を受けていて、ブラックホールの吸引力から完全に保護されているため、爆発の影響を全く受けていない。彼はブラックホールを見て、周囲の魔力の流れや気配を影響受けずにしっかりと感知した。パーリセウスは転移魔法陣で移動したソロムネスの行方を知った。それはまさしくいまの主戦場となる炎神・アルボルシューたちが戦う場所。一方遅れてしまうとどうなるかわかっている彼は危険を察知した。
そこでパーリセウスは転移魔法陣を作って主戦場に戻る前に、パーリセウスの後ろの空間が突然捻じれ、まるで水面に波紋が立ち上ったようだ。その空間は徐々に扉の形に変換する。扉の向こうには黄金の牧草地の景色が映る。遠くに浮かぶ島のようなものが見える。
【闇の領域、宇宙】光の矢が次から次へとセミトスの体に射た。セミトスは魔力を吸収できるが、この至高な光の力は彼にとって毒に等しい。そして猛烈な攻勢に耐えられないセミトスは受けた光の矢をまだ十分に吸収して無害化にすることが間に合わない間にさらに二本、三本の光の矢に当てられ、どれも貫通している。
遠く、サイドハックはこの先のこと一切考えず、ただセミトスに向けて矢を射る。黄色のローブと鎧を身に纏っている彼は【天星光神】の状態になっている。その攻撃の勢いはセミトスにも圧倒できるが、魔力の消耗が非常に激しいものだ。だがそれも仕方がない、サイドハックは知っている。ここで余力を残さず、全力でセミトスを止めなければこの先どちらが勝つかその行方が定まらない。
同時に【核震地神】になったスーズリオは周辺にある星の欠片をコントロールし、セミトスの体に付着させ彼の動きを完全に封じている。
その一方、アルボルシューはオーズマと戦っている。
オーズマは再び彼の素早い動きでアルボルシューの斬撃を避けた。そして同時に二本の長い刀でアルボルシューの魔力の核心と首を斬る。電光石火の間に二者に距離を置かれ、オーズマの【摩羅結界】の影響範囲から出たアルボルシューは宇宙内でやや膝を折った。赤い鮮血は彼の胸と首から噴射してアルボルシューの顔と白い手袋にかかった。
だが、その血は一瞬にして猛烈な炎に変わり、アルボルシューの体に纏った。そしてオーズマの斬撃によりアルボルシューの体に残した破壊の力を僅かでも残さず焼き払った。
アルボルシューは振り返って炎が纏う戟をオーズマに力強く投げたが、相変わらずオーズマの近くにある【摩羅結界】の影響を受けてほぼ停止しているようになった。
オーズマは当然戟の攻撃路線から曲がって避け、そして二本の刀を逆手持ちして再び絶技である【摩羅閃影】の準備をした。
だが、オーズマにはもう攻撃する機会を与えしない。アルボルシューはただ劇を投げだして攻撃したのではなかった。【摩羅結界】内でほぼ停止している戟は突然火が燃え始め、ますます激しくなっていく。
【摩羅結界】でもなんの影響も受けないのがとても不思議だが、逆に【摩羅結界】内の魔力を食うような炎は円型の結界を満たしている。
それと同時に、アルボルシューの場所から炎が燃えている戟までの直線範囲内にも徐々に火が燃え始めた。オーズマはやむを得ずその空間から離れて遠回りしてアルボルシューの背中を狙うつもりだ。
だが、その炎はオーズマの想像よりも遥かに早く彼の【摩羅結界】を満たし、結界を維持するための魔力や魔法の呪はすべて燃料となってしまった。
ついに、アルボルシューは完全に【摩羅結界】の影響から抜け出した。そして次の瞬間、アルボルシューはオーズマの目の前に現れた。「バーン」と大きな音を立てたとともに、何かが破裂したような音もあった。
アルボルシューのたった一回の正拳突きで、オーズマの魔力の核心から大量の魔力が混じる漆黒な血液と共に湧き出した。そしてアルボルシューの体から纏う炎は彼の右手を通じてオーズマの体内から外側まで焼き尽くした。最も純粋な火炎はオーズマ体内の破壊の力を焼き尽くした。
黒い霧に纏われていた黒いローブの中に、オーズマの顔の輪郭が少しずつ鮮明になった。黒い瞳にやっと理性を取り戻したように光ったが、それも僅か一瞬のことだった。
アルボルシューの右手はオーズマの体を貫通している。彼の炎は破壊の力と共にオーズマの体の神経や魔力の経脈もすべて破壊してしまった。いくら神として謳われる邪神のオーズマでも、これほどのダメージを耐えられない。
オーズマの根はアルボルシューたちと同じ、塵世を守る至高の存在。闇の力を操る彼は人々に恐れられているゆえに邪神の名を乗ったが、これまで幾度も穢しい力で逆世の悪魔と死闘してきた、人々にとっては敬われながらも恐れる静かなるガーディアンだ。
「静かに眠れ、あとは私たちに任せよう、オーズマ。」
アルボルシューは右手をオーズマの胸から取り出して、左手でゆっくりとオーズマの瞼を閉じた。体に放った炎は棺桶の形になってオーズマを優しく包み込んで、そしてそのまま空中に静置した。
やるべきことを済ませたアルボルシューは、渾身の殺気は太陽のように、周りに灼熱なエネルギーを拡散している。煉獄のような空間はこの場にいるすべての神と悪魔を閉じ込め、どちらが勝つまで決して脱出できない牢獄となった。怒りが溢れ出す赤い瞳はセミトスを注視している。その殺意を感じたセミトスはいままで顔に出る不服な感情が消え、恐怖の代名詞である悪魔の顔から真剣さを感じた。セミトスは全身を構えた。
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