第二十七話 崩れた牢獄

 邪神・オーズマは再び刀を上げて周りを見回し、次のターゲットを探しているところ。この時、光神・サイドハックが射た巨大な光の矢はザンカフロスが放った紫色の炎のバリアを貫通し、その鎧ごとに崩壊しつつある大地の隙間に押し込んだ。

 その後サイドハックは頭を上げ、目を邪神・オーズマに向けた。何の合図もなく光と闇の神々は同時に向かい合い、弓と刀が衝突した。反動力を借りてさらに光の速度で後方に飛ぶサイドハックは空に立ち止まった。オーズマの摩羅結界のせいで全員の動きが何倍も遅くなっているが、サイドハックは光の魔力で移動しているため唯一オーズマと結界内で戦える存在。

 サイドハックは手に弓を上げ、空に映る細長い銀河は彼の弓と重なり、その弓が輝く光はサイドハックの真っ白な顔に照らし、するとサイドハックの全身が徐々に光の精霊に変化していく。光神として誇りに思っているサイドハックの周りに神聖なオーラが溢れ出し、この星の暗い空を照らす。サイドハックの体から広がる光の暈のような神々しいオーラは膨大な魔力と共に、無限の矢のようにすべての悪魔を貫き通した。

 そして光神・サイドハックは弓に継続的に魔力を伝達させ、手に持つ黄金色の弓はより一層眩しくなって、まるで夜空の星のように輝く。君が虹の神の一つ、【摩羅邪神】になった今、私も【風刹炎神】と同じ【天星光神】にならなければならない…と心の中で囁いたサイドハックは目を瞬かせ、全身の魔力を運用した。

 その後、彼が今着ていた鎧は金色のローブに取り替えられ、彼を包み込んだ。まるで光で作られた体の中の宇宙の星座のような魔力の結晶が光る。彼はゆっくりだが力強くオーズマに叫んだ。

「摩羅結界すら役に立たない、この矢に抵抗してみろ!天星会心!」

 サイドハックの声と同時に、金色に輝く矢の先から突き刺す眩いばかりの光と共に雷が轟いた。魔法の狂ったエネルギーが発散し、サイドハックは矢を取り、弓を満月まで引っ張った。

 次の瞬間、白駒の隙を過ぐるがごとく、光の矢が長い射線のようにオーズマの方向に飛んだ。オーズマは急いで二本の刀を回転して黒い十字の斬撃を放ったが、それだけではサイドハックの強力な打撃に耐えることができなかった。白い閃光に伴って轟いた雷は圧倒的な力で通過した場所とその周囲の空気を電離した。もうこれ以上魔力の衝突に耐えられない星はつい崩壊してしまった。大地が崩れ、宮殿が瓦解した。ケーズとグラシュー達が防御態勢を組む時に平民たちの撤退をさせたため、そのせいで死傷者はいなかった。

 金色の流れ星のように矢はそのまま遠くの銀河まで闇の領域を通り抜けた。


 浮遊しはじめたケール星の大地に、創世帝・パーリセウスが作ったこの封印深淵がまだしっかりと形を維持している。突然、燃える炎が空を突き刺し、炎神・アルボルシューが空から降りて、光神・サイドハックのそばに浮かんだ。アルボルシューは封印深淵、その底なしの穴を見て何かを考えているようだ。隣のサイドハックはアルボルシューが生きていることに全く驚かない。なぜなら、虹の神の主神である彼は他の兄弟よりも強く、宇宙の原初の炎としてすなわち“長男”の彼が最も強いからだ。

 だが、この隙間を狙ったのか、いきなり長い刀がアルボルシューの頭にまっすぐに刺さった。アルボルシューの周りの炎が電光石火の速さで長い刀に抵抗するための盾を形成した。すると長く漆黒な刀が炎の盾の真上に挿入された。しかし、オーズマの攻撃はまだ終わらない。数え切れないほどのオーズマの黒い“影”がオーズマの攻撃を告げていた。アルボルシューとサイドハックが背中に頭を向ける前に、オーズマはすでに長い剣を抜いた。そして二人の神を斬る寸前、アルボルシューはゆっくりだが力強く言った。

「炎爆。」

 小さな炎のバリアがゆっくりと広がった。オーズマは右足で炎のバリアを踏んで遠くまで跳んだ。炎のバリアが破滅し、バリアの破片が不死鳥の羽根のように漂った。灼熱した塵が粉々になり、炎のバリアが壊れた。サイドハックはこの状況を見て歯を食いしばった。

「彼が摩羅邪神の状態で開かれた摩羅結界の内では、私たちの速度が大幅に低下しただけでなく、彼自身の速度が逆に増加するのはなんと忌まわしい。」

 サイドハックの言葉でアルボルシューは軽く笑った。その反応に驚いたサイドハックは同時に少しイライラした。

「何を笑っている?」

 だがすぐに、アルボルシューは無表情な顔に戻った。

「摩羅結界の効果を知っているのに、意味のないことをした君は貴重な魔力を無駄遣いしている自覚がない。君の恣意的で無謀な欠点はまだ直していないね。」

 その言葉に納得できないサイドハックは言い返した。

「神でさえ欠点がある。」

アルボルシューは少し軽蔑の表情で話した。

「だからそういうところが君の欠点だ。言葉を口に出す前によく考える方がよい。」

 何も言い返せないサイドハックは黙って弓を構えた。隣のアルボルシューは頭を振り返り、戟で邪神・オーズマを指した。

「さあ、決着をつけよう!」

 

 兄弟の口喧嘩で少し意識を取り戻したか、立ち留まっていた邪神・オーズマはアルボルシューの言葉を聞いた後、彼の口を塞ぐ黒い“マスク”を構成する破壊の力が発散した。

 オーズマは少し悲しみを込めた口調で言った。

「アルボルシュー…」

 だがそのほかの言葉はなぜか言えなかった。オーズマが攻撃のために魔力を蓄えているのを見破ったサイドハックは少し目を細め、ゆっくりと黄金色の弓を上げ、弓紐を半分まで引いた。その一方、数本の紫色の炎で溢れたばかりの邪神・オーズマの目は、体内にあるソロムネスの暗黒十字架から発せられた邪悪なエネルギーに流され、不気味な赤い光に完全に覆われてしまった。

 アルボルシューの冷たい表情で自分の兄弟を見ている。炎神なら燃え盛る炎のように熱情が溢れるべきだが、アルボルシューがいつも氷のように孤高で冷たくて、なぜだろうと人々は不思議に思った。彼は最初に呪文をつぶやき、次に両手に戟を持って、すでに立ち上がっていたオーズマと戦う準備ができた。サイドハックは困惑した表情でアルボルシューの後ろ姿を見てから視線を炎が舞う赤い戟を見ると、何か悟ったようで一瞬驚いた。サイドハックはバックジャンプをし、その同時に厚い光輪が全身に現れ、自身の移動速度を加速させアルボルシューから離れた。途中に弓を満月まで引っ張り、アルボルシューを狙って矢を射た。

 この時、アルボルシューはすでにオーズマに近づいており、アルボルシューの口の隅に笑顔が現れた。オーズマの極近距離に近づくとアルボルシューの動きが数倍遅くなったようで、戟を振り回ったまま空中で止まった。そしてオーズマが二本の刀を逆手持ちしてアルボルシューの鎧とローブを上から切り裂けた。だが、粉砕された鎧とローブの破片は猛烈な火に変わった。その同時にアルボルシューの口の隅の笑顔が深まった。

 サイドハックが長距離飛行で撃った光の矢はわずか百歩の距離まで届いた。アルボルシューの鎧とローブの破片によって変形された炎は数十本の鎖に変化し、オーズマを縛った。その純粋な炎は全く【摩羅結界】の影響を受けていないようだ。光の矢がアルボルシューの背中を突き刺そうとしたちょうどその時、アルボルシューの全身が炎に化して矢が通過した同時に炎の魔力を付着させた。

 オーズマは光の矢に当たってその衝撃力により徐々に後方に倒れた。同時に人型の炎に化したアルボルシューは元の姿に戻って叫んだ。

「炎爆!」

 津波のような魔力の乱流は非常に強力な炎のバリアに変わり、広がっていく。矢にあたったオーズマは再び炎に被爆され、着実にこの攻撃を食らった。自分の【摩羅結界】の効果がある故、衝撃波で飛ばされたオーズマは一瞬で姿が消えた。爆風の中で、魔族の主星の崩壊した大地と空は、アルボルシューの炎に包まれた。



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