第二十話 ジョーカー
自分の攻撃がこんなに容易くアルボルシューに破られたとは、驚きよりも久しぶりに強敵に会ったセミトスは戦闘意思が高まったようで、その顔に一抹の喜びが浮かびました。
セミトスは目を閉じて体から黒い玉のようなシールドを広げました。そのシールドは虹の神々とアルペルトの全身から放射する光を飲み込んだように、接触した光は徐々に弱まり、消えていきました。一方、その光の魔力を吸収したかのように、黒いシールドは明るい金属光沢を反射しました。
緑の鎧を着る神は目を細めました。
「まずい、私たちの体から発せられる魔力を吸収しているようだ。」
アルボルシューは黒いシールドを見て冷たい口調で話しました。
「慌てるな。アルサイド。光の神サイドハックと幻光翼・アルペルトは最も純粋な光の力で打ち負かす。」
黄色の鎧を着る神、サイドハックもセミトスのように体から発散する光を凝縮し、黄色い玉のようなシールドができました。黄金のように明るく、金属光沢を反射しました。サイドハックはその黒い玉に嘲笑の口調で語りました。
「小さな虫よ、貴様は邪悪の根源ではない。破壊の力でも、私の光を破ることはできない。」
その直後、黒曜石のようなシールドと黄金のようなシールドが衝突し、異常な魔法の波紋を星の上空で起こしました。
アルペルトはシールド内で腰から武器を引き出しました。それは黄金のように光沢を照らす剣でした。
しかし外見をしっかりみると、剣というより極めて純度の高い光の魔力が、剣の形になっていることが分かります。そして剣の尖端から液体の金が垂れるようにきらびやかに輝きます。そして、金色の霧の中、アルペルトの体が突然いくつかの白いルーンが浮かび上がり、さらに秒ごとに増える多くの白いルーンが密集してアルペルトの周りに囲みました。
アルペルトは黒いシールドの中心に剣を向けました。
「龍吟・遊光!」
すると、無数の白いルーン文字が一瞬少し弱まったが、またすぐに明るくなりました。白いルーンもゆっくりと刀身に溶け込み、同時に刀が高周波数で急に振動し、衝撃波を放ちました。
数え切れないほどの金色の細長い竜が剣から浮かび上がり、黒いシールドに向かって駆け寄りました。同じ属性だからか、それらの竜は突破不可能な黄金のシールドを通り抜け、漆黒なシールドにぶつけました。一撃目は黒いシールドが固く何一つ傷つけられなかった。これは無理もない。セミトスほどの強者が使うシールドならばほぼ破壊不可能だ。
だが、金色の竜がますます増え、数百、数千匹の竜が絶え間なく衝突していて、さすがにこれほどの圧力を受けたシールドはもはやこれ以上耐えられないと分かりました。同時に何百もの亀裂が現れました。金色のシールドの中、サイドハックはこれらの過程をはっきりと見て、攻撃のチャンスを捕まえました。彼は金色のシールドを魔力に変え、さらに矢の形にしました。兜を被っている彼の顔に青い瞳が光っており、今笑っているとその目元でわかりました。
光の神・サイドハックは背後にあるアルペルトの剣に似た体の金色の弓を取り出しました。弓に先ほどシールドで化した矢を置くと、彼の黄色の重装甲とマントが弓と矢から発せられる光の魔法と相まって、まるでミニチュアの太陽を形成しました。
それと同時に、サイドハックの攻撃をさらに強化するためか、アルペルトは大声で叫びました。
「龍吟・砕玉!」
漆黒なシールドに囲まれる金色の竜のような衝撃波はアルペルトの声に応じて爆発し、シールド全体を完全に粉々にしました。
アルペルトの動きを完全に読んだサイドハックは手にある矢が弦を放し、飛んでいる矢が真っすぐとセミトスへと突き刺さりました。矢が通った場所にあるシールドの破片をすべて灰にし、さらに光に浄化され、この世から消えたように見えました。
矢がセミトスに当たる。何の防御手段もなく。惑星ケール星はこの瞬間、光に包まれていてまるで白いパールのようでした。
光が徐々に消えると、サイドハックとアルペルトが少し驚きました。本来、重傷を負っていたはずのセミトスの体の傷は、絶えずに破壊の霧によって修復され、間もなく傷跡も残りませんでした。
傷を治した後、セミトスはすぐに虹の神と龍の両翼に破壊の霧によって作られた9本の鎖を飛ばしました。同時にドムが持っている暗黒十字架が突然紫色の光を放ち、悪魔たちは狂気な笑いをしています。特にセミトスは指先に残っていた光の矢の破片を握りつぶし、笑いながら話しました。
「ようやく呪文の詠唱が終わってその力の封印を解いた。さぁ、塵世の雑種よ、破壊の剣に次ぐ逆世の神器の力を試してみよう!満ちる暗闇の意志に浄化され、平伏したまえ!これこそ使者の力、ソロムネスが離れる前にお前ら虹の神に残した切り札だ!」
十字架の紫の光は黒い鎖に纏って鎖と共に虹の神と龍の両翼を縛りに向かいました。アルボルシューは低い声で「まずい」と言った。すでにその暗黒十字架の力を感知していたアルボルシューは歯を食いしばり、両手で九つの炎を凝縮して周囲に飛んでいる鎖に放射した。炎は鎖を溶かしたが、その紫の光はなんと炎神・アルボルシューの炎にも通過して全く影響を受けていないようだった。そしてその光は全て、極めて速い速度でアルボルシューの隣にいる黒い鎧を着た神の体に入っていった。アルボルシューが振り返ると、その神はすでに無意識になってしまい、その目もぼやけていた。どうやら自身の意識がはっきりと分離されてしまったようだ。
この状況を見てサイドハックは大声で叫んだ。
「炎神・アルボルシュー、邪神・オーズマを浄化させねば。封印が得意な木神・アルサイドなら…」
青い神は首を横に振った。
「サイドハック、落ち着け。まずその光の魔力を感じて。そもそも私たちが対処できるものではない。合体していればまだしも、今はもう遅い。その力と相殺できるのは恐らく創世帝様の「龍吟の剣」のみだ。もともと黒魔法に捧げられていた邪神・オーズマは、その暗闇の意志から影響を受け、創世帝様の指揮下で長い間抑圧されてきた闇の性質を明らかにされてしまった。」
アルボルシューも頷いた。
「邪神・オーズマがいなければ、虹の神に変身することはできない。しかし、それでもこれらの悪魔を倒すことはできる。」
自分たちの兄弟である邪神・オーズマは徐々に闇の意志に取り憑かれてはいるが、兄弟の情といい、この状況に陥っても勝てるという自信、そしてオーズマを封印してから浄化する計画のため、アルボルシューは後ろにいるすべての人に大声で話した。
「落ち着け!邪神・オーズマの潜んでいた邪悪な性質は悪魔によって無限に拡大された。だがいまは悪魔の退治が優先だ。悪魔たちを倒した後、オーズマは浄化される。」
発言を終えた後、アルボルシューは右手を伸ばした。白い手袋は、火が散らばった赤い鎧と比べてかなり目立っていた。手の裏には周りの火花が散って落ちるたびに六芒星の形を構成していった。体の周りにある炎が舞い、空間を捻じ曲げるほどの魔力がどんどん広がり、より激しくなっていった。
真っ赤な炎が天空の半分を染めた。
散り散りになる炎から細長い赤く、白い光が瞬く戟と化し、アルボルシューが握るとその刃に散らばった七色の炎が、震える音符のようにワイルドで燃え盛るシンフォニーを作り出した。そして、炎の神から放たれる炎の魔力は、世界に侵入した汚物を飲み込み、燃やし尽くす。空を赤く染め続けていた。
その一方、下方にいるグラシューは、もはや純粋ではなくなった氷骨剣の中、流れるのは青く美しい魔力ではなく液体状の破壊の力になってしまった。体の心臓や血管のように四方八方に流れ、徐々に蜘蛛の巣のような構造を形成しているようだった。剣から広がる寒気もまるで亡霊の低語のように、ひそやかで不気味だった。
グラシューはずっと頭を下げたままだった。まるで何かを考えているような姿勢。その濃い灰色の顔にはもう生者の跡が見つからず、ただ残忍な目つきに嫌悪感の痕跡が残っていた。彼は眉をひそめ、前方の渦巻く黒い霧の中の白い光を見つめていた。
セミトスはアルボルシューの魔力増幅に恐れているが口では負けていなかった。緋色の目には暴力的な殺人欲望が満ちていた。
「あそこに矢を放ったのは光の神か?一本の矢でただ壊れかけのシールドを壊しただけ、全然期待に応えられない相手だな!」
アルペルトは嘲笑した。
「死にゆくものはせいぜい今のうちにその威信を示すことしかできない!」
アルペルトは両手で光を操り、自分の剣を改造した。どうやらそれは光の魔力で作られた剣で自由に形を変えられるようだ。いまは光の鎖が剣の尾端と繋がり、少し長さが縮まったが双剣となったアルペルトの武器。
セミトスは再びシールドを作ったが、その同時にすべての悪魔はセミトスの後ろで散開して自分の魔力をセミトスが作ったシールドに注入した。セミトスは続いて体から放出された黒い霧をいくつかの黒い稲妻にして、雷のような鎖を作った。そして雷が纏う鎖は虹の神と龍の両翼に向かって発射された。
アルペルトはアルボルシューよりも先頭に立ち、剣を振った。その剣の先からいくつかの金色の光線を放ち、真っ直ぐ下の鎖に向かった。
セミトスは目を大きく開けて両手を出し、その鎖に更なる魔力を注入した。光のビームと衝突したあと、砕かれた鎖は破片を融合して黒い龍となり、再び上空の人たちに向かっていった。
光神・サイドハックは急いでシールドを展開して防御したが、一瞬にして明暗が絡み合い、激しい爆発が起こった。
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