第十九話 炎神・アルボルシュー

 カルロ・ジックは目の前に激変している風景を見てショックを受け、パーリセウスの金色の鎧を着る背中を恐れて見つめていた。しばらく落ち着いた後、黄色の鎧を着ている神の側に飛んで、低い声で尋ねた。

「神様、どうか愚かな私に教えていただきたいですが、私はすでに創造の瞳の力を拝見しました。それはどのようにして時間と空間を制御しているのでしょうか?」

 黄色の鎧を着る神は彼のパニックに陥った表情を見て非常に面白がって、軽く笑った後に言った。

「確かに、何度見てもこの恐ろしい力に驚くだろうな。お前はすっかり理性を失っているみたいだね。」

 カルロ・ジックはうなずき、神は再び微笑んで言った。

「実際、仕組みは非常に単純なものだ。時間と空間はまるで終わりのない川のようなものだ。世界のすべてはその川の中にある。川とともに穏やかに流れ、水に洗われた後、徐々に散逸していつか再凝縮する。魔力は私たちの体に含まれる力であり、周囲に放射する。弱い魔力は波紋ぐらいしか起こせないが、強い魔力は水の流れに抵抗する小さな石のようになり、周囲の空間に多かれ少なかれ影響を与える可能性がある。ただし、川の速度は変わらないままだ。だから、強力な魔法を使うなら空間を歪めることができるが、時間の経過には抵抗できない。それはまるで、川に逆らって歩くようなものだ。逆に魔力が強ければ強いほど、川による侵食が深刻になる。魔力が尽きるまでか、その魔法を止めるまで。」

 カルロ・ジックは再びうなずき、理解しているようだった。黄色い神は真面目な顔で再び話した。

「創世帝の魔力は無限大だ。創造の瞳を開いて時間と空間を制御するとき、魔力への配慮なしで呪文を使うことができる。そしてさっき創世帝が使った三つの魔法は最も強力な時間と空間の呪文だ。あまりにも大規模過ぎて川全体を塞いだようにこの地域の時間を止めた。一方、裂け目は川の中に陸地を作ると同様。」

 カルロ・ジックは少し沈黙した後にまた尋ねた。

「尊敬されている虹の神、時間がすでに停止されていますが、私から見ると、闇の領域の時間はまだ止まっていません。これは一体何なのでしょうか…」

 黄色い神は少し冷たい目つきで闇の領域のメイン・スター、ケール星を見ながら話した。

「創造の瞳は破壊の瞳とは反対の力ではありながら、時間と空間の呪文は同じだ。どちらも世界の時間と空間を操る守護神の力その源。ここは逆世ではないが、その瞳に空間の制限を受けない。それに創世帝とソロムネスの魔力は同じく無限であるため、二つの呪文は相殺して無に帰る。」

 パーリセウスは振り返った。

「さあ、アルボルシューたちは付いてきて、今から闇の領域に入る。ソロムネスはこの手で再び封印し、その悪の同党を完全に滅ぼす!カルロ・ジック、ソロムネスが光の領域に侵入するのを防ぐために、急いで転移魔法陣を使って光の領域に戻って防御を固めろ!」

 するとパーリセウスは金色の光と化し、光が点滅した間にすでに闇の領域に突入した。その後ろに7人の神が付く。


【闇の領域、ケール星】パーリセウスの魔法による空間の亀裂は黒い霧を吸い込んだため、チェルヴァンとアルペルトの姿が徐々に現れ、同時にケーズの体もはっきり見えるようになった。

 もともと紫と黒色の鎧を着ていたからか、外見ではあまり変わりがないが、彼の目はグラシューと同じ変化が起こり、悪魔のような残忍さが満ちる。

 アルペルトは彼の周りに凝縮された琥珀のような金色のバリアで破壊の霧の侵入に抵抗していたが、チェルヴァンはただ軽蔑の表情を持ちながら腕を組んでいるだけだった。

 同時に、下方の破壊の霧も消えており、ソロムネスの姿はなかった。地面に巨大な転移魔法陣だけがまだ明るく輝いていた。セミトス、クロル、ザンカフロス、マルフォン、ドム、ケーズ、グラシューは、上の金色の七色の光を待っている。

「ドム、預かった十字架に生命力を半分注いで、あとの術式は俺とソロムネスしかできないから寄越せ。」

 名前をセミトスに呼ばれたのは少し意外だがその偉そうな態度を食わないドムは無言でセミトスの言った通りにした。

「セミトス、いまこの十字架を出したらパーリセウスのやつにバレるでは?」

 クロルはセミトスの隣から十字架を見つめている。

「ならばまずこの力をドムの体内に入れて破壊の力で隠そう。パーリセウスが本当に魔力無限であればこの程度の差に気づかないだろう。」


 金色の光は龍の両翼よりも上空に止まった。

パーリセウスは厳粛な表情で下方の大地をちらりと見た後、まだ明るく輝いている転移魔法陣を見つめている。彼の眉毛から王の威圧が爆発し、創世帝の力が制圧されたように、この場の全員は沈黙し恐怖を感じた。勿論、セミトスも例外ではない。

 セミトスはパーリセウスの計り知れない魔力を感じた後、今まで威張り散らす態度も一変した。ただ、彼は時間と空間を制御する創造の瞳のペアの力を恐れているからだ。

 パーリセウスの眉はだんだんしわが寄り、後ろの赤い神の方を向いて大声で話した。

「ソロムネスに逃げられた!魔法陣の符号から判断すると、雷の領域に行ったのに違いない。あいつは軍隊を再建したいつもりだ。私はは一刻でも早く奴を捕らえねば。ここの悪魔は任せた、アルボルシュー!私の最も強力な虹の七色が汚物を一掃させたまえ、失敗は許さん!」

 アルボルシューは空中にひざまずき、頭を深く埋めた。

「ご安心ください、臣下一同は決して失望をさせません。」

 アルボルシューが話した後、残りの六人の神は一緒にひざまずき、同時に立ち上がった神々から放つ七色の光線は残存する破壊の霧、不潔を一掃した。パーリセウスは厳粛にうなずき、その返事に満足したようだ。そして彼の目に金色の光が点滅しただけで姿が消えた。ただ空中にドラゴン族を象徴する花、モーラ花の香りが空中にわずかしか残っていなかった。


 パーリセウスの姿が消えたのを見て、いまだに少し気が弱くなっているクロルは周りを見回した。

「パーリセウスがいなくなったとしても、この七人の魔力は過小評価されるべきではない。よく見て、感じろ。七対九、一対一でさえ勝てないかもしれん。」

 だが少し創造の瞳に恐れていたが、また傲慢な表情に戻ったセミトスはニンマリと笑顔を出し、軽く手を振った。彼の空間から一気に数十万の「逆世の審判」が現れた。逆世の審判は一個だけで剣心を開けたグラシューの分身を破壊、分離したほどの魔力を蓄えているため、この短時間でこれほどの数を用意できるわけがない。セミトスはソロムネスが封印された場所の破壊の力、その一部を逆世の審判に転化して隠していた。

 すべての「逆世の審判」はセミトスの指先が指す方向に真っすぐに飛んだ。

 だが、この勢いの先制攻撃を見てアルボルシューもそっと手を振っただけ。

 するとケール星の空が猛烈な火が燃え上がり、龍の両翼と虹の神々の前に炎の壁が出来上がって飛んでくる「逆世の審判」をすべて焼き払った。空中で踊る炎に含まれる魔力は非常に純粋でありながら、わずか手のひらのサイズの空間を捻じ曲げたほどの魔力を富んでいる、だからこそこの一撃はこれほどの効果をもたらしたのだ。


 ドムはかつて自分の炎の力は比類のないものだと誇らしげに信じていた。炎の魔法を誇りに思っていた炎の領域では、ドムは無数の高位のファイア・ドルイドを打ち負かし、炎帝という最高の地位に登った。だからオルカ・ドムは当然、彼自身は火の魔法では塵世無敵だと考えている。

 だがそれは、塵世伝説の「虹の神」、その主神、炎神・アルボルシューのこの極普通の打撃の異常な影響を見るまでだった。炎の力だけで破壊の力が燃え尽きたことができるアルボルシュー、如何に恐ろしい力を持っているか、まさに神の力。常識が崩れたようで絶え間なく叫び始めた。

 上空の炎が消え、いまだに空に一抹の赤色が染めた景色を見て、セミトスは両手を握りしめ笑い出した。

「お前が詠唱なし準備なし直ちに解き放った火の力で、俺の破壊の力を溶かしたなんて。雑種め!お前が初めてだ!」

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