第十六話 ザ・ダーケスト

 マルフォンは誇らしげに大きな頭を上げ、横にある破壊の剣をちらりと見た。

「全く、この下にある封印の魔力が減らない。かなり強力なようだ。」

 ドムは首を横に振って話した。

「封印解除は我の得意分野ではない。」

 彼は呪文を歌うのをやめ、マルフォンに話した。

「間もなく、グラシューとノールグラスが邪魔しに来る。この封印は破壊の剣で創造の力を抑えても、残りの力は我々ではどうにもならない。」

 マルフォンは拳を握り締めて叫んだ。

「ならどうすればよい、要点を言え!凡人め!」

 マルフォンの焦る様子を見てドムは嘲笑した。

「この破壊の剣に蓄える力と比べても大差のない武器か攻撃魔法に頼るしかない。封印を解除するのではなく、強制的に破壊する道しか思いつかない。」

「なら話は早い、破壊はまさに俺たち逆世の専門だ。お前がセミトスに言ってこい、俺はこの二人の氷魔術師とちょっと遊ぼう。」

 マルフォンは胸を開き、岩と岩が摩擦する音が立つ。赤い核心がから垂れる赤い液体もますます魔力が増幅する。

 ドムは炎の翼を広げてセミトスに向かって急いで飛んだ。だがドムの前に突然壁のような氷蓮の花びらが空中に凝結された。ドムは頭を傾けてグラシューを見下ろした。向こうのグラシューもドムを極めて冷たい目で見ている。ドムはニンマリと笑い、そして激しい黒い霧を噴出し、破壊の力が波のようにドムの体から放たれた。ドムは斧を強く上向きに振り、巨大な黒い炎が巨人の腕のように氷の覆いを砕けた。


 マルフォンは胸から黒い破壊の霧が足元に降りて地盤のように広がった。そしてマルフォンはそれを踏んでゆっくりと浮いた。ドムと同様に、氷の花びらが彼の道をふさいだ。ノールグラスは腕を組んで軽蔑の表情で話した。

「あなたの敵は私だ。悪魔、ポールトル族の罰を受けるがいい!」

 ドムはセミトスに頭を向けて叫んだ。

「我とマルフォンの魔力だけではすぐに封印を破ることはできない。封印を破壊しようぞ、貴様の無限の魔力に頼るんだ!」

 この時、アルペルトはセミトスの攻撃に光のバリアを貼って防ぐのが精一杯だった。その一方、セミトスはただ右手と左手で破壊の力を誘導し、右、左、上空、地下からあらゆる方向に破壊の力が襲ってくる。時には千本万本の矢がやってくる。時には三日月のような斬撃に挟まれ、時には地下から噴出した破壊の力に呑み込まれる。


 ドムの叫びを聞いてセミトスはドムとマルフォンの無能に冷笑した。彼は下の赤い魔法陣を見ながら呪文を歌い始めた。これまでセミトスの攻撃はすべて詠唱なしで使っていたため、やっと本気を出したようにその漆黒な体からどんどん膨大な魔力を吐き出す。

 空中にアンデッドの悲鳴が鳴り響き、黒い稲妻がいたるところに落ち、星全体が震える。セミトスの魔力は洪水のように空間を振動させ、揺れ動いた。セミトスは両手で何かを握ったかのようにそれらの魔力を手元に集め、手のひらに2つの空間の亀裂が徐々に形成された。すべての黒い稲妻もビリビリと手に集中し、黒い光が点滅する。空間の亀裂は両手の間にゲートを開けた。セミトス達がドムに召喚されたときと同じゲートの向こうから感じたのは無限なる絶望。ゲートからゆっくりと出てきたのは三日月形の刃だった。刃に意味の分からない文字や符号だらけで、恐らく逆世の武器で召喚されたのだろう。破壊の剣にも劣らない破壊の力が噴火のように湧き出ている。


 セミトスは満足しているような表情を右手で月の刃の柄を握った。そうすると月の刃の鋭い先端が突然周囲の黒い破壊の霧を吸収して凝縮させた。同時に、刃の両端が二つの黒いエネルギーの塊となり、赤い光がゆっくりとお互いに伸びてやがて線を形成した。

 この時、それはもはや月の刃ではなく、真っ暗な弓となった。セミトスの左指先で魔力を凝縮し、黒い矢を作った。月の刃の両端にある黒いエネルギーボールが揺れ始め、赤い芯が流れ落ちた粘り気のある血のような高濃度の魔力が両端で真っ赤な震える蛇を形成して黒い矢に進み、巻き付く。下の封印魔法陣に向けて蛇の舌を吐き出し、そして最後に二匹の蛇は矢の先端で融合する。この時点で、この星に流れるすべての魔力は狂ったように回転し始め、空と大地は引き裂かれる。黒い夜空の下で、セミトスは弦を満月に引き寄せると同時に、魔力の嵐も限界に達した。アルペルトとチェルヴァンすらその攻撃を防ぐことを試みない。彼らはわかっている。その技を渾身の魔力を使っても絶対に防げないほどの破壊力が蓄えられている。

 セミトスは狂気に満ちた表情を持ち、その怖い笑顔はまるで世間のすべてのものを飲み込むかのようだ。大声で叫びながら弓を射た。

「骨噬邪炎・魔能の矢!」

 矢は飛行中にどんどん大きくなり、速度だけではなく恐ろしい量の魔力が周囲の空間を混沌させるほどの衝撃波が目で直接に見える。そして巨大な隕石のように封印深淵に落ちる。赤い魔法陣の光が一瞬瞬いたが、すぐに薄暗くなり、すべてが静かになった。しかし、次の瞬間、魔法陣が粉々になり、乱気流が暴れる。深淵の底まで届いてまた跳ね返った。魔力が深淵の上まで上昇し、巨大な黒い十字架となった。底の力と一緒に跳ね返ったため、周囲に比類のない闇の力が広がった。


 幻光翼のアルペルトは、ついにセミトスが放った黒い波から逃れることができた。しかし、目の前の光景を見て、龍の領域の者でさえこの現実を一時的に信じることができなかった。破壊の剣で最も防御の固い第一層の創造の力と相殺できるとはいえ、ソロムネスの封印は全部で二十二層の封印魔法陣が設置されている。ドムのような領域の王者ですら一層も壊せないのに、一撃で二十二層も破壊したとは…。絶望のオーラがすぐに軍団全体を包み込みました。

 チェルヴァンはため息をついた。

「封印魔法陣は少しでも時間を稼げると思っていたが、まさかこのように我々の予想を完全に破ったとは。あの悪魔め、前回の大戦で召喚された悪魔にも勝るか。だが、大帝とアルボルシュー様も間もなくこちらに来るだろう。暴威を振るうのも今だけだ。」


 ケーズ、ノールグラス、アルペルト、チェルヴァンと残兵たちは抵抗しないで、終わりが来ることを知っているかのように、静かに待っていた。漆黒な十字架の魔力が落ち着いた後、しばらくすると深淵からため息が漏れた。その声だけでこの星の大地を揺さぶった。深淵の底からまたため息が漏れ、そこから広がる力は何かを求めているようだ…

 ドムは狂ったように深淵に突入しようとしたが、ある白い姿が瞬き、ドムの体が約半分斬られたが、それでも必死に羽ばたき、深淵へと急いでいた。自分の攻撃を食らっても無視する振りをして深淵に向かうとは、グラシューは眉をひそめて顔に殺意が湧いた。

「死ね!ドム!」

 グラシューは呪文を唱えて氷骨剣を空に挙げた。すると本体よりも百倍ほど大きい氷骨剣が空中から切り落とされ、まるで青いビームのようにドムを完全に貫通し、彼の体を粉砕した。しかし、グラシューの口角の笑顔が完全にニヤリと笑う前に、深淵から腕が伸びてグラシューを握った。その腕は、大まかに装甲された腕の形を除いて、世界で最も暗い闇であった。腕を振るうと、グラシューは投げ出されて粉々になった大地に落ち、セミトスの破壊の剣で発動した「無影崩斬」のように、グラシューの落下点で破壊の黒い霧が立ち上がった。目の前の光景を見て、ケーズはまだ封印が一撃で破られた恐怖で足を運べないが、龍の両翼のノールグラスは全く驚かず、ただ心の中で静かに祈っている。


 ドムの残骸は深淵に落ち、彼の切断された体は破壊の黒い霧に包まれ、ゆっくりと修復されている。間もなく彼は巨大な斧を持って霧の中で激しく笑い、少し斧を振っただけで彼の技「タイタンの剛腕」のような邪炎の柱が遠くまで飛ぶ。

 突然、深淵からさまざまな色の光が反射し、不気味なオーラが満ちている。光が落ち着いた時、果てしなく破壊の黒い霧が深淵から飛び出し、激しく広がり、触れたすべてのものを飲み込んだ。わずかの時間で大地は破壊の力に満ちた黒い海に覆われ、そして破壊の霧はやがてこの星全体に蔓延し、さらに宇宙にも侵食していく。


 深淵から、少しかすれた唸り声が聞こえた。

「あぁ…」

 セミトスでさえ少し震えずにはいられなかった。

「罪。」

 少しかすれた声で星まで揺さぶった。

「戦火。」

 星の天空も一変し、大地と同じく破壊の力が氾濫するようになった。

「俺の憎しみは深淵で蓄積していた…この世界は俺の怒りの下で崩壊する!」

 するとその漆黒な腕も黒い霧となり、深淵に戻った。次の瞬間、火山の爆発のように大量の破壊の力が一気に湧き上がり、黒い海の上で転がり、ゆっくりと収束して黒い鎧を身にまとった人型生物を形成した。


 体はセミトスと同じく黒いが、目も真っ暗だ。その人型生物は少し頭を下げた。彼の身体から発散する魔力から感じたことで判断すると、彼はこの世界への憎しみが途轍もなく深い。また、この人型生物の体を一目見ただけでも、汚染感や怒りっぽい憎しみが心中を満たす。このように世界を崩壊させた力を持ち、逆世で最も恐ろしい悪魔、彼こそが滅世帝・ソライル・クロル・ソロムネスなのは間違いない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る