第十五話 龍の傲り
アルペルトとチェルヴァンたちの下にいるセミトスは、この状況を見て全く慌てず、ニンマリと話した。
「やっと、少しまともな人が来たか。ドム、マルフォン、ザンカフロスあの二人は今のお前らでは勝てない。まずソロムネスの封印を解除して、それから彼から力をもらおう。」
ドムは頷いたが、鼻息が荒れて自分の力が批判されたのに対して不満を持っている。
「もう一人が我と一緒に封印を解く必要がある、今我の魔力では時間がかかる。パーリセウスの魔法陣が一時的に破壊の剣を防げるとは…それに、滅世帝二世・セミトス、上の二人は塵世最強と誇る龍の領域、帝国の両翼と呼ばれるエリート戦士、創世帝の帝国裁判官、強さは領域の王者たちよりも凌駕している。」
しかし、セミトスは相変わらず軽蔑して見上げて言った。
「それで?あんな魔力じゃあ俺の相手にならん。創世帝とかいう奴はまだ少し期待できる。」
これを聞いた後、ドムは嘲笑しながら言った。
「確かに、あの二人はまだ貴様にとって十分ではないのなら…」
セミトスはドムを冷たく見つめ、話の続きを待っている。
ドムは首を横に振った。
「創世帝となったパーリセウス以外、存在すら謎の守護神より、元素の神として実在している虹の神は塵世のだれもが知っている。パーリセウスとソロムネスに創造の瞳と破壊の瞳がなければ、誰もが虹の神を打ち負かすことはできないだろう。」
ドムはセミトスをじっと見つめ、その狂気溢れる顔にも冷静な目つき。
「貴様も含めてだ。」
セミトスも無言でドムを見る。その血のような赤い目に期待や真剣さを読み取る。
封印深淵の周りに転がる破壊の霧がようやく落ち着き、その黒い霧の中央にダイヤモンドの形をした氷の棺が現れた。周囲に発散する寒気は、なんと破壊の霧を阻害している。棺全体は純粋で雑なものが入っておらず、透明な棺の中に眠っているようなグラシューがはっきりと見える。長い白髪が頬を半分覆い、鎧の破損も全部修復されている。氷の棺から出る冷たい空気はどんどん重くなり、白い霧のように広がり、やがて渦巻き状となって周囲の黒い霧を一掃した。
しばらくすると、落ち着いた白い霧の中に棺が消え、剣を構えて立つグラシューの姿が現れた。グラシューは頭を上げ、彼の髪の毛も同時に浮き上がり、まるで重力が弱くなっているようだ。瞳には氷蓮の符号が明るく輝いている。彼の魔力は感知では満ち溢れていて戦った痕跡が見つからないほどだった。ケーズは死んだと思ったが、急に蘇ったグラシューの姿を見て驚かずにはいられない。ノールグラスに向かって叫んだ。
「どういうことだ、さっきまで彼の魔力が消えていて死んだはずだ、彼は何者だ!」
しかし、ノールグラスは無表情でグラシューを見たままケーズに返事をした。
「それが彼の剣心の能力、「永久の氷蓮」だ。氷骨剣、この私の存在、彼の魔力の核心がいずれある限り、彼は無限に復活することができる。」
ケーズはしばらく唖然とした後、龍の両翼を見つめてため息をついた。
輝く空の中で、聖なる光が輝くアルペルトは無関心に周りを見回し、大地は荒廃し、裂け目が数え切れないほどある。破壊の霧と燃え盛る邪炎がみっともない風景を作り出していた。光の中でアルペルトは鎧を着た姿でいた。銀色の龍の魔力が細い川のように彼の黄金の鎧に分配され、非常に純粋な力を発散している。暗い天空に一抹の金色を塗りかえるような光景だった。アルペルトは下の悪魔たちを長い間見下ろして観察していた。鐘のような明るい声で話した。
「能力は大体わかったが、魔力だけ見るとあの顔が見えない悪魔が最も強力だ。他の悪魔も何も恐れることはない。ただ、なぜ破壊の剣を持っている悪魔…」
ノールグラスは弱い声で答えた。
「彼の魔力はブラックホールのように無限であり、彼を攻撃するすべての魔法を吸収するようだ。現在、強い物理的な攻撃だけが彼に何らかのダメージを与える可能性があるとしか私たちはわからない。」
その言葉を聞いた後、隣のチェルヴァンは口を開けた。
「魔力を吸収する?その人の核心や魔力の脈が比較的に強く、攻撃された魔法の属性に適応できるならば大丈夫だ。私はこの能力を持つ人間世界中で何回か見たことがある。でもそういう能力は私たちの前では素朴すぎる。」
アルペルトはそっと鼻を鳴らした。
「君たちはよく見るがよい。」
ノールグラスはセミトスを指差して言った。
「彼にダメージを与えられるのは、おそらくアルペルト様の純粋な光の力か幻の力のみ。」
ケーズは少し眉をひそめた。
「でも、幻属性の力を使いこなせる人はそうそういないが…」
「容易いものだ。」
チェルヴァンは悪魔たちを見つめながら言った、アルペルトは自慢な表情をしてチェルヴァンに話しかけた。
「私がその無限の魔力を持つ悪魔と戦う。あんたは?」
チェルヴァンは頭を振って答えた。
「なら私は顔がはっきりしないものを選ぶ。」
ケーズは首を横に振って言った。
「あの岩の悪魔と分厚い鎧を着て顔の見えない悪魔はなぜか鎌を持つ悪魔に少し恐れているようだ。私たちが知らない特別な能力を持っているのかもしれない、用心しないと。」
ノールグラスは首を横に振った。
「龍の両翼はすでにターゲットを選択しているが、ほかの悪魔も邪魔しに来るだろう。グラシューは間違いなくドムを止め、岩の悪魔はあなたの紫色の炎を爆発させるので、私があいつの相手にする。」
クロルはケーズを軽蔑の表情で観察し、体を動かした。セミトスはあざけるような笑顔でアルペルトに直面する。グラシューは呪文を歌いながら不吉な笑顔を持つドムを見下ろしたが、ドムの隣のマルフォンはうっかりして魔力を破壊の剣に注入し続けている。ノールグラスは空から降りてグラシューと一緒に立ち、そうすると二者の氷の魔力が共鳴し、一瞬にして柔らかくて硬い氷蓮が空から落ちてきた。チェルヴァンは腕を伸ばし、背中にある鋭い2本の剣を引き抜いた。剣には灰色の呪文が刻まれており、幻の属性の魔力を噴出している。
クロルが最初に飛び上がった。大きな鎌を持つクロルはまるで死神が降臨したようだ。ケーズは一瞬緊張や不安の表情を現したが、この星この領域を守らなければいけないと意志を固めた。ケーズは白黒の巨剣を上げ、同時にゴースト・ドラゴン・キングも咆哮をあげて隕石が落ちるような勢いでクロルに向かって駆け寄る。クロルはドラゴンの大きな口を素早く通り過ぎた。そしてドラゴンの背中に乗っているケーズに鎌を振った。
ケーズは巨剣を持ってクロルの鎌を横から打って避けたが、その後通り過ぎたクロルは引き返してケーズに襲う。ドラゴンは空中で急停止して再び口を開けた。今回はしっかりとクロルを噛んだが、クロルは鎌を握りしめ、鋭い歯を鎌の柄でふさいだ。ケーズはドラゴンの背中から飛び降りた。同時に「冥炎・九竜怒鳴」を放たずにその膨大な魔力を剣に纏ってクロルに斬りつけた。鎌をドラゴンの口から出せないクロルは他の防御手段もなく、しっかりとケーズの攻撃を食らった。巨剣がクロルの体を斬る瞬間、紫色の炎が飛び散り、魔力が振動して衝撃波を形成し、周囲に広がった。
そしてこの衝撃はドラゴンも受けたが、ケーズのためにこのチャンスを作ったのが自分の役目と知っている上で協力した。そしてゴースト・ドラゴン・キングはクロルを斬りつけた後、落ちたケーズを再び背中に乗せた。
見事な連続技だが、こんなに簡単に倒せるわけがないと知っているケーズは再び呪文を歌い、さらに一発の「冥炎・九竜怒鳴」を紫炎で燃えているクロルに向けて放った。すると炎が炎にぶつかり大爆発を起こした。上空に紫と赤を混じる花火が綺麗に、凄まじく咲いた。
しばらくすると炎は消えた。しかし、こんな威力の斬撃と衝撃波を食らったならセミトスですらかすり傷を残すのに、クロルの体は全く無傷で空に浮いている。
自分の最も強い技を使っても倒せると思っていなかったが、こんなに無傷でいられるとは。ケーズは歯を強く噛んだ。そしてさらに魔力を凝縮し、「冥炎・九竜怒鳴」を猛烈な炎の嵐にしてクロルを囲んだ。技で全身の隙間を探しているようだ。そして今回の攻撃はドラゴンも息を吐き出し、空色の炎が燃える衝撃波は紫色の炎の嵐に直撃し、クロルを全方位から燃えさせている。ケーズは頭を下げ、ドラゴンの背中に紫色の炎での魔法陣を素早く描き、絶えず両手を繰り回して炎の嵐を増強させる。
しかし、クロルは炎の嵐からゆっくりと浮いて出てきた。紫の炎がまだ体に残っているが、かすり傷もやけどもなかった。ケーズはついに恐怖や不安を禁じられずに叫んだ。
「ありえない!私たちの魔力とほとんど同じだ、私の攻撃を完全に防げるはずがないし、そもそも防げていないあなたはなぜ無傷でいられる!」
クロルが望んでいた反応を見たようにニンマリと笑い、声に得意が満ちている。
「確かに、俺の魔力は得意分野ではないけど。」
クロルの顔にある3つの傷の色はどんどん暗くなる。
「お前如きのやつが操る紫色の炎がどんなに強力であっても、俺に効かないんだ。いや、すべての魔法は俺に効かない!」
ケーズはその言葉を聞いた後、彼の顔に混乱を加えて、さらに深い恐怖を抱いてしまった。
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