第73話 神様スキルと、現代風作戦開始




「現代風って?」

「証拠撮影して突きつける!!」

「証拠撮影かー」

「私が見てた動画サイトによくあるのよー。不倫してた夫の写真を撮って、両親達が集まってる場で突きつけるの。いいわー」

ユキは恍惚の表情で天井を見上げている。


「カメラ買うってことだよねー。なんか、高そうだな」

「いいスキルないのー。お留守番中、シンと話してたんだけど、えげつない量のスキルをもらったらしいじゃない」


お留守番中にシンと話してる?

神ポイントを消費するんだよね•••

幸福度ランキングが上がったことで完全に調子に乗ってるね。


「マリーのスキルって、神様と同じスキルらしいよー」

「そうなの?」

「そう言ってたよ。だから、この前シンが使ってたモニター投影みたいなのマリーはできるんじゃない?」

「あれか」

私はステータス画面からスキル項目を選択。

それらしいスキルを探していく。


▪️念写スキル

実際に見た光景を画像•映像として保存可能


▪️投影スキル

事前に用意した画像•映像の投影が可能


▪️伝聞スキル

投影スキルで映し出された画面•映像を直接見なくても、範囲内の人に伝えることが可能



「めっちゃいいスキルあるじゃん」

「うん。これなら行けそう!!」

「後は、両親の登場ね」

「そっか」

ゲイリーの悪事を撮影したところで、それをレーリック王国の国王、王妃、つまりはゲイリーの両親が良識人でなくては証拠を突き付ける意味がない。


私は視覚でハートが確認できそうな程ラブラブしているミランダさんとリチャードに近寄って聞いた。


「ラブラブなところすみません。レーリック王国の国王と王妃はどんな人ですか?」

「らぶらぶ?」

「お互いに愛し合ってるってことよ」

離れたところからユキが答える。


「まあまあ、それは•••、なんという」

「らぶ、らぶか、悪くないな。私達にお似合いの言葉だ」

2人は手を繋ぎ合い、2人の世界に入ろうとする。


「それは後にして下さい!!」

ラブラブカップルの間に割って入る。


「これはすまない。レーリック王国だったな?リトリー国王様は、1度話したことがあるが物腰も柔らかく、良い印象だったな」

「私は今回の件もあったので何度かお会いしてますが、その、何と言いますか••、私を見る目が•••」

「見る目が?」

躊躇っているミランダさんに先を促す。


「その、私を見る目がキモいのです」

「キモかったの?」

「はい。とてもキモかったです」

「これは直接確かめないと判断できないかな。それで、王妃様は?」

「数週間前に亡くなったと聞いています」

「そうなんですか?病気とかですか?」

「詳しくは分かりかねますが、病気ではなかったと聞いています。それと、ゲイリーの他に二人子供がいると噂がありますが、公には見たことはありません」


私はその場で状況を整理しようとするが、うまくまとまらない。


「マリー」

ユキの呼ぶ声で我に戻り、ラブラブカップルの元を離れた。


「マリー。これは、国王と王子が好き勝手やるために、邪魔になった王妃を殺し、それを知った2人の良識ある子供も監禁されてるって、ところね」

「すごい想像力だね」

「友達もあまりいなかった私の唯一の趣味はアニメと漫画だったからね。その知識からすると、容易に想像がつくわ」


さらっと悲しいことを聞いた気がするけど、ここは聞かなかったことにしよう。


「アニメは私も好きで良く見てたけどなー」

「マリーと私じゃ、見ている時間が違うのよ」

私より一回り以上、年上だもんね。


「なら、その2人の子供を調べるためにレーリック王国に行ってこようかな。2人が生きていて、良識人だったら国の運営を任せられるし」

「そうね。次いでに国王も見てきてよ」

「できたらね。夜まで時間ないから、ラーラ、ナーラ、サーラ行くよ」

ユキと私の話の意味がまったく分からず、目を回しているラーラ達に声をかける。


「か、畏まりました」


私はみんなに詳細は話さず、出かけることだけを伝え、ドラゴン化したサーラに乗ってレーリックに向かった。


レーリックとサズナークは隣国であったため、全力で飛ばしたサーラによって約1時間で首都レーリックの上空に到着した。


レーリックは城と街で距離があり、城は大分離れた丘の上にあった。


それにしても、ドラゴンで1時間の距離なら例え馬車でも数日で着くと思われるが、ゲイリーはミランダさんの看病や様子を見に来ることはなかった。

それに、ミランダさんの病気が治っても病気が蔓延している街には近寄らず、事態が治まってから「心配で来た」と堂々と嘘まで吐くやつだ。

改めて、最低だと思い、少しイライラしてしまう。


「マリー様。大丈夫ですか?」

「うん。大丈夫。それより、どうやって城に潜り込もうかなー」

上空で旋回しているサーラの背中で考える。


私には以前使用した『望遠スキル』があるので、遠くからでも確認できる。

ただ、室内だと流石に中に入らないと確認できない。


私は再度ステータス画面を開き、スキルを探す。


▪️透視スキル

障害物に遮られていても透かして見ることが可能


『透視スキル』これは使えるかも。

ただ、私が女性で本当によかったよ。これ、幾らでも悪さが可能だもん。

神様も良からぬものを見てるのかな?


「マリー様。地上にいる人族が騒ぎ出しています」

「えっ!?」

私はサーラの背中から地上を覗き込むと、確かに街の人が避難を始めている。


「これ、私達の所為?」

「恐らく。ドラゴンが上空を旋回していれば、人族には恐怖なのでしょう」

「こう言う時に、人の本性が出るんだよねー」


私は『望遠スキル』『透視スキル』を発動し、城の中を見る。

国王らしき人は直ぐに見つかった。


玉座の隣に何故かベッドが置いてある部屋があり、そこに国王らしき人物と裸に近い格好をした女性3人が居た。


んっ?

兵士の人が部屋の扉をノックしてるけど、国王らしき人物は怖い表情で何か言ってるな•••


そうだ。

前にも使った便利なスキルがあったはず。

『盗聴スキル』

本当に私が女性でよかったよ•••


私は併せて、『念写スキル』も発動する。



「バカもん!!ドラゴンなんぞ知るか。わしは今、手が離せないんだ!!」

「しかし、国民への避難指示を•••」

「国民がどうなろうと知ったことか!!お前が何とかしろ!!」

「は、はい。畏まりました」

「まったく無能な奴らめ。ドラゴンみたいなバカ鳥が飛んでるだけで慌ておって。やっと手に入れたサキュバスを弄ばんといかんと言うのに•••」


国王らしき人物は舌舐めずりをする。

ゲイリーそっくりだ。

体型もゲイリーそっくりだし、間違いなくあれが国王のリトリーだね。


サキュバス?って言われていた女性達は、リトリーから逃げようと必死に動き回り、その表情は明らかに恐怖を抱いていた。


「助けるしかないね。サーラ、城の最上部まで近づける?」

「容易いことです」

サーラは城を目掛けて下降を始め、最上部に近付いたところで私は飛び降りた。


私は見事に着地した、と思ったが、床が崩れて城の中に落ちてしまった。


床が崩れたことにより砂埃が舞い、私の視界が奪われた。

『探知スキル』によって、目の前に誰か1人居るのは確認しているため、戦闘態勢をとる。


「不審者めー。覚悟せよー!!」

「この声•••?」


砂埃が落ち着いた瞬間、1人の兵士が剣を抜き、切り掛かってきた。




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