「ねぇ……夢野亜梨花ってだあれ?」


 その問いかけに俺は答えようとして少し固まってしまった……だって姉さんの目が凄く怖かったんだもの

 顔は笑っているのだが目は笑っていない、正にそんな表現が正しいだろうか。


「えっと……」


 姉さんに見つめられて言い淀む。

 とはいえ、よくよく考えてみれば別に怯えることはないのではないか、だって夢野はクラスメイトで友達なのだからこうして連絡先を知っているのは別に不自然なことではないはずだ。


「クラスメイトの子だよ。姉さん……俺だって女友達くらい居るんだけど」

「そ、それもそうよね……女友達くらい居るわよねうん」


 あ、姉さんの雰囲気が元に戻った。

 ていうかなんで俺は浮気を疑われている彼氏みたいな感じになっているんだ。

 姉さんの様子に溜息を零し、俺は立ち上がって冷蔵庫に向かい二人分の麦茶をコップに注いで元の位置に戻る。


「はい」

「ありがと」


 姉さんにコップを渡して二人一緒に麦茶を飲む……ふぅ、乾いた喉が潤いますなぁ。


「ただいま」


 そんな時、玄関から声が聞こえた。

 どうやら兄さんが帰ってきたようだ。


「あら、帰ってきたのね」


 全然嬉しそうではなくむしろ鬱陶しそうに姉さんは口にした。

 暫くすると兄さんがリビングに現れ、仲良くソファに座る俺たち二人を見て目を丸くした。


「珍しいな、二人がそうしてるのは」

「ふふん、蓮とラブラブしてたのよ~♪」


 そう言って姉さんは抱き着いてきて頬をスリスリと擦りつけてくる。

 兄さんは姉さんから俺に視線を移し何かを察したのか苦笑した。


「なるほど理解した。麻美の一方通行ってわけか」


 兄さんの呟きは全く届いていないのか姉さんはご満悦のように俺に引っ付いたままだ。

 シャワーを浴びてくると言って風呂場に向かった兄さんを見送り、それから暫く俺は姉さんが満足するまでそのままだった。

その後、兄さんと入れ替わるように姉さんが風呂に入っている間、料理の下ごしらえをしながらテレビを見ていた時だった。


「麻美は本当にお前の傍だと幸せそうだな。なあ蓮、あんな姉が居たんじゃ彼女を作るのは大変だぞ」

「……悔しいことにそんな兆候はないんだなこれが」

「そうか。クラスに気になる子は居ないのか?」


 気になる子、色んな意味で気になるのは夢野だけど……う~ん。

 そんな風に俺が黙ったからなのか兄さんはニヤッと笑った。

 ただその笑みは悪意を感じさせるモノではなく、純粋に俺に気になる人が居ることが分かって嬉しそうな笑みだった。


「その様子だと居るのか? ただ、蓮の場合は単に気になるだけで恋ではなさそうだな」


 流石兄さんだけあってよく分かっているようだ。少し探りというか、敢えて俺はこんな言い方をしてみた。


「居たとしても言わないよ。兄さんに手を出されたら嫌だしね」


 さて、どんな反応を返してくる? 一瞬兄さんは俺の言葉に目を丸くしたが、すぐに苦笑するように口元を緩めた……え?


「仮にそうだとして弟の気になる女に手を出すかよ。つうか高校生なんざ範囲外だわ」

「……は?」

「なんだその顔は……」


 ……どういうことだ?

 兄さんの様子から冗談を言ったわけでも、ましてや嘘を言った雰囲気も感じない。

 神里蓮としてずっと生きてきたからこそ、兄さんや姉さんと長く接していたからこそ分かることだ。

 それから姉さんが風呂から上がり、家族そろって夕食を食べて俺は部屋に戻った。

 明日の用意を済ませてベッドに横になり天井を見上げ、俺はかつての記憶を掘り起こすように目を閉じる。


「夢野を有坂から寝取るのは間違いなく神里涼、兄さんのはずだ」


 名前を実際に口にして確信を持つ。

 この記憶は絶対に間違いではない、鮮明に思い出せるからこそさっきの兄さんの言葉が頭から離れない。

 高校生は範囲外、ならどうして兄さんは夢野に手を出したんだ? どれだけ考えても当然のことながら答えは出てこなかった。


「……っていうか、全部クリアしてないんだよなよくよく考えれば」


 今になって思い出したことだけど俺はあのゲームを完全クリアしたわけではない。

 確か回想シーンが四つ、ギャラリーに関しては六つくらい見れていないはずだ。

 どんなにゲームをやり直してもどんな選択肢の組み合わせを選んでも解放出来なかったのだ。


「基本ネタバレとか見たくないから攻略サイトも見なかったしな……どんなストーリーが見れるのか気になってたけど、結局他のことが忙しくてそのまま起動しなくなったんだったか」


 まああるあるだよなこういうのは。


「ま、物語の大体の流れは覚えてるけど設定とかはうろ覚えみたいなもんだ……会話の内容とかもイベントシーン以外はあまり覚えてないし」


 なんだ、全然覚えてないようなもんじゃん……少しガッカリすると同時に前世の記憶なんてそんなもんかと苦笑も漏れて出た。


「……というかさ、案外ゲームの通りに進まないんじゃないかこの世界は」


 兄さんと姉さん、ゲームと同じ設定を垣間見ることはあるけどそれだけだ。

 二人には俺という弟は居ないはずだし、何よりゲームで見ることが出来なかった優しさを感じることが出来る。

 姉さんはあの通りだし、兄さんに関しては高校生に興味はないと断言したほど……うん、ゲームと今俺が居る現実は違うのかもしれないな。


「……はは、そう思うと少し気が楽になるな」


 姉さんには夢野の名前を知られるハプニングこそあったがそれだけ、兄さんの方も気にしないで良いのだとすれば夢野と有坂を引き裂く存在はこの先現れないことを意味している。

 もちろん夢野があれほどの美少女なのだから、たとえ兄さんが手を出さずとも他に狙う男が現れるのかもしれないがそんなことを今の段階で考えても仕方がない。


「あ~なんかすごい肩の荷が下りた気分だ」


 もちろん何が起こるか分からないから兄さんに関しては目を光らせておくけど、それ以外は夢野のことを好きな有坂の男の見せどころってやつだろう。

 一人で納得して一人で笑って、一人で安心してまた笑って……完全に危ない奴だな俺は。

 でも、ある意味でこの気持ちを理解してくれる人は居ないんだろう。

 前世の記憶がある生まれ変わり、そんな人が他に居るとは思えないからな。


「……ふぁ~……あぁ眠い。安心したからかな、今日はもう寝よう」


 一気に襲ってきた眠気に抗えず、俺は電気を消すためにリモコンに手を伸ばしたのだが、その時に俺のスマホが震えた。


「? ……あぁ、夢野か」


 どうやら夢野からのメッセージらしい。


『こんばんは。いきなりごめんね? 弟にゲームを渡したら喜んでくれたの。神里君のおかげだね、今日は本当にありがとう!』

「……律儀だな。別にお礼なんて帰り際にもらったからいいのに」


 ウトウトしながらも何とか返事を返す。

 どういたしまして、申し訳ないけど眠いからもう寝るよっていう簡単なメッセージだ。

 送ってからすぐに返信が届き、夢野から謝罪と共におやすみなさいとのメッセージをもらった。


「おやすみ……なさいっと」


 今をときめく人気の芸人スタンプを入れて……よし、もう限界だ。

 それから夢野から返事が来たのかどうかは分からないがそれを確かめる間もなく俺の意識は闇に沈むのだった。






~18禁エロゲ《堕ちる、どこまでも》の感想板~


・エッチシーン気合入れ過ぎちゃう? 絵もそうだし声優さん名演技すぎんか

・それな。ほんま興奮したわ~

・イベントシーンも良かったわ。亜梨花ちゃんエッチすぎ

・エロゲのヒロインやぞエロいに決まっとるやん

・それは分かってるんだけどさぁ……もうね、色んな意味で凄いヒロインでしたわ

・制作した会社が会社だしな。何かあるとは思ってた

・質問おけ? 暇人助けてくんろ

・うん?

・どうした?

・ギャラリーと回想シーンが何やっても全部解放されないんだがどうなってんだ

・あぁ……

・あれは初見じゃ……いやいや、たぶん気づかんであれは

・なんや、そんな気づかないレベルなの? つうか“蓮”って誰やねん。名前がちょろっと出ただけやん

・うん……とりあえず全部解放しような?

・せやせや。そうすれば出てくるべ

・ほーん。とりあえず攻略見るのは癪だから自力で頑張るわ!

・がんば~!

・行き詰ったら戻ってきな~

・ういうい

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