第3話 名前のある女の子

 その女はベンチに腰かけている。

 ただ腰かけて続けている。

 それだけなんだ、だってそれだけで精一杯だし、それで十分周囲の期待に応え続けているわけだから。。。

 先ほども言ったが彼女はものすごく美人で、その美しさは例えようもない。まるで女性というイデアと美しいというイデアを合わせて言語では表しようのないイデアを具現化したかのようだ。


 美しいあまり周囲を拒絶し、周囲もなにか「よそよそしい」


 彼女はまったく喋らない、喋りたくないのか、喋る能力が欠如しているのかはわかららない。薄幸と言うか、「人」であるかも疑わしい。。。



 つまりどういうことか? 

 彼女は「人」ではない可能性があるのだ。

 ではなに? よくは「わからない」


美しい、まるで妖精のような「彼女」は夢と現実の両方に存在する「存在」


 彼女の名前は「わからない」 ただあるのは知っている、おれが思い出せないだけなのだ。帰ってくると決まって「忘れるんだ」

だからここでは仮に彼女のことを


           「忘却」

 と呼ぶことにしよう。

 ここで前提を言っておくことにしよう。


その一、  「忘却」は恐ろしい。

その二、  おれは「忘却」に惚れている。

その三、  おれは「忘却」によって喚起される事象で死ぬことになる。



 

不思議なことがここには多々あるのだが、みんなも知ってるだろう?

ここは



        「精神病院の閉鎖病棟」 



だよ。



 摩訶不思議なことがなんでも「存在」できる場所なんだ。




 だから知っておいてくれ、




   おれの名前が  「フジミ」 だったってことを。。。



 ああ、やっぱりここに帰結する、「死に」たいな。。。

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