【シーン9:破顔】③
GM:美堺が目を覚ますと、UGN本部の医務室であった。
GM:仕切りのカーテンの向こうからは調査チームのメンバーの話し声が聞こえるだろう。
二郷 友典:「~~~~~~~!」
対魔忍:「!!」
二郷 友典:「!!!!!!!」
宵野間 灯:「オーナー!!」
美堺 菜麻:「…………」
少し放心したまま状態を起こす。
両手を確認して繋がってることに驚きつつ、鈍い頭の痛みに顔を歪ませる。
美堺 菜麻:ここは医務室。多分、UGNの。
そこまで理解しているのになかなか声が出てこない。
美堺 菜麻:何があってどうなった?
確かめるように周りを見渡す。
宵野間 灯:「覚えて、ないんですか……?」
対魔忍:「あのジャームの群れを片付けて、あとを追ったんですよ」
二郷 友典:「宵野間大活躍だったな。ガンガンジャームをぶっ潰してよぉ」
対魔忍:「で、気絶している貴女を見つけ、連れ帰ったわけです」
印南 標:「現場に倒れていたのは貴女一人……まぁ、殺されなかっただけでも運が良かったんですかね」
GM:印南はブロークンスマイルに美堺が負けたのだと思っているようだ。
宵野間 灯:「良かった……無事で、本当に良かった……」
美堺 菜麻:一つ一つ話を聞いて情報を整理する。積み上げる。
ぼんやりした記憶の中、はっきり覚えていたことを情報量で隠すみたいに。
美堺 菜麻:「……吾妻ちゃん」
美堺 菜麻:口から出た。情報を入れ過ぎて漏れ出した。
美堺 菜麻:「吾妻ちゃんがいた」
美堺 菜麻:ありえない。彼女は死んだ。
対魔忍:「……!」
美堺 菜麻:「吾妻ちゃんが私を殺そうとした」
美堺 菜麻:「きっと私が殺してしまったから」
印南 標:「そ、それは…………」
美堺 菜麻:あぁ、ダメだダメだ。
美堺 菜麻:あんな風に現れてきたら。
美堺 菜麻:「吾妻ちゃんが怒ってる」
美堺 菜麻:せっかく吹っ切ろうとしたのに。
美堺 菜麻:「私が……選択を間違えたから」
美堺 菜麻:動けなくなっちゃう。
美堺 菜麻:「……私、もうダメかも知れない」
GM:周囲の者達が美堺の様子に困惑を浮かべる中
GM:ガラガラと医務室の扉が開く。
田岡 夕比:「うぉーーーい、やべぇぜ皆~~~~。吾妻妹が消えたってよぉ~~~」
GM:田岡が資料片手に部屋に入ってくるのだった。
宵野間 灯:「まさか本当に……?」
田岡 夕比:「死体おいてあるとこの警備員とか用務員は死傷or行動不能。証言だと間違いなく吾妻 秋穂は自ら動き出したって~~」
田岡 夕比:「いやぁ~~~……どういうことだろねこれぇ~~~」
田岡 夕比:「って、アレ?なに?どうしたん」
田岡 夕比:「あっ、みっちょん起きてる~~~キャッサバ~~(挨拶)」
美堺 菜麻:「……田岡ちゃん」
美堺 菜麻:「……生きてたんですね」
美堺 菜麻:「よかった……」
田岡 夕比:「あーーーー、うん」
田岡 夕比:「ふへへ」
田岡 夕比:「おかげさまで」
美堺 菜麻:「……やっぱりあれ、吾妻ちゃんだったんですね」
美堺 菜麻:「恨んでるんでしょうね、私のこと」
田岡 夕比:「あ~~~~?」
田岡 夕比:「なに?もう会ってんの?ふーーん」
宵野間 灯:「……だったら、どうするんですか?やめるんですか?」
美堺 菜麻:「……辞めは、しないけどさ。リーダーですから」
美堺 菜麻:「でも…………」
美堺 菜麻:「…………」
美堺 菜麻:「……ごめん、ちょっと考えさせて」
田岡 夕比:「……」
田岡 夕比:「ウケる~~~」
田岡 夕比:「ウケるついでに、印南ぃ」
印南 標:「……なんすか」
田岡 夕比:「ちょっと飲み物買ってきてよ。タピオカドリンク」
GM:印南は露骨に嫌そうな顔をしたが、幾らかの言い合いの末に観念して退室していった。
田岡 夕比:「……よし、行ったな」
田岡 夕比:「じゃあリーダーが考えてる間に~、ボキが気付いたことの情報共有するねぇ~」
田岡 夕比:「ボキさぁ、まあまあ前から吾妻夏稲……つまりブロークンスマイルを知ってるわけなんだけどさァ」
田岡 夕比:「だから分かったっていうか。実際にさっき、あのジャームを見てさぁ」
田岡 夕比:「あれ、吾妻夏稲じゃねぇよ」
GM:田岡の感じたもの、というのは単なる直感ではない。
GM:ブロークンスマイルを名乗るジャームが使用したEロイス《虚実崩壊》は、そのオーヴァードの衝動が「妄想」であるときに所持できるEロイスです。
GM:田岡は元の吾妻夏稲を知っており、その衝動の傾向も知っています。
そして、それは「妄想」の衝動ではなかったということです。
田岡 夕比:「その上でさぁ、今だから話すけど」
田岡 夕比:「印南がさぁ。怪しいと思うんだよね」
田岡 夕比:「吾妻夏稲……ブロークンスマイルの信奉者。ボキの考えてることが正しければ、そんなことをする奴は一人しかいない。調べてみるべきだと思う」
田岡 夕比:「ただ……」
田岡 夕比:「…………さっきドリンクを買いにいかせた印南は……悪いヤツじゃないのかな、とも……思ってる」
宵野間 灯:「……」
美堺 菜麻:「……吾妻夏稲と対峙した時、事件を起こす理由を聞いたら彼女「私が一番凄いってこと」を示すみたいなこと言ってたんですよね」
美堺 菜麻:「一番ってのは印南ちゃんがよく口にする言葉だし、今回現れた吾妻夏稲が印南ちゃんが妄想する『一番凄い吾妻夏稲』だとしたら、まぁ」
美堺 菜麻:「あり得る話かも知れないなって思います」
宵野間 灯:「そんな……」
二郷 友典:「……(混乱している顔)」
宵野間 灯:「ならもしそうだとしたら、印南さんは……」
美堺 菜麻:「…………」
美堺 菜麻:「……今いる印南ちゃんは、本当に印南ちゃんなのでしょうか?」
美堺 菜麻:「私が吾妻ちゃんを友達と誤認していたように、みんなも誰か別の人を印南ちゃんと誤認していた可能性は?」
美堺 菜麻:「……あぁ、ダメだ」
美堺 菜麻:「考えがまとまらない」
田岡 夕比:「予想じゃどうにもなんないから調べよーって言ってんの」
対魔忍:「あの戦闘中に発信機をブロークンスマイルに付着させてあります。調査を省いて居場所に急行してもよいでしょう」
田岡 夕比:「ま、どうするかはチミが決めなよ。ミッキー。まだ、リーダー続けるんならさ」
GM:室内に沈黙が流れる。割り切って、振り払ったはずの
GM:その状況に憤懣したのは……
宵野間 灯:「オーナーはずるい人です……」
宵野間 灯:「人が距離を置こうとしているのに勝手に踏み込んできて」
宵野間 灯:「人に光を見せておいて、なんですか、それ……!」
宵野間 灯:美堺を見る宵野間の目から、大きな水滴が零れ落ちる。
宵野間 灯:「もう、いいです……!」
宵野間 灯:そのまま立ち上がり部屋を飛び出した。
宵野間 灯:信じてますから、あなたならきっと戻ってくるって。
宵野間 灯:だからそれまでは、私が頑張ります。
美堺 菜麻:合わさった目から零れた涙が印象的だった。
初めて姿を見た時から考えると随分と喜怒哀楽を出すようになった。
美堺 菜麻:「……ごめんね、勝手で」
だから意外だった。
美堺 菜麻:あそこまで言ってくれる程度に、気にかけられていたのが。
美堺 菜麻:「私結構、自分勝手な人間だから」
だから申し訳なかった。
美堺 菜麻:前を向き始めた彼女のオーナーが、こんなダメな奴で。
美堺 菜麻:そもそも私がUGNに入ったのも、田舎のしがらみから抜け出したかったからだし。
何か信念があってここにいるわけじゃないし。
ただ身内が勝手に敷いたレールを見限ったからには頑張ろうって意気込んでただけで、だからこういうのには実は弱くて。
美堺 菜麻:「……私が光を見せた、かぁ」
美堺 菜麻:でも、まぁ、うん。
美堺 菜麻:「……そんな風に、言ってくれるなら」
美堺 菜麻:もうちょっと頑張ってみようかなと。
閉ざされた扉を静かに見つめた。
~シーン終了~
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※ここで時間的にもキリが良かったのでセッション8日目も中断。次回に続く。
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