【シーン6:襲撃】③

GM:破壊に紛れ、四足歩行のジャームの残党は逃げ去って行く。

 追うことで多くを仕留めることはできたが、それでも何体かは取り逃がしてしまうだろう。


GM:それほどに多くのジャームがここには集結していた、ということだ。

 無事に生還できたのは多大な成果といえるだろう。



印南 標:「…………ぅぅ……」


GM:印南は一応意識を取り戻したが、まだ朦朧としているようであった。

 二郷に関しても、どうやらエフェクトを使いすぎたらしい。消耗が大きい様子だ。




GM:そんな状況で、美堺の端末に連絡が入る。対魔忍と田岡のチームからだ。


対魔忍:『美堺リーダー。……対魔忍です』


対魔忍:『……』


GM:通話の向こうの声は暗い。


美堺 菜麻:「お疲れ様です。連絡を入れたと言うことはそちらも一段落ついたようですね」


美堺 菜麻:「こちらは一般人、メンバー、街に被害が出たものの敵を退けることができました」


美堺 菜麻:「そちらはどうですか? 変に気を使わず、包み隠さず報告して下さい」


二郷 友典:「生きてるぞーー、対魔忍---……」(遠巻きに声をあげる)



対魔忍:『……それは何よりです。こちらは……町の被害はある程度抑えることができました。私も、田岡さんも無事です』


対魔忍:『ただ……吾妻さんに関して、ですが……』




対魔忍:『間に合いませんでした。私達が到着した時点で……もう、既に……』


宵野間 灯:「……」


美堺 菜麻:ぎゅっと、下唇を噛む。


美堺 菜麻:少し鉄の味がした気がしたけど、きっと気のせいだ。


二郷 友典:「……マジかよ」


美堺 菜麻:「……わかりました。助けに向かった二人だけでも生きていて何よりです」


対魔忍:『……』


美堺 菜麻:「現場での後始末が終わり次第戻って休んで下さい」


田岡 夕比:『忍者。代わって(遠い声)』


対魔忍:『え?あ、はい』




田岡 夕比:『……いや、間に合うわけがないんだわ』


GM:通話を代わったらしい田岡の声が聞こえてくる


田岡 夕比:『オーヴァードでもない小娘がさぁ、ジャームに襲撃されたんだから、これは当然の結果って感じ』


美堺 菜麻:「…………えっ」

 オーヴァードじゃない?

 だって彼女はUGNで働いてて、コードネームもあって、シンドロームは、隠して、いた、け、ど……?


田岡 夕比:『えっ、って……チミさぁ……』


GM:美堺の反応に、田岡は拍子抜けしたような、イラついたように呟いた。


田岡 夕比:『……』




田岡 夕比:『そうだよ。オーヴァードじゃない。理由があって、UGNに私が入れさせてた一般人』


田岡 夕比:『……だから、意外っていうか。ちょっと不思議には思ってたんだよね』


田岡 夕比:『リーダー?なんでオーヴァードでもないチミと彼女が友人なの?』


田岡 夕比:『チミ達……チミ達の人生のどこに、接点なんて、あったってわけ?』


美堺 菜麻:「それは」

 振り返る。


美堺 菜麻:「それは……」

 自分の生い立ちを。



美堺 菜麻:「それは…………」


吾妻ちゃんと知り合うキッカケになった出来事を。


────────────────────


美堺 菜麻:何にもない、本当に何にもないクソ田舎で過ごしてた私。


 村の山の中にある祠にある何かを見て、オーヴァードになって。


 あぁ、これでこんな寂れた場所からおさらばできるラッキーって思って、UGNの本部を行き来するようになって。


────────────────────


美堺 菜麻:「……無い、ですね。私のこれまでに」


美堺 菜麻:「吾妻 秋穂って名前の人物と深く関わったことは。強いてあげるなら」


 召集前の、食堂ぐらいだろう。



田岡 夕比:『……だよね。あの子と私が知り合ったのだって、ひと月前とかそこらだし』


田岡 夕比:『……まぁ、それなら』


田岡 夕比:『よくも言えたもんだよねぇ。”よく知った人のことを私は背負いたい”だなんてさぁ』



対魔忍:『…!田岡さん』


田岡 夕比:『もう一回よく考えると良いんじゃない?チミが何を選んで、何を見捨てたのかを、さ』


田岡 夕比:『じゃ。また後で。吾妻 秋穂が回収したモノとか……本部に持っていくからさぁ」


対魔忍:『あ~~~~も~~~~~!失礼します!リーダー!』


GM:その対魔忍の言葉を最後に、通話が切れる。



美堺 菜麻:「…………」

 通話が切れた端末を握りしめて立ちすくむ。


美堺 菜麻:――何を選んで、何を見捨てたのか


美堺 菜麻:田岡が言ったことが頭の中をぐるぐるする。


美堺 菜麻:どこで認識を間違えた。どこで選択を間違えた。


美堺 菜麻:……いや、そもそも。


美堺 菜麻:本当に、間違えていたのか?


美堺 菜麻:正しいのはどっちだ?



美堺 菜麻:「……いや、いやいや違う」


美堺 菜麻:正しいも正しくないも無い。

 あるのは事実だけ。


美堺 菜麻:守ったモノと守れなかったモノ。

 それだけ。



美堺 菜麻:……だったら。



美堺 菜麻:「……現場の後始末が終わり次第、私達も戻りましょう」



美堺 菜麻:今までと何も変わらない。


美堺 菜麻:「端末では共有し切れないこともありますから」


美堺 菜麻:ただ私が責任を負う事が一つできただけ。



美堺 菜麻:「ッッッヒヒッ、ほんっとクッソムカつくなあのクソ煽りこけし眼鏡。脳みそにウジでも湧いてるでしょ」


美堺 菜麻:――よく知った人のことを私は背負いたい


美堺 菜麻:「『よくも言えたもんだよねぇ』って、そりゃあ言いますよ」


美堺 菜麻:だって私は。


美堺 菜麻:彼女の名前も、姿も、声も、知ってるんですから。


美堺 菜麻:例え全てを知らなかったとしても。

 守るべき一般人だったとしても。


美堺 菜麻:「私と彼女は、少しの間だったとしても」


美堺 菜麻:友達だったんですから。




────────────────────


GM:えーーー、はい。


GM:実に不思議なことですが、実は美堺菜麻に提示したハンドアウトは吾妻 秋穂とロイスが結べるほど、関係が深いものではなかったのです。


GM:ハンドアウトが間違っていた、といえるでしょう。


GM:特殊な裁定となりますが、望むのであれば、吾妻 秋穂のタイタスを消去しても構いません。

 勿論そのまま、タイタスとして保持してもらっても構いません。

 そして、その代わりとなる真のハンドアウトを配布いたします。



PC➀『対策チームリーダー』用ハンドアウト

ロイス:“イレスポンシビリティ”田岡 夕比 推奨感情:任意/任意

 キミはUGN日本支部より今回のUGNエージェントをターゲットにした一連のテロ事件の調査チームに配属された。そこでキミはどこか気だるげで、積極的にオーヴァードとしての能力を使用しないエージェント、田岡 夕比と出会うのだった。

 UGNエージェントの情報を何故犯人が把握しているのか……エージェントを殺害するだけの実力とは如何ほどのものか……全ては謎だらけだ。

戦闘に長けたオーヴァード達と共に、キミがこの事件を解決に導かねばならない。


────────────────────

※キャラクター造形の根幹にもなりえるハンドアウトが間違っていた、など普通あってよいことではない。だがGMはここで「これにはちゃんと理由がある」とPLに了解を取り、動揺するPLのニヤと相談をしながらこのシーンを進行した。

 ニヤは初期のハンドアウトをもとに、自由に吾妻との出会いなどを想定、演出してくれても問題はなかったのだが、今回は美堺の困惑と状況の異様さをだすために「知り合うキッカケなんてなかった」と演出してくれたのである。


 タイタスに関する裁定、選択を最後に4日目が終了。物語は、分岐した先の展開へと進んでいく……。

────────────────────




美堺 菜麻:吾妻 秋穂のタイタスを破棄して田岡を取ります。


GM:了解しました~~



~シーン終了~

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