二子玉家の双子は今日も仲良く下校中(2)
一軒家が立ち並ぶ大きな通りの裏に小さな路地がある。
その先を進むと、誰の目にも止まらないような場所でひっそりと佇む一軒の寂れたお店が佇んでいる。
入り口には、どこか懐かしさを感じる棒状のアイスを始め、さまざまな種類のアイスが無造作に散りばめられている冷凍ショーケースと、10円玉を入れるとガムが一つ出てくる機械が置いてある。
見上げれば、文字が色褪せて読めなくなった『○○商店』という看板が、ぎりぎり駄菓子屋としての体裁を保っていた
俺と同じ様に看板を見上げていた凛がボソッと呟く。
「懐かしいなぁ~。ここによく少ないお小遣いを握りしめてきてたっけ。」
双子はお金持ちの家の子供だったが、幼い頃から
「凛は計画的に使ってたけど、鈴なんかすぐに使い切ってたよな」
俺が鈴をからかうと少し恥ずかしそうに俯いたが、すぐに仕返しとばかりに俺をからかってくる。
「正樹くんは、逆に優柔不断すぎて全く決められなかったよね」
「俺は優柔不断なんじゃない。慎重なんだよ」
「まあ、確かに正樹は何買うか迷ってたことが多かったな」
凛も鈴に続いて俺をからかう。
2対1になると俺側が不利なことはよくわかっている為、すぐに話を切り替える
「そんなことより早く中に入ろう。今なら買いたいものを迷う必要もない」
「やっぱり迷ってたじゃん!まあいいや、こんにちは~!」
鈴に続いて俺たちも店の中に入る。店の中も外と変わらず記憶通りの光景に懐かしさを感じる。
入って左の棚には昔よく食べた10円ガムやイカの蒲焼などを始めとした大量の駄菓子が。右の棚にはベーゴマや
鈴の声を聞いた店主がカウンターのさらに奥にある襖をあけて杖をつきながら出てきた。
「その声はもしかして鈴ちゃん?」
「お久しぶりです。お婆ちゃん!」
俺たちが子供の頃からまるで変わらない姿で出てきた店主は、鈴を認識すると、久しぶりに会えたことに嬉しそうに近寄ってくる
「やっぱり鈴ちゃんだったのね。こんなにべっぴんさんになっちゃって」
「やだなぁ~、そんなんじゃないって。お婆ちゃんこそ元気?」
「元気よ…と言いたいところだけど。流石にそろそろ年を感じてきてねぇ。この店もいつまでやれるか…」
「えぇ~。それは悲しい…」
「ふふ、ありがとう。そう言ってもらえるだけで嬉しいわ」
そこまで会話して、お婆ちゃんは来客が鈴だけで無いことに気づいた。
「あら、鈴ちゃん。べっぴんさんになったからって、こんなかっこいい子達を侍らせて。」
「ちょっと違うよ、お婆ちゃん。これ凛と、正樹くんだから」
慌てた様子で鈴がお婆ちゃんの間違いを訂正する。
「どうも、ご無沙汰しております。」
「お久しぶりです。」
凛が挨拶したので俺もそれに倣って続いておく。
「まぁ、2人ともこんなに大きくなって。一瞬誰だか分からなかったわ。」
お婆ちゃんは驚いた様子で俺たちを見比べる。
「それにしても、かっこよくなったわね」
「ありがとうございます。お婆さんもお元気そうで何よりです」
凛がよそ行きの顔でお婆ちゃんに接しているのを尻目に俺は店内を物色する。
ふと、1番好きだった小さなドーナツが3つ入っている駄菓子が目に止まる。なんとなく手に取って見ていると、横から鈴が覗き込んできた。
「わぁ、懐かしいなぁ。これ正樹くんが1番好きだったやつだよね?」
「あぁ、そうだな」
「1人で食べてもいいのに、わざわざ私達に分けてくれてたよね」
「それは、お前らが物欲しそうな目でこっちを見てたからだろ?」
「べ、別にそんなことないもん。でも、なんだかんだ言って結局分けてくれるのが、正樹くんの優しいところなんだよ」
「べつに普通だよ」
そう鈴に返しつつ俺はこの駄菓子を買う事に決め、お婆ちゃんの元に持っていく。
「お婆ちゃん、これひとつ」
「はいよ、30円ね」
俺は財布から小銭を取り出しお婆ちゃんに手渡す。
「はい、ちょうどね。ありがとう」
欲しいものが手に入って満足したので、俺は先に店の外に出る旨を2人に伝える。
「俺は、先に外出てるぞ」
「分かった。私もすぐに行くね!」
「りょーかい」
俺は2人からの了承を受けたことを確認すると、店の扉をくぐった。
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