二子玉家の双子は今日も仲良く下校中(3)
しばらく外で懐かしさを感じる景色に浸っていると、後ろから肩をポンポンと叩かれる。
それに反応して後ろを振り向こうとすると途中で頬に突っかかりを感じた。
どうやら後から店を出てきた鈴が肩を叩いたついでに、指を俺の頬に向かって突きだしていたらしい。
「あはっ!やっぱり正樹くん引っかかった!このイタズラ昔よくしてたの覚えてる?」
「あぁ、よく覚えている。これ凛にやると何故かマジでキレるんだよな」
「そうそう。だから正樹くんにやるのがちょうどいいんだよね」
「ちょうどいいってのはちょっとよく分からないけど、鈴が楽しそうで良かったよ」
「2人ともそんなところで何やってるんだ?」
凛が遅れて店を出てくると、変な格好をしている俺たちを不思議そうな顔で見る。
「別に、何も。それより2人は何を買ってきたんだ?」
「あぁ、俺はこれだよ」
そういって差し出してきた凛の手の上にのっていたのは10円玉の形をしたチョコだった。
「昔から凛はそれ好きだよな」
「なんとなくチョコをお金の形にするっていうコンセプトに惹かれるんだよな。」
凛はしばらく眺めた後、ひょいっとそのチョコを口に放り込んだ。
その様子を見ていた鈴が今度は自分の番とばかりに俺たちに話しかけてくる。
「ねぇねぇ2人とも。私が何買ったか当ててみてよ」
「どうせ、碌でも無いもの買ったんだろ」
凛が呆れ顔でそう言うので、俺も同意する。
「まあ、鈴がまともなの買っているところ見たことないよな」
「もう2人とも、私のことをなんだと思ってるのさ。私が買ったのはこれ!」
鈴が差し出したのはパッケージに『3分の1で超激辛!!』と書かれたガムだった。
それを見た瞬間、凛が心底嫌そうな顔をする。
「ほらみろ、やっぱりしょうもない」
「これ、もしかして俺たちも食べなくちゃいけないのか?」
「当たり前でしょ。私1人でこれ食べても面白く無いじゃん。」
「俺は、パスするぞ」
そう言って凛が歩き出そうとした時…
「スキアリ!!!」
鈴がガムをひとつ凛の口に投げ入れる。当然、突然自分の口にガムを入れられたことに凛が驚く。
「な、なにするんだよ!…甘いなこれ。」
「残念、凛のはハズレか。これで、正樹くんと私の2分の1だね」
「俺もパスしたいんだが…」
「だーめ。はい、どっちか選んでね!」
やはり、ダメらしい。どうやっても逃れられそうにないので、腹を決めて、一つ選んで手に取る。
それを見た鈴も残った方を手に取った。
「じゃあ、せーのでいくよ。せーの!」
鈴の掛け声に合わせてガムを口に入れると、程よい甘さが口の中を広がる。俺の方が当たりだということは、もちろん残りがハズレなわけで…
そこまで考えて鈴の方をみると、ケロッとした顔をしている。
「なぁ、鈴。俺の方は甘かったんだが、そっちが激辛じゃなかったか?」
「え?私の方も甘かったけど?」
「つまり、最初から激辛なんて入ってなかったってことか?」
「そうなんじゃない?あーあ。正樹くんのリアクションが見れなくて残念。」
「なあ正樹、鈴の耳を見てみろよ」
それまで黙っていた凛が急に喋る。
「耳?鈴、ちょっとごめんな。」
おれは隠れて見えない鈴の耳を、髪をかきあげることで見えるようにする。
「あ、ちょっと!」
鈴は抵抗しようとしたが、一歩遅い。そこには、真っ赤に染まった耳があった。
「こいつは昔から辛いもの食べると耳が赤くなるんだよ」
「ちょっと!凛。余計なことしないで!」
「なんだよ、隠そうとするお前が悪いんだろ?」
「せっかくあとちょっとで正樹くん騙せそうだったのに」
「ということは、やっぱりハズレを引いたのは鈴だったんだな」
「そうだよ。はぁ~辛かった」
鈴はカバンから水筒を出して中身を飲み干す。
「でも、鈴はさすがだな。凛に言われるまで全く気づかなかった」
「ふふっ、そうでしょ?天才子役の名は伊達じゃ無いですから」
「そんなどうでもいいことで天才子役って言われてもな…」
「凛はうるさい!」
「はぁ?うるさいのはお前だろ!」
「別に私はうるさくないもん!」
また、いつもの喧嘩が始まったので慌てて止めに入る。
「分かったから、2人とも落ち着け。そろそろいい時間じゃないか?」
「そうだな、そろそろいい時間だろうし帰るか」
鈴が歩き出しながら言う。
「帰ったら宿題終わらせなきゃ」
「俺は手伝わないからな」
「別に誰も凛に手伝って欲しいなんて言ってません」
一瞬で喧嘩を再開した2人に呆れながら、ある意味、これが俺の放課後なんだと悟って、俺は帰路に着く双子の後についていく。
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