二子玉家の双子は今日も仲良く下校中

一足先に校門をくぐり抜けた少女が、腰あたりまで伸ばした、透き通る様なブロンドヘアを揺らしながらこちらを振り向いた。


「じゃあ、どこでショッピングする?」


「いや、俺がショッピングについて行く前提で言われても、困るんだけど…」


「えぇ~、正樹くんは私と帰りたいって言ってくれたのに?」


「話を捏造するな。俺は、3で帰れば良いだろって言っただけだ」


俺が鈴の一歩後ろを歩きながらそう言うと、隣の凛も同意してきた。


「そうだぞ。なにちゃっかり俺が居ない前提で、話を進めてるんだ」


「凛は黙ってて!正樹くんが言わなかったら、あんたとなんて帰ってあげないんだから!」


「うるせぇ!それはこっちのセリフだっての!」


すぐに争い始める2人を治めるためにも、俺は鈴に話を振る。


「そういえば、ショッピングに行きたいって言ってたけど、何か買いたいものでもあったのか?」


「ん?あぁ~、正直買いたいものは無いんだけどさ。せっかくのオフだから正樹くんと遊ぼうと思って」


「先週でやっとドラマの撮影が終わったんだっけ?」


「そう!だから久しぶりのオフなんだよね」


鈴は子役時代ほど忙しくは無いが、高校生になった今でも未だに芸能界で活躍している。

舞台には出なくなった様だが、その分テレビでの仕事が増え、学業と両立できる範囲で頑張っているらしい。


「そんな事言ったら俺だって久しぶりのオフなんだけど」


「今日は会議に出なくてもいいのか?」


「あぁ、今日は役員達に任せても問題ない」


凛の方も相変わらず、いくつかの会社を纏めている為、放課後になるとオフライン、オンライン問わず、様々な会議に出席している。

酷い時は会議のダブルブッキングなんてこともあるという。


まあ凛は鈴と違い、学業的な問題が全く無いため、学校以外の時間をフルに使えるということも大きな要因だろう。


「あんたはあたしが仕事で居ない間、学校でよく正樹くんと会ってるじゃない」


「それはまた別の話だろ」


「全然別じゃない!私が学校に来てる時ぐらい譲りなさいよ!」


「嫌だね。なんでおまえにわざわざ譲る必要があるんだよ」


折角話題を逸らしたのに、すぐに喧嘩をし始める2人を俺はため息混じりに眺める。


「お前ら、いつもそんなで本当に飽きないよな」


「別に私だってやりたくてやってる訳じゃないんだよ?ただ、凛が突っかかってくるからしょうがなく相手してあげてるだけで…」


それを聞いた凛はさらにヒートアップする。


「いつもお前が俺に喧嘩吹っかけてくるんだろ」


「別にそんなことしてません~」


「してるだろ!」


「してないです~!」


もうキリがないと思った俺は、2人の間に割って入る。


「はいはい。聞いた俺が悪かったから、もう喧嘩はやめろ。次やったら2人とも一緒に帰らないからな。」


「ちっ。正樹が言うなら仕方ない」


「喧嘩しないから、一緒に帰ろうよ正樹くん。ね!」


この素直な面が双子の可愛いところだ。


「でも、折角のオフなのにこのまま帰るだけっていうのも味気ないわよね」


「その点は鈴に同意だ。折角ならどこかに寄っていこうぜ!」


「むしろせっかくのオフなら普通、ゆっくり休みたいとか思うものなんじゃないのか?」


「「それはない(よ)!」」



2人にとってオフとは身体を休める為のものじゃないらしい…


「じゃあ昔よく3人で行ってた駄菓子屋に行ってみるか?」


「あそこの老婆ばあさんまだ生きてたのか」


「ちょっと凛!お婆ちゃんを勝手に殺さないでよ!」


「別に殺してはないんだけど、あの人たしか結構いい年だろ?」


「まあ俺たちが子供の頃、既に腰が曲がってはいたな」


「正樹くんまで!不謹慎だよ!」


「すまん、そんなつもりはなかったんだが…」


「久しぶりに俺たちの顔見せに行ってやるか」


凛が俺の提案に同意すると鈴がいままでより少し大きめの一歩を踏み出す、


「そうと決まれば、早く行こう!」

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