二子玉家の双子は今日も仲良く喧嘩中(2)

少しだけ昔話をしよう。


昔と言っても僅か17年前の事だが…


ある平凡な夫婦のところに1つのかけがえのない命が誕生した。


もちろんその夫婦にとってみれば世界一大切で、可愛い息子が生まれたに違いないのだが、世間様からみると、その子もまた両親同様、平凡なのも事実であった。


運動や勉強を人並みにこなし、容姿も平凡。

もちろん友人関係も平凡…のはずだった。


その子供の中で唯一、平凡でないものこそが彼のもつ友人達だった。


では、その友人達とはなにか?


どこかの有名財閥の『後継ぎ』なのか?

それとも類い稀なる『容姿』を持つ子なのか?

はたまた、高度な知性を操る『天才児』と言われる子供なのか?



答えは全てである。

大切な事なので、もう一度言おう。

答えはこれら全てにおいてなのである。



ーーーここで、一度冒頭に戻ろう。



17年前、ある平凡な夫婦が人生最大級の宝物に恵まれたとほぼ同時期に、たまたま隣に住んでいた夫婦も宝物に恵まれた。


しかも二つ同時に。いわゆる双子である。


双子を授かる事は、決して平凡とは言い表せない。


ただ、彼等夫妻の平凡では無い点は、双子を授かったという点に留まらない。


父親の方は、子会社まで含めると、日本産業全体の半分程にも匹敵する規模を持つ超有名財閥『二子玉』を若くして纏め上げる超絶エリートであり、母親はハリウッドで数々の賞を総なめにする実力派女優だった。


もちろん、そんな両親から生まれた2人が平凡であるはずも無い。


双子は幼少期から、その持てる才能全てをありとあらゆる場面で惜しげなく発揮してきた。


双子の兄『二子玉 凛にこたま りん』は、父親譲りの頭の回転の速さを活かし、中学生にして二子玉グループの子会社をいくつか総括、さらに担当した全ての会社で業績を伸ばすなど、その手腕を遺憾なくふるってきた。


一方、妹の『二子玉 鈴にこたま すず』は母親から受け継いだ、見る者全てを惹きつける容姿に加え、太陽のような笑顔と時折見せる年齢に見合わない艶容えんようさを武器に、日本で名前を知らない者などいない、有名な天才子役として、ドラマや舞台などに引っ張りだこだった。



ーーーそんな表舞台で活躍する2人なのに…

いや、表舞台で活躍している2人だからこそと言うべきか…


2人にはある共通の悩みがあった。


それは『友達』が少ない事…



これまで周囲の人間は、双子に対していつも一歩引いて接してきた。


別に2人をイジメようだなんて微塵も思ってないが、住む世界のまるで違う2人にどう接するのが正解なのか分からなかった。


そしてそれは年を重ねれば重ねるほど顕著に現れてくる。とくに中学に入ってからは『二子玉ファンクラブ』なるものができ、その中で、

『むやみやたらに双子に接触しない事』

という鉄則が広まってからは、より周囲との溝が深まっていった。



そんななか、唯一双子に対して臆する事なく接することが出来たのが、俺だった。


俺にとって双子は物心つく前から一緒に育ってきた、ある意味家族と同等の存在といっても過言ではない。もちろん2人を尊敬することはあれど、あくまで幼馴染としての域を出なかった。


そうした環境もあってか、俺たちはいつも3人でいる事が多かった。




ーーーとここまで説明すれば、読者の皆様にも俺の放課後が大体想像出来るのではないだろうか?


そう。双子には俺以外に『友達』と呼べる存在がいない。


つまり2人は毎日、自分の持つ唯一の友人である俺をお互いに取られまいと争っているのである。



実にこれこそ、俺が優雅な【放課後】を過ごすことのできない原因なのだ。

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