第3話、それでも天狗

彼は自分を天狗だと言う。

私はそれを疑ったことはないが、彼が真に天狗であると証明するものは何も無いことも事実である。

「天狗なら空でも飛んで見せろ!」

昔ある男が彼に行った言葉である。その時彼は黙って酒を飲み、歩いて家に帰った。

しかし彼には、この者は天狗に違いないと思わせる何かがある。

その得体の知れなさが彼の全てですらあるのだ。

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