第2話、天狗泣く

ある日、夜の繁華街を通ると人だかりができていた。どうやら酔っ払いの喧嘩のようである。話を聞くと、小柄な方の男がもう一人にいきなりつかみかかったらしい。人と人との間から覗き込むと、小柄な男とは彼のことであった。警官がやってきて二人を引き離す。

私は彼に駆け寄った。「一体どうされたのですか」

彼の言うには、酒を皆で飲み、いい気になって「私は天狗である」と言ったところその男に馬鹿にされた。それで殴った、というのである。

「これほど無念なことはない」彼は泣いた。私もまた泣いた。

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