第36話 暗殺者との試合
一日で終了する日程だったSランク冒険者交流戦は、魔族が忍び込み竜が乱入したということがあって翌日に持ち越された。
そして今日、Sランク冒険者間での実質的な戦闘力1位が決定するわけだ。
現在、2位と9位の戦闘が行われている。
2位はじっくりと9位を追い詰めているが、9位はなかなかしぶといようで、決着はまだつきそうにない。
と思っていたところ、確実に勝利を確信していた2位に9位が不意打ちで魔法を放ち、体制を崩したところを殴ってKO勝ちとなった。
しかし、9位のハゲおじもかなり体力を消耗していたようで、2位が倒れたのを見届けたところで白目を剥いてぶっ倒れた。
先に倒れたのが2位だったので、勝利は9位のおじさんとなった。
ちなみに、9位のハゲおじは2位よりもダメージが大きかったらしく、意識不明の重体らしい……が回復魔法で治るらしい。
そして次は11位と18位の試合だったのだが……
「18位がいない?」
「ええ。なんでも、18位の魔術師が魔族だった可能性があって、昨日のギルセルトさんに化けていた魔族の仲間だったと推測されます」
走ってやって来た大会の運営からそんなことを告げられた。
「そこで、この大会中にまた魔族が出てきたら貴女に捕獲を頼みたいのです」
「……何で?」
他にも強い人はいると思うのだが?
「えーと……1位のあのエルフ様は怖いし、26位の少年は得体が知れないし、頼れるのは貴女しかいないのです!」
たしかに。あのハイエルフのお姉さんは性格がキツそうだし、あの暗殺者っぽい少年は話を聞いてくれそうにない。
「分かりました。私で良ければその依頼、引き受けましょう」
俺がそう言うと、運営の男は満面の笑みを浮かべながら仲間のもとへと戻っていった。
まあ、このまま終わるのも面白くないと思ってたし、いいだろう。
魔族が出てきたときに、どうやって倒そうと考えていると、次の試合が始まったようだ。
次の試合は11位と18位の勝負だったはずなのだが、18位が逃げたことで11位と26位が勝負することとなり、1位はシードということになった。
そして、11位と26位の試合だったのだが……悲惨だった。
またも謎のスキルを使ってノールックで魔法を発動させた26位の攻撃に、11位は一瞬にして敗北した。
そして、俺と9位のハゲおじの試合といきたいところだが、
「9位のハゲ・ルルート選手の回復が遅れているため、順番を入れ替えて30位のセラ・ユウア選手と26位のクロ・ローブ選手の試合を行います」
ハゲおじの回復が遅れているため、あの暗殺者っぽい子と試合をすることになった。
その数分後、早速試合が始まった。
黒ローブの少年と対面し、片手に剣を構える。
「それでは、始め!」
始まった。
目の前の黒ローブの少年を見ると、そこには誰もおらず、次に俺が見たのは見覚えのある瞳だった。
「やっぱり、優くんだ」
あれ、この声、何処かで聞いたことがあるような?
黒いフードから覗く瞳は、ブラックホールのようで、その目を見ていると全てが呑み込まれそうな感じで……
『ユウ!しっかりしなさい!』
わあ、ビックリした!……うるせえ!いきなり大声出して何だよ!
『今、あいつに魅了されかけてたわよ!私とクゥーレにも影響が出るんだからちゃんとしなさい!』
『そうだねー。今頭がポワンってしたー』
魅了されかけてた?あの子に?
辺りを見渡してみるも、少年の姿はない。
一体どこに行った?スキルか?
謎のスキルを使う相手に、俺が戦慄していると、俺の眼前にもう一度黒ローブが現れた。
俺は急いで後ろに避けると、体をスライム化させて地面に張った。
ヤバイヤバイヤバイ。殺気を感じさせないで攻撃してくるから何処から出てくるか分からないし視認すらできない。
しかも無意識のうちにスライム化させちゃったし、どうやって出てくればいいんだ?
俺が思考を巡らせていると、リルでもない、クゥーレでもない声が頭に響いた。
『ねえ、優くん。聞こえてる?』
それは、俺の幼馴染みでクラスメイトの、水河叶の声であった。
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