第24話 魂とステータス

 俺のステータス、ステータスだ!


 いやだって、そりゃあ興奮するさ。悪魔とかモンスターとか倒しまくったからね!あの頃からどれだけ上がってるのかが楽しみだ!


 俺が興奮した様子でいると、ミルは少しひいたように俺から距離をとる。


 仕方ない。男なら己の強さは気になるもの。


 さあ真理よ!どんな方法でステータス鑑定したかは知らんが、聞かせて貰おうじゃないか!


 俺が待ちきれない様子で構えていると、真理は淡々と語りだした。


「優の今のレベルは、54」


「54かあ」

 

 54……おかしいと思う!俺あんなに倒したよ!それで54って低くない!?


 予想よりもかなり低かったレベルに、狼狽えた様子を見せたが、そんな俺を無視しながら話を続ける。


「筋力が7万、魔力12万、俊敏が9万に体力が10万」


 おいおい嘘だろ。ミルとかリークぐらいには強くなってると思ったのに。


 落胆した様子を見せる俺を尻目に、真理が衝撃の事実を告げた。


「これが、魂1つのステータス。優の魂は10個あるから、全部が10倍されて、筋力は70万、魔力は120万、俊敏が90万に体力が100万なってる。ちなみに、合計レベルは540」


「…………」


 はっ!今のは俺の聞き間違いだったか?俺がそんな化物染みたステータスをしているだろうか?


「嘘?」


「本当」


 キター!今度こそ俺TUEEEができる!


「その代わり、魂が壊れそうになってた。自然回復のSが10個あるから耐えてるけど、本来なら自分と全く違う魂、それも強大な精霊の魂なんて入れたらすぐに器が壊れる」


 無表情のまま、淡々と言った。


 怖えよ!そういうことは早く言ってほしい!

 

 だからミルが、俺が死にかけただのなんだの言ってたのか。


「ソウルフエールも使ったらダメ。優はドーピング大好きだからすぐ使う」


 ぐっ、バレたか。俺がバフアイテム中毒ということに。


「魂を、一時的にだけど、2倍にするのは、優にとっては危険」


 たしかに、普通の人なら2までしか増えないけど、俺の場合は10個増えるからな。


 俺が不貞腐れたような顔をすると、ミルが溜め息をつきながら言った。


「大体、どうして強くなりたいのよ。強くなるにしてもアイテムなんて使う必要あるかしら?」


「強くないと死ぬんだよ。この世界は」


 俺がそう言うと、ミルとリークは黙り込んだ。二人もこの世界で生きてきたからには分かるのだろう。


 しかし、俺の中に死など恐れぬバカが1人。


『死ぬときには死ぬしかないのよ!どうせ死ぬなら突撃しなさい!』


 白竜と戦ってるとき、最後の最後で突進してきたと思ったらこいつのせいかよ!おかげで死にかけたじゃねーか!


『死ななかったんだからいいじゃない!この世には生か死しかないのよ!気張りなさい!』


 お前、人に取り込まれたくせに偉そうに言うな!



 俺がまた1人で百面相を始めると、ミルは呆れて頭を抱え、リークはクスクスと笑っている。


 そのとき、ずっと黙っていた猫耳少女が口を開いた。


「ねえねえ、精霊さんと他の魂をくっ付けたって話、どこかで聞いたことなかったかなー?」


 ニコニコといつもの笑みを浮かべながらそう言った。


「だって、リークさんも霊と融合してたし、リルちゃんも竜と融合してた。なんで精霊だけが魂を融合させられてるのかなー?」


 たしかに。思い返してみればリークもリルも精霊だ。しかも同じような被害にあっている。この状況を作った神は何がしたかったんだ?


 でも、その話この子にしたことあったっけ?


 ミルとかリークが教えたんだろう。


 俺はそう納得して思考を巡らせた。


 みんなが呻き声を出しながら頭を抱えていると、俺の頭の中で声が響いた。


『そんなのどうだっていいじゃない!会ったらそのときにぶっ殺せばいいのよ!』  


 そういう問題じゃねえんだよ!なんでそいつは精霊と他の魂をくっ付けてるのかって話だよ!そこに何らかの意図があるはずだろうが!


『む、それはそうかも知れないわね。でも何でそんなことをしてるのかしら?』


 話進まねえなおい!誰かこいつどうにかしてくれよ!


 俺が1人で疲れていると、ミルが思い出したかのように言った。


「そういえば、なんで魂が吸収できたのかしら?優はそんなスキル持ってなかったはずなのに」


 あー、それはねー、なんとなくでやった。


「火竜と融合して俺と戦ってるときのこいつ、魂を削って魔力を作りながら戦ってたんだよ。もしかしたら魔力吸収する魔法で魂吸収できるんじゃない?って思ったから闇属性の初級魔法使ったら、変なの捕まえちゃった」


『変なのとは何よ!こっちだって吸収されたくて吸収されたんじゃないわ!』


 俺たちが脳内でそんな会話を繰り広げると、真理が疑問を抱くようにして言った。


「でも、魂を直接魔力に変換しながら、だったとしても、そうなるのはおかしいと、思う」


 だよねえ。俺もそう思ったもん。そんなうまくいくもんかな?って。


 違うわ。あれだ。リルが魔力源として使われてたんだ。


 精霊と竜の融合体だから、精霊だけど肉体があって、魔力の限界が無いように見えてたけど、力を使えば使うだけ体が薄くなってたからな。多分そのせいだ。


 これで謎が1つ解けたね!


 1人満足する俺を見て、無表情で首をかしげていた真理が言った。


「《白炎》ってスキルがあったけど、これって新しいスキル?」


 白炎って、あの白竜とリルの融合体が使ってたスキルか。


 ……え?白炎ってあの白炎?


『そのスキル!私が火竜と融合したときに増えてたやつじゃない!そんなに良いものじゃないけど……』


 なんで?めっちゃ強かったじゃん。正直死にかけたし。


『たしかに強いけど、デメリットが多すぎるわ。その炎は、自身と自身が認めた者の肉体を修復させるけど、自分の魂を削って使われるのよ。だから、効果中は死ぬことはなくても、最後には魂ごと消滅するわ』


 デメリットがデカすぎるわ!そんなん誰も使いたがらねえよ!


 そう思ったところで、俺は一度考えた。


 このスキル、俺だったら使いこなせるんじゃないか?と。


 だって俺、魂回復できるもん。リル1人で数時間耐えられるなら、俺なら一生大丈夫だと思う。


『はっ!……あんた天才ね!あんたなら自分の魂を自動修復できるじゃない!』


 もしかして俺、最強になった?


 俺たちがそんな会話を続けていると、伸びをしながらミルが立ち上がった。


「今日はもう遅いわ。明日からは、私たちもあのダンジョンを攻略するんだから、しっかり休みましょう。特にユウ、私たちに責任があるとはいえ無茶のしすぎよ。たまにはゆっくりしなさい」


 そう言ってリビングを出た。


 真理やリークもそれにつれて椅子から立った。


 俺は最後にリビングから出て電気を消すと、自分の部屋に向かい、リルと口喧嘩をしながら眠りに就いた。

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