第23話 緊急会議!
後頭部に柔らかい感触。夢に見た美少女の膝枕、いったい誰がしているのだろうか。
ゆっくりと目を開くと、珍しくニコニコとした笑みを浮かべたミルの顔があった。
俺が目を開いたことに気づいたミルは、顔を赤くしながらアワアワと忙しない様子で慌てている。
「ミル、おはよう」
俺が笑顔でそう言うと、途端に泣き出しそうな表情をして言った。
「馬鹿!どうしてそんなに無茶ばかりするの!《支配》で私を呼べばよかったじゃない!」
たしかに。支配使えばミル呼び出せるんだった。すっかり忘れてたわ。
呑気な様子の俺に、ミルは怒髪天をつくように言った。
「どうしてそんなに平然としていられるのよ!あと一歩のところで死ぬかもしれなかったのよ!」
そうだったんだ。でも生きてるから良かった。
安心したようにホッとする俺を見て、ミルは呆れたように呟いた。
「本当に、どうしてこんなやつを……」
顔を赤くしながら何かを呟いたようだが、声が小さくてあまり聞こえなかった。
しばらく無言の状態でいたが、俺に膝枕をしていることを今更ながらに意識したミルが、ポッと顔を赤くして言った。
「め、目が覚めたのなら起きなさいよ。いつまでその状態でいるつもりよ!」
俺に顔を見られないようにして言ったミルだが、耳が真っ赤になっているため、恥ずかしがっているのが隠せていない。
このままの状態でいると、俺も恥ずかしくなってしまうので起き上がると、ミルが名残惜しそうな表情をした。
起き上がった俺が辺りを見回すと、異空間にある個人用の部屋だった。
部屋の作りは同じだが、部屋に置いてあるものが全く違う。すべてミルの私物だろう。
俺がキョロキョロと、忙しなく部屋の家具を見ていると、ミルはジト目で俺を見ながら言った。
「人の部屋の物はあまりジロジロと見るものじゃないわ。それに、あなたを心配して待ってる人たちがいるんだから、早く行きましょう」
そう言って扉を開けたミルの後を着いていく。
リビングに入ると、俺を見たリークはホッとしたような表情をして、真理は無表情。猫耳少女はニッコリと笑っていた。
みんなが俺を見つめる中、ずっと気になっていたことを話した。
「そういえば、光の精霊知らない?」
俺がぶっ倒れる直前に闇魔法で魂ごと吸収した精霊がいるのだが、さっきから声が聞こえない。
そう思っていたら、やけに耳に残るような、聞き覚えのある声が聞こえた。
『ずっといたわよ。あんたが眠ってる間もね』
うわ、びっくりした!急に聞こえてくるんだもん。
『びっくりしたのはこっちの台詞よ!なんであの悪魔と女王様がいるのよ!ついでに人間モドキのホムンクルスと気味の悪いガキに壊れかけの魂すら自動修復させる人間。いったいどうなってるのよ!』
うわー、うるせー。めっちゃ頭痛え。
ミルと真理は、1人で百面相をする俺を見て不思議そうに首をかしげており、猫耳少女はいつもの様子でニコニコと笑っている。
しかし、1人考えるようにして真剣な表情をしていたリークは、改めて俺の方を見ると尋ねるようにして言った。
「もしかして、その精霊の名前ってリルですかね?」
え、精霊の名前なんて聞いてないけど?
『流石女王様!私のこと覚えててくれたのね!』
「あ、その反応。やっぱりリルですね」
リル?そうなの?
『そう!私の名前はリル!これからはリル様と御呼びなさい!』
ふんっ、偉そうな。火竜と融合したのに俺に勝てなかったくせに。
『は?だってあのとき火竜が支配権持ってたのよ!私本来の力なら勝ってたわ!』
どうだかね。むしろ、火竜だけの方が強かったりして?
『…………』
どうした?もしかして、本当にそうなの?
俺がリルを問い詰めていると、リークが嬉しそうにして言った。
「ふふっ、二人とも、もう仲が良くなったようですね。私も嬉しいです」
リークがそう言うと、リルは騒ぐようにして言った。
『これのどこが仲良しなのよ!女王様でもその間違いは許さないわ!』
「めっちゃうるさいんだけど?」
俺がそう言っても、リークはふふふと機嫌が良さそうに笑うだけだ。何がそんなに嬉しいんだ?
話を戻すようにしてミルが咳払いをすると、みんなの注目がミルに向いた。
「リルの馬鹿は放っておいて、とりあえずユウに説明してもらいましょう」
今度は俺の方にみんなが向いた。まあ、言いたいことがあるからいいだろう。
「真理」
「なに?」
俺は真理を睨み付けながら名前を呼ぶが、気にした様子はない。いや分かってたけど。
「なんであんなことしたの?」
「ああしないと、そのうち、ユウが死ぬから」
……え?それってどういう?
疑問を抱く俺に、真理の後を説明するようにミルが口を開いた。
「マリが未来予知で知ったのよ。今のレベルが低い状態じゃユウが死ぬって。だから白竜が出てくるところまでは1人で戦わせてたんだけど、白竜とも1人で戦っちゃうから」
最初は説明をしていたが、最後の方はいじけるようにして言った。
でも忘れてたんだもん!仕方ないじゃん!
てか、真理、スキル持ちすぎじゃね?オリジナルの三島がすごいのか?
そう思いながら真理を見ると、真理は無表情のまま言った。
「もう優が死ぬことはないから、大丈夫。それと、ステータス、見る?」
俺は予知云々の話よりも、ステータスという言葉に反応した。
だってステータスだよ?俺の今のステータスだよ?気にならないはずがないじゃん。
ウズウズと気になっている様子を見せる俺に、真理はフフンと鼻息を荒くすると、少しドヤ顔をして言った。
「優のステータス、用意してる。今から見る?」
「見る見るー!」
ステータスという言葉に惑わされた俺は、自分が死ぬとか未来予知とか、そんな話はすっかり忘れていた。
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