第4話 裏切り
「今日はここでレベルを上げてもらう」
と、団長について来たここは王都から数十キロ離れたところにある森、スライムの森というらしい。その名の通り大量のスライムが湧く森だ。
「危険度は低いが気を付けろよ。金スライムは魔法で倒さないと勝てないからな。それぞれソロでもいいしパーティーでもいい。それでは始め!」
パーティー?そんなの効率がいいのはネトゲだけだ。ガチ異世界ならソロしかねえだろ!
というわけで、ただのシャツとズボンに魔法剣(脇差し)というおかしな服装で1人駆け出す。
む、銀色のスライム発見。試しに魔法を一発。
「発射」
火、水、風、土の球体はそれぞれ銀スライムに着弾した。
「ビョウェェエ!」
そして、気持ちの悪い断末魔を上げながら動かなくなった。ただの液体が動かなくなっただけだしあんまり罪悪感とかは無いな。
今度は赤、青を発見。打て打てー!
今度は緑、金もいる!打てー!
あ、金二体。打て打てー!
そうして、周りに色んな色の液体が飛び散り、殺人現場のような惨状のなか、俺はステータスを確認していた。
「おお、レベル6か。金スラ3体はでかかったな」
レベルが5も上がっている。ステータスも、魔力は600越えたし、その他のステータスも90を越えた。バフありなら150は越えるな。
やっぱソロは最高。パーティーとか無いわ。
そうして、ホクホク顔で1人歩いているときのことだった。
「あ、優くん!助けて~!」
と俺の名を叫んで声は叶だ。振り向いてそっちを見ると、
「何でスライムに追っかけられてるの?」
叶がスライムに追っかけられていた。
「だ、だって倒したくないし怖いんだもん」
か、可愛い!不覚にも可愛いと思ってしまった。俺のストライクゾーンは小4から小5までの見た目の女の子なのに!
「はあ、分かった」
そして、近くまで来ていたスライムに魔法を放つと、ビシャリと派手に飛び散りながら死んでいった。
「あ、ありがとう」
「どういたしまして。でも、何で1人?パーティーの子たちは?」
「怖くて置いていっちゃった」
そうですか。そうですかあ。まあ、たしかにね怖いのは分かるよ?でも走って置いていくかあ。
「じゃあ、グループのところまで連れていくよ」
「あ、ありがとう」
そして、叶をパーティーの子たちの元へ連れて帰ると俺はもと来た道に戻りスライムを狩り始める。
赤、青、黄色、緑、透明、金とどんどん狩っていき、レベルを見ると7まで上がっていた。
もうここまでか。経験値がまったく貯まらない。適正レベル過ぎた。
そうして、団長のもとに戻ろうとしたときだった。
「あ、お前確か荒瀬だったよな」
クラスメイトの4人の男子パーティーが話しかけてきた。めんどくせえ。
「ああ、そうだけど。どうした?」
「いや、悪気はないけどレベルを見たんだ。君強いね。よければレベリング、手伝ってくれないかな?」
言わんこっちゃない。こうなることが分かってたから人がいないとこで狩ってたのに。
「分かった。ついていく」
「そうかい。ありがとう」
そうして、四人組の後をついていく。
すぐにスライムが現れた。こいつらは物理3人と遠隔1人。剣、剣、ナイフ、弓だ。
バランスはとれてない気がする。上手く戦えてもない。奪い合いって感じだ。
いやソロでしろよ!とツッコミたくなるがそこは我慢する。
数時間ほどこいつらと無駄な時間を過ごし、そろそろ日が暮れる頃、4人は急に俺の方を向いた。
「どうした?」
「いや」
リーダー格の男子生徒はそう言うと急に俺に襲いかかってきた。
もちろん避けるが。
「へえ、近距離戦もできるのか。中々やるね」
何が、中々やるね、だよ。ふざけやがって。
「……どういうつもりだ?」
「仕方ないだろ」
「は?」
「お前を殺さないと僕が殺されるんだよ!」
そう言って彼らは襲いかかってきた。一体何なんだ?
とりあえずみんなのところに戻ろう。
「あ、待て!待つんだあ!」
彼らは追いかけてくるが俺には追い付かない。
しばらく走って木の影に隠れているときのこと、
「はあはあ、やっと見つけた」
誰か来た。さっきの奴らじゃない。こいつも脅されてるのか?分からん。
「お前は誰だ」
「僕は一応味方だよ」
一応、か。脅されてる様子はないが、一体何なんだ。
「君は今、命を狙われている」
「は?」
一瞬、思考がフリーズした。は?なんで?仮にそうだとしてなんで命を狙われてるの?
「君が《支配》のスキルを持っているからだ」
「ちょっと待て。唐突すぎないか?しかも、何でそのスキルを持っていると殺されるんだ?」
「昔の召喚者がそのスキルでこの国を壊滅させたことがあるかららしい」
へー。昔のことなんてすげーどーでもいー。
「だから《支配》のスキルを持っている召喚者は殺されるんだ」
「そりゃまた物騒だな。で、それを知ってるお前はなんでお前が俺の味方をする?王国を裏切ることになるんじゃないか?」
「……だ」
え、今なんて言った?
「は?」
「途中までしかネトゲができてないんだ!」
すんごいしょうもない理由でした。しかし、
「なんでお前がこの国の昔のことを知ってるんだ?」
「それはね僕の職業が《預言者》で、これから起こることをある程度分かっているからだよ」
預言者か。胡散臭いな。でも、今はこいつぐらいしか信じられない。
「興味深いな。それなら、俺はこれからどうすればいいか分かるか?」
そんなことまで分かるわけ……
「ここから右に真っ直ぐ走っていってくれ。そして、そこで君は力を手に入れる……だそうだ」
分かるんかい。
「曖昧だな。まあ、信じてもいい。どうせ誰も信じられないんだから」
「ありがとう。そこで上手くいけば日本に帰れる」
今、さらっと重要なこと言ったな。
「だったら早く行かないとな」
そして、急いで進もうとしたときだった。
「ちょっと待って!これとこれを」
彼がそう言って差し出してきたのは、水晶と小さな玉だった。
「水晶は念話ができる。そしてそれは煙玉。煙玉を渡すことによって道が開けるらしい」
「本当に曖昧だな。まあ信じてみるよ」
「ありがとう。君の命と僕のネトゲのため、互いに頑張ろう」
そうして俺は、名前も知らぬクラスメイトの助けによりこの場を逃げたしたのだった。
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