第3話 スキル

 異世界に召喚されてから、ちょうど一週間経ったときのことだった。


 今日も相変わらず魔法の練習。これでも十分楽しいのだが、何か物足りないような気がした。


 なんか忘れてるような?と思っていると、唐突に思い出した。


「スキルだ」


 そう。スキルだよ。ずっと忘れてた。


 何もないところに手を置きステータスカードを想像する。すると、半透明のプレートが現れた。


「せっかく《術式展開速度》だの《魔法使用効率化》とかいうスキルがあるのに使わないなんて損だよな」


 それぞれのスキルを二回タップすると、スキルの説明が開かれた。


 《術式展開速度》は簡単に言うと魔法の使用速度がめっちゃ早くなるスキル。《魔法使用効率化》は、魔法を無意識領域の中で最適化させて、設定通りに発動させるスキルだ。


 まずは《術式展開速度》を使用する。すると、体内に流れている魔力の動きが活発になった気がする。


 《魔法使用効率化》は設定が必要みたいだ。設定欄が出てきたので見てみると、残り3と書かれている。これはおそらくセットできる魔法の数だ。


 とりあえず氷、土、風をセットする。そしてセットされた設定を発動させると、同時に3つの魔法が放たれた。それはもちろん氷と土と風だ。


「おお!両手で2つまでしか同時発動できなかったのに、3つも発動できた!」


 すげえ、これにユニークスキルの《演算処理》を使ったらどうなるんだ?


 とりあえず、タップして発動。


 ……あんまり変わらない?いや、どこがどう変わったかは分からないが何かが明確に変わった気がする。


 そしてもう一度術式展開効率化を見ると、残り0だったのが5になっている。さっきのセットを解除して、全て氷の初級魔法にセットする。


 これでいくと氷の矢が8本発車されるはず。


「発射」


 と口に出した瞬間に、目にも止まらぬスピードで氷の矢が放たれた。それも8本、メチャクチャ強くない?


「これは……ヤバイな」


 残りのスキルは《自然回復》《同調》《隠密》《身体強化》《動体視力》《反射神経》。そしてユニークスキルの《支配》と《鑑定》だ。


 自然回復は何も消費せずとも常に発動し続けるパッシブスキルだ。これがメチャクチャ強くて、体力も魔力も超回復するから、Lv1のくせに魔法を連発しても魔力不足にはならない。


 ちなみに《自然回復:S》は1秒間で体力、魔力ともに1000ずつ回復するらしい。そりゃあ連続で何回魔法使ってもなくならないわけだ。最大魔力量めっちゃ越えてるんだから。


 そして《同調》。これは、使い魔や眷属のステータス、スキルを互いに使えるようにするらしい。が、俺には使い魔もいないし眷属もいない。使う機会があるとするなら《支配》を使ったあとかな。


 《鑑定》はその名の通り、視界に写ったものを調べることができるスキル。一回発動ごとに魔力を100使うらしいが、俺には魔力なんて関係ない。


 残るスキルは《隠密》《身体強化》《動体視力》《反射神経》。いずれもランクEの状態で、効果はまあまあといったところだが、その分反動もかなり小さい。


 《身体強化》《動体視力》《反射神経》は、その部位を消耗し体力を使う。《隠密》は魔力を使うらしい。しかし、《自然回復:S》を持っている俺は、これらのバフスキルがSでも疲れた瞬間から回復し、魔力も全回復するのでデメリットはまったく無い。


 これらのことを総合して俺が思ったことは……

 

 俺強くね?


 どんな場面でも的確に魔法が打ち続けられて、Eランクのバフ系スキルで、ある程度の近距離戦もできる。オマケに体力と魔力は無尽蔵。


 唯一の欠点は火力不足だが、初級魔法の同時発射をすれば、上級魔法の一歩手前ぐらいの火力が出せる。


 俺TUEEE!ってやつか。まさかこんな俺にも春が来るなんて。


 そうして、俺が上機嫌に訓練場を歩いているときのことだった。


「勇者たちよ!今日はモンスターの討伐をしてレベルを上げてもらう!敵は3から6ぐらいのレベルだが、お前たちのステータスなら余裕に勝てる。油断は禁物だぞ!それでは出発!」


 本当に、段取りとか知らない?油断すんなって言うのなら武器とか配るだろ。


「き、騎士団長~!武器!武器を渡してません

よ!」


 下っ端兵士くん、ナイス。


「おっと、そうだったな。はっはっはっ!それでは、この中から好きな武器を選べ!」


 団長さん、しっかりしてくださいよ。武器無しだったら物理職は殴ることしかできないじゃん。


 そして、俺の番に回ってきたところで、残っている武器を見回した。


 杖もいいけどなあ、刀とかもいいよね。弓?それは論外。やっぱ剣とか?魔法剣とかあるかなあ。


「団長、魔法剣とかありますか?」


「おお、器用貧乏か。四属性使用可能な脇差しかがあるぞ」


 呼び方がひでえよ。そういうのは心の中でだけ思ってないと。 


 脇差し、この世界にもあるんだな。それにしても四属性の脇差しか。いいね。


「それください」


「あいよ」


 と、渡されたのは刃渡り60センチほどの黒塗りの鞘に収められた脇差しだった。鞘から出してみると、艶やかな黒色が怪しく光る刀身だった。カッコいい。


 鎧は……なくていいかな。


「決まったか。よし!それじゃあみんな出発だ!」


 そうして初のモンスター狩りへ行くこととなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る