第2話 ステータスと魔法

 異世界に召喚されて次の日、騎士団長に連れてこられたのは騎士団の演習場だった。


「君たち勇者とその仲間たちには、エリク様から選ばれるだけのステータスとスキルがあるはずだ。そこで、だ」


 と、騎士団長が手に持っていた袋から取り出されたのは、銀色のカードだった。


「これはステータスカードというらしい。エリク様が君たち用に作ったものだ。それを体に触れさせるとステータスが分かるようになるらしい」


 ステータスカードか。色んな呼び方あるけどこの世界ではそう呼ばれるらしい。


「試しに、そこの君。ちょっと来てくれ」


 呼び出されたのは平凡な見た目をした男子。いかにもモブっぽい。俺が言えることでもないが。


「あ、俺っすか?任せてください!」


 と選ばれた男子生徒がウキウキした様子でステータスカードを受け取ると


「う、うおお!消えた!」


 手に掴んだ瞬間、体に染み渡るようにしてカードが消えていった。そして次には、彼の真ん前に日本語で文字が書かれた、半透明のプレートが現れた。


「ほう、こうなっているのか」


 と、騎士団長がそのプレートを一瞥する。遠目に俺も見てみたところ、魔法適正やらスキルやら色々と書かれていた。


「それでは、1人ずつ受け取りにこい。ステータス、スキルは報告するように」


 というわけで、俺も受け取り手に持つと、カードは一瞬にして消え去り、次に前を見ると、半透明なプレートにはこう書かれていた。


 荒瀬 優 Lv1 職業:魔術師


 ステータス 筋力:11 魔力:180 


       俊敏:12 体力:15


 魔法適正 火:1200 水:2300 


      風:1800 土:1200


      光:1500 闇:1800


 スキル:《術式展開速度:S》《魔法使用効率化:S》《自然回復:S》《同調:S》《隠密:E》《身体強化:E》《動体視力:E》《反射神経:E》


 ユニークスキル:《支配》《演算処理》《鑑定》


 結構下まであるなーって、思ってたらスキルが多かった。ユニークスキルなんてものもある。


「このステータスは!君が勇者か!」


 え、勇者?どこどこ!


 と辺りを見回すと、1人の男子生徒にクラスメイトたちが群がっている。


 背伸びして見てみると、叶以外の、俺の唯一の見知った顔があった。


 嫌そうな顔をしながらステータスを表示させている男子生徒の名は閃光刃せんこうじん


 俺と趣味が合い、よく異世界モノのラノベの話をしていたオタク仲間。鮮やかな茶髪で高身長のイケメン。クラスの人気者だが、自分の厨二病っぽい名前をコンプレックスに思っているらしい。


 表示されているステータスは見えないが、相当強いのは間違いないだろう。なにせ、勇者なのだから。


「君で最後だ」


 スキルについてあれこれ考えていると、騎士団長が話しかけてきた。そういえばステータス報告しないとだな。


「ほう、SランクスキルとEランクがそれぞれ4つ。ユニークスキルなんて3つもあるじゃないか。スキルはどれも汎用性が高いな。ステータスは……器用貧乏といったところか」


 やっぱりスキルは多いほうなのか。ステータスが器用貧乏なのは悲しいが。


「うむ、どこででも活躍できる万能タイプだな。ユニークスキルは他に比べて見劣りするが、支配も強いやつに使えれば強力な戦力になるからな」


 ユニークスキル《支配》は、人以外を対象とし、どんなものであろうと完全に支配し掌握するスキルだ。


 しかし、効果は1回らしいので考えて使う必要がある。それほどに強力なスキルというわけだ。


「よし!それでは、それぞれ物理系と魔法系に別れて訓練をする!ビシバシ鍛えるから覚悟しろ!閃光は俺と訓練だ!」


 と団長の掛け声でみんな動き出す。俺の職業は魔術師だったから魔法系についていく。


 

 しばらく歩いていくと、綺麗なローブを着た30代ぐらいのイケオジが待っていた。いかにも魔術師っぽい人だ。


「こんにちは。勇者の仲間たちよ。私は宮廷魔法使団団長のロール・クレイムという。早速だが魔法についての説明をさせて貰おう」


 そして、唐突に始まった魔法の授業を聞くこととなった。


 魔法を使うためには魔力が必要であり、魔力には体内魔力オド体外魔力マナの2種類があり、ステータスに表示される魔力はオドのことを指し、通常の魔法を使用する際に使われる。 

 マナは魔力の自然回復を助けたり、精霊魔術を行使する際に使用されるそうだ。


 魔法の使用方法は4種類あり、1つは詠唱によるもの。2つ目は魔法陣によるもの。3つ目は精霊によるもの。そして最後に無詠唱。

  

 精霊魔術は魔法とは別のカテゴリーに分類され、魔術師とは主に、詠唱、魔法陣、無詠唱で魔法を発動する人のことを呼ぶ。精霊魔術を使うのは精霊術師といって、魔術師とはまた別の職業らしい。


 次に説明されるのは魔法適正について。魔法適正が高ければ高いほど魔法の威力や使用速度が上がる。


 一般人の平均的な魔法適正は全属性大体100。初級魔術は100以上から使用できる。


 中級は500、上級は1000、最上級は5000で使用可能らしい。


 無詠唱でそれらを発動するにはその魔法適正の10倍必要だ。なので初級は1000、中級は5000、上級は10000、最上級は50000以上の魔法適正なら無詠唱で発動可能だ。


 俺は魔法適正が全属性1000を越えていたので、初級魔法は無詠唱で発動できるが、中級魔法からは無詠唱で発動できない。


 ほとんどの魔法系職業のクラスメイトは1つの魔法適正が10000をギリ越えているぐらいらしい。なので、1つの属性の上級魔法を無詠唱で放てる。その代わり、他の属性は200とか300ぐらいだとか。


 俺は無詠唱じゃなかったら上級魔法までは使える。しかし、詠唱を覚えるのは嫌なので、できるだけ初級魔法だけでいけたらいいなと思う。


 でも、上級魔法を無詠唱って格好いいよな。いつかはできるようになりたい。


 と、ここまでの説明をして実践することとなった。


「それでは、あそこの的に向かって誰か無詠唱で魔法を発動してください」


 いや、無茶振りだろ。説明もしないでいきなりこれしてくださいって、どこのスパルタ教師だよ。


「んじゃ、俺行きま~す」


 と、手を上げながらヘラヘラして歩いてきたのは、DQNっぽい金髪。なんかイライラするな。


「いいだろう。それでは始め!」


 金髪DQNは目を瞑って手を前に出している。

DQNから厨二病に進化した。


 しばらくすると、唐突に空気が震えた、気がした。


 轟音が聞こえたのでその方向を見ると、鉄製らしき的がバラバラに崩れていた。

 

「うお、すっげえ!ホントにできた!」


 DQNは1人ジャンプしながら喜んでいる。さっきの魔法は土の上級魔法っぽいな。なかなかの威力だ。


 しばらく騒いでいたDQNだが、急に静かになったと思うと、辛そうな顔で呻きながらぶっ倒れた。おそらくこれは……


「魔力欠乏症だな」

  

 団長さんが言った。やっぱりな。


「レベル1のくせに最初から上級魔法なんて使うからだ、まったく」


 と文句を垂れながらDQNを肩に担ぐと、俺らの方を見て言った。


「こいつと同じように試してみろ。頭の中で強くイメージするんだ。具体的な大きさ、距離、魔力を考えると上手くいくはずだ。上級魔法は使うなよ。これみたいになりたくないなら」


 人を『これ』扱いしてはいけません。


 それはさておき、


 めっちゃテンション上がるな!今すぐ試してみよう!


 的から25メートル離れた位置、使うのは一番適正が高かった水にしよう。


 使用方法はもちろん無詠唱。


 水、流れる水?いや、鉄すら切り裂くような高圧力で吹き出す水。それを想像しながら一瞬だけ力を込めると、手に何かが流れるような感覚がした。


 次の瞬間には、物凄い速度で射出される水球が見えた。その水球は寸分違わず的に命中している。


「……おお、すげえ」


 思いっきり大声でこの感動を叫びたいところだが、クラスのみんながいる。キモいやつだとは思われたくない。



 その後、氷や火、風など、全ての属性で初級魔術を使用することができ、夢中になって魔法を撃ち続けていると今日の訓練は終了となった。

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