異世界に召喚されたら命を狙われていたので、自由に冒険しようと思います
緋紅色
一章 太古のダンジョン
第1話 異世界召喚
今は4時間目、教科は地理。
授業中、隠れながら異世界モノのラノベを読んでいるときのことだった。
教室の床に、大きな魔法陣が出現すると、眩い光を発した。その光はどんどん大きくなっていく。
あまりの眩しさに目を瞑る。目を開くと、さっきまで授業をしていた教室ではない、別の場所にいた。
辺りを見回すと、豪華な装飾が施された広間に、その内装に似合わない薄汚いローブを着た連中が倒れている。
俺のすぐ近くにはクラスのみんながいる。これはクラス召喚ってやつか。
クラスメイトのほとんどはこの状況を理解していないみたいだ。一部の人たちはニヤニヤしながら、今にも飛び跳ねそうな様子で体を震わせているが。
ついに俺も異世界に召喚されたか。死ぬ気しかしねえ。
「おお、勇者たちよ。よく来てくれた」
目の前の豪華な椅子にでかでかと座っていた、王冠を着けた骸骨のように真っ白な老人が話しかけてきた。こいつが王様か。
お前らが勝手に召喚したんだろと文句を言いたいところだが、ここは少し黙っておく。
クラスメイトたちも、みんな黙って状況を確認しようとしている。
「そなたたちを召喚したのは、この世界を魔王から救ってもらいたいからじゃ」
クラスメイトは未だ1人も動かない。そろそろ誰か動かないと始まらないんだけど。
「あれ、おかしいのう?ここで誰かが突っかかってくるはずじゃが。この反応はマニュアルに載ってないぞ」
おい、なんでマニュアルあるんだよ。
「ごほん!……それでは、聖マリク様の命により召喚された異世界の勇者たちよ!魔王の討伐を頼んだぞ!」
シーン、と白けた空気が流れる。クラスメイトたちは白けた目で王様を見ている。
「そ、それでは騎士団長!後は頼んだぞ!」
と、王様が視線を向けたのは40代前半らしき真っ白な鎧を着ているおっさん。騎士団長らしい。
「え、私ですか?……分かりました!それでは勇者たちよ、我についてこい!」
上司に雑用投げつけられたみたいだな。可哀想に。
騎士団長のおっさんの後をついていく。クラスメイトたちは小さな声で話をしている。
今更だけどこの世界の人たち、日本語喋ってるよな。スキル?
「勇者たちよ、今日はもう遅い。説明は明日になってからするので、王宮内の客室で休んでいてくれ。寝る場所は今から用意させる」
唐突に訓練とかはさせないんだな。ステータスとかスキルはまだないし、そういう儀式はないのかな?
そして、大きな客室に連れてこられた俺たちは各々がソファーやベッドに転がってグループごとに喋っている。楽しそうだな、明日には死ぬかもしれないのに。
はしゃいでいるクラスメイトを眺めながらあれこれ考えているときのことだった。
「優くん」
とボッチの俺の名を呼んだのは、幼馴染みでクラスメイトの
一体なんでしょう?
「どうした?」
と言うと、途端に泣き出しそうな表情をして口を開いた。
「し、知らない場所に来たんだよ?優くんの読んでるような本に出てくる異世界に。いつ死ぬかも分からないし、怖いよお」
と、俺に抱き付きながら言った。
たしかに知らない場所だし、異世界だから唐突に死ぬかもしれないけども。
「神様に選ばれたんだからそれなりの力を持ってるってことじゃない?それに、叶がピンチになったら俺が助けるから大丈夫」
と、俺みたいなモブが言ってもあんまり響かなそうなことを言ったのだが……
「うん!優くんがピンチなときは私が助けるからね!」
と満面の笑みで返した。うわあ、光が!眩しすぎる!
「ありがとう。互いに頑張ろうね」
「うん!」
そして叶は自分のグループに戻っていった。
その後、客室に来た数人のメイドたちによって部屋を紹介してもらい、各々が選んだ部屋で就寝することとなった。
明日から楽しみだな。スキルとかステータスとかどうなってるかな。
明日からの異世界ライフに想いを馳せながら眠りに就いた。
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