第2話 銀河鉄道のデート
最初はぎこちなかったんだけど、たった15分とはいえ、毎日会っているうちに(これってクラス公認のデートだったりして?(笑))自然に話すようになってね。
そうしたら、なんと、ふたりとも宮沢賢治先生の大ファンだって分かったんだよ。
『やまなし』『よだかの星』『風の又三郎』など、好きな作品も一緒だったしね。
🍐🦅
なかでも『銀河鉄道の夜』のことは、いくら話しても話したりないほどだったよ。
秋月さんはカンパネルラ、ぼくはジョバンニになったつもりで、夢中で話すんだ。
そのうちに好きな場面を暗記しておいて、ふたりだけの朗読会を開いたりもした。
たとえば、つぎのような感じ(賢治先生、勝手にスイマセン)。ヾ(@⌒ー⌒@)ノ
📖🌟
――その小さなきれいな汽車は、空のすすきの風にひるがえる中を、天の川の水や三角点の青じろい微光の中をどこまでもどこまでもと走って行くのでした。「ああ、りんどうの花が咲いている。もうすっかり秋だねえ」とカンパネルラが窓の外を指さして言いました。線路のへりになったみじかい芝草のなかに、月長石ででも刻まれたような、すばらしい紫のりんどうの花が咲いていました。🚃🟣
「なんて美しい文章なんだろうね。月長石製のりんどうの花が目に見えるようだよ」
「うん、ほんとうね。あたしもまずこの一節に惹きこまれてファンになったんだよ」
*
――窓の外の、まるで花火でいっぱいのようなあまの川のまんなかに、黒い大きな建物が四棟ばかり立って、そのひとつの平屋根の上に、眼もさめるような
「サファイアやトパーズを知らなくても、きっとあんな感じと想像できそうだよね」
「ぼく、まだ宝石を見たことがないんだけど、どんなに美しいかはっきり分かるよ」
*
――ぼく、おねえちゃんのとこへ行くんだよう。お父さんやきくよねえさんはまだいろいろなお仕事があるのです。けれどももうすぐあとからいらっしゃいます。それよりもおっかさんはどんなに永く待っていらっしゃったでしょう。わたしの大事なタダシはいまどんな歌をうたっているだろう。雪の降る朝にみんなと手をつないでぐるぐるにわとこのやぶをまわってあそんでいるだろうかと考えたり、ほんとうに待って心配していらっしゃるんですから早く行っておっかさんにお目にかかりましょうね。
「打ち明けるとね、ここ、いつも泣けてくるんだ。とくに『大事なタダシ』のとこ」
「なにも知らないぼうやの前に、このあと、悲しい出来事が待っているんだものね」
*
――川下の向う岸に青く茂った大きな林が見え、その枝には、熟してまっ赤に光る円い実がいっぱい、その林のまんなかに、高い高い三角標が立って、森のなかからはオーケストラベルやシロフォンにまじって何ともいえずきれいな音色がとけるように浸みるように、風につれて流れてくるのでした。🔴🔼
「色と音のインパクトがすごいよね。赤い実と三角標と交響楽に圧倒されそうだよ」
「なんとも言えない、さびしさとかなしさが、どっとばかりに押し寄せて来るよね」
*
――そして、車のなかはしいんとなりました。ジョバンニはもう頭を引っこめたかったのですけれども、明るいところへ顔を出すのがつらかったのでだまってこらえてそのまま立って口笛を吹いていました。どうしてぼくはこんなにかなしいのだろう。ぼくはもっと心持ちをきれいに持たなければいけない。(´;ω;`)ウゥゥ🐧🪢🎠🎢
「つらい場面だね。照明で明るい車内に泣いている顔をさらしたくなかったんだね」
「だけどさ『かなしいと心持ちがきれいじゃない』って、どういうことなのかな?」
*
――「カンパネルラ、またぼくたち二人きりになったねえ。どこまでもどこまでも一緒に行こう。ぼくはもうあのさそりのように、ほんとうにみんなの
「なんて立派なんだろう。ぼくも、きみ……いや、みんなのためなら何でもするよ」
「カンパネルラは、ジョバンニに辛く当たった友だちにもやさしかったんだものね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます