となりのクラスの秋月さん 🍧

上月くるを

第1話 相棒は秋月さんだ




 えへへへ、これ、だれにもひみつなんだけどね。

 いま、ぼく、学校がすっごく楽しいんだよね~。


 とくに楽しみなのはもちろん給食……じゃなくて2時間目。

 っていうか、せいかくには、その後の15分休みだよ~ん。


 なぜって、となりのクラスの秋月あきづきさんと生き物係の活動を一緒にできるからさ。

 クラスでは「めんどくせー」って顔してみせてるけど、ほんとはドキドキなんだ。




      🌌🌟




 6年生のぼくの組はジョバンニ組。

 となりのクラスはカンパネルラ組。


 え、変わってる? やたらに長ったらしいし、カタカナだし、言いにくい名前?

 そう? うちの学校、むかしからこうだし、慣れちゃえばどうということないよ。


 いわれは分かるよね。 

 そう、宮沢賢治由来。


 もちろん、『銀河鉄道999』じゃなくて、本家本元の『銀河鉄道の夜』のほうさ。

 日本に小学校多しといえど、こんなユニークなクラス名ってほかにないだろうね。


 ぼくのじいちゃんと同い年の、当時の校長先生が、どうしてもと付けたんだって。

 反対? べつになかったんじゃないの? この地域は先取的風土? それだから。




      🐰🐇




 15分休みの話にもどると、秋月マコさんとぼくとでウサギの世話をしているの。

 高学年になると、1クラス1名、学年で2名の生き物係が割り当てられるんだよ。


 新学年の学級会で選ばれたときは、はぁっ、なんでぼくなの?! って思ったよ。

 だって、生き物の世話は365日で、夏休みも冬休みも土曜日曜もないじゃない?


 ぼくがモジモジやだからそんな役目を押しつけて、みんなイジワルだなあってさ。

 けど、ウサギ小屋に行ってみてびっくり! 秋月マコさんだったんだぜ、相棒が。




      🌼💅




 派手なアイドル志望っぽい女子が多いなかで、秋月さんは地味で全然目立たない。

 でも、ぼくの第六感っていうの? そのアンテナをビビッと動かすタイプなんだ。


「うちのクラス、だれも手を上げなかったけど、わたし、動物の世話が大好きなの」

「へえ、そうなんだ……。ぐ、ぐうぜんだね。ぼくもやりたかったんだ、ウサギ係」


 そんなふうにごまかしながら、内心では、ジョバンニ組に感謝しまくりだったよ。

 むろんそんなすがたを見られないよう、念入りにフクレッツラしておいたけどね。


 秋月さんは根っからの動物好きらしく、ウサギたちをそりゃあやさしく扱うんだ。

 ウサギも秋月さんになついて、ぼくの胸キュン度はさらにアップってわけ。(笑)





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る