第47話 同級生にばれた
すると、知らぬ間に瞳は麻保から少し離れた。
「ああ、私ちょっと寄り道していくから。じゃあね」
「そう、それはよかった」
ほっとして向こうを見ると、一人で歩いてきたからもう大丈夫だと判断した海斗が改札口を抜けて麻保に近づき声をかけた。
「やあ、大丈夫だったようだね。変な人につけられてるのかと思って心配したんだ。よかった」
「まあ、これで一安心」
後ろから友達に後をつけられて、誰と電話をしてるのか根掘り葉掘り聞かれたいきさつを話した。
すると、良かったねと背中をさすったところで、瞳がいつの間にか目の前に現れた。
「ぎょっ、瞳!」
「あらああ~~~、あら、あら、あら、あら、あらあああ~~~、麻保!」
「なんで、なんで、どうして、どうして、寄り道はどうしたのよ瞳っ!」
「まあ、麻保やっぱり待ち合わせだったのね、彼氏と」
「いえ、いえ、いえ、いえ、違うってばあ」
「私だって信じられないけど、本当だったのね」
「あの、あの、あの、あの、彼は……別に」
「ああ~~、そっかあ。親戚の男の子かな」
「そ、そ、そ、それはねえ」
麻保はしどろもどろになる。否定すれば海斗に悪いし、かといって彼氏とも言いたくない。瞳はにやにやして麻保と海斗を交互に見る。
その様子を見た海斗は、にっこり笑っていった。
「こんにちは、麻保ちゃんの友達」
「そうです。よろしく」
「こちらこそよろしく」
「あの、もしかして彼氏さんですかあ」
「まあ、そんなところです」
海斗はすんなり認めた。まったくためらう様子もなく嬉しそうだ。麻保の方は気が気ではない。明日学校で瞳にすべてをばらされると思うと恐怖すら覚える。
「今日は待ち合わせだったんですね」
「そうなんです」
もう海斗さんったら話を合わせてるんだから。早くこの場を離れなきゃいけないのに。ああ、だけどもう遅いのか。慌てふためく麻保に海斗はいった。
「あれ、麻保ちゃん慌ててるけど、どうしたの。凄い困ってるようだけど」
「友達に見られたくなかったのにい」
「えっ、慌ててたのは僕たちのことを内緒にしたかったからなの。別に知られたっていいじゃないか。悪いことをしているわけじゃないんだから」
瞳もそれに同意している。
「別に内緒にしなくてもいいですよね」
だけど、麻保の場合それは普通じゃないから困るのだ。
「だって、私の今までのイメージが!」
海斗が不思議そうに尋ねる。
「麻保ちゃんの今までのイメージって」
「麻保って男の子の顔を見ると下を向いちゃって、話もできなくなるんです。最初はそんなアレルギーがあるのかなって思ったほどで、今時珍しいっていうか、大丈夫っていうか、こっちまで心配になるくらいだったんです。だから最近いつもと様子が違うし、何かいいことがあったのかなあ~~って、学校中の話題になってて……」
「ああ~~~ん、もうやめてよ、瞳」
「だってねえ、秘密にしておくことじゃないし」
「へええ~~、そんなだったの。だけど僕とは初めから普通に話してたけど、どうしてかなあ」
「それは、驚きです!」
麻保は体がぶるぶる震えだした。もういい加減にしてほしい。
「もうっ、瞳、その話は止めて!」
麻保の瞳は涙でいっぱいになった。
さすがの瞳もおしゃべりをやめ麻保の顔を見つめた。瞳と海斗二人から見つめられて自分が小さく見えた。
「わかった、ごめん。もう言わないから、怒らないで」
「本気で怒ったの麻保ちゃん」
海斗も心配になり、麻保の涙をぬぐった。
「慌てていたのは、友達にばれるのが嫌だったからなのか。ごめん麻保ちゃん」
「いまさら遅いよ」
瞳まで今度は慰めにかかった。
「ああ~~ん、もう泣くことないよ。別に悪いことじゃないんだから。だけど、ちょっと言い過ぎたかな……」
瞳はペロリと舌を出した。
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