第31話 熱い海のデート
夏本番。
ああ、海へ行こうか山へ行こうか。
そうだわ、海斗さん運転免許を持っているって言ってたから、ドライブもいいなあ。高校生なのに、彼氏とドライブができるなんてセレブになった気分。誰かに自慢したくなるけど、それはやめておかなければ。なんせ契約彼氏だったんだもの。
想像力ばかりが膨らみ、まだ何も実行に移せていない麻保だった。
さあ、勇気を出して海斗さんを誘わなきゃ。ごくりとつばを飲み込み、スマホの画面をじっと見つめる麻保だった。
それから意を決して、メールした。もう、海でも山でもどちらでもいいわ。出かけられれば、と半ばやけくそになりながら返事を待つ。
「ああ、もしもし」
あら、あら、電話が来た。
「はい、麻保です」
「メールが来たので、電話しちゃった。その方が相談しやすいから」
「そうですね。あの、もし夏休みが取れたら、どこかへ行きたいなと思ったので」
控えめに誘ってみる。
「おお、いいなあ。そうだなあ、天気もよさそうだから海へ行ってみようか」
「わあ、行きたいです!」
「江の島とか、鎌倉とか、どうかな」
「どっちでもいいです」
どちらもあまり、というかほとんど行ったことが無いので、意見が言えないのだ。
「それじゃ、江の島にしようか」
「はい、賛成!」
と話がまとまり、海斗のバイトがない日に行くことになった。麻保は、差し当たって予定はないのでいつでも大丈夫なのだ。夏休みではあるが、土日は外した。
私のために、ほかのバイトも断ってくれているのね、嬉しいなと気分は盛り上がっていく。またまた、自分は特別だと優越感に浸る。
車で観光地へ行くと道が混んで大変だから、電車で行くことにした。家の近くで待ち合わせて一緒に行っていくれるのもうれしい。
「あちこち出かけたことが無いから、道に迷ったら大変」
「まったくしょうがないなあ、箱入り娘なんだから」
「箱入り娘なんて言う言葉を知っているの」
「まあ、聞いたことはある。麻保ちゃんの場合は、箱の中から外を眺めてドキドキしている猫みたいだね。ああ、そういえば猫って箱の中が大好きなんだった」
「私って、まるで猫みたいですね」
「まあ、そうかもしれない」
こんな変な女の子を相手に、海斗さんあきれてないかな。どうか嫌いにならないでほしいけど。
海へ行くことが決まってからは大忙し。小学生の時の学校の水泳教室以来、泳ぐどころか水につかったこともなかった。その時に来た水着が当然着られるはずがない。
スポーツ用品店に急ぎ、こういうシチュエーションではどんなのがふさわしいかと品定め。競技用では自分の能力と合わなすぎるし、露出があまりに多すぎて数ミリしかない紐で胸のふくらみを支えるのもドキドキして、とっても泳ぐ気にはならない。腿のあたりをしっかり包み込むタイプでは、ウォーキングをするみたいで、気分が盛り上がらない。
ああ~~ん、どれがいいのかな。
あっ、これなんかどうだろう。と一枚の水着を手に取った。
ビキニだけどしっかり胸をガードしてくれそうだし、ひもも丈夫そうで切れたりしないようだ。パンツの方もへそのちょっと下あたりまではあるから、ずり落ちたりはしないだろう。色も紺地にパープルのハイビスカス柄があしらわれた大人っぽい図柄。これがいいわ、と早速試着するとサイズもぴったりだった。
それに会うビーチサンダルも購入し、準備は万端整った。
やってきた海へ行く日。
「お待たせしました」
「準備はいいかな?」
「はい、水着にビーチサンダル、バスタオルを持ってきましたっ」
「天気もいいし、最高の海水浴日和、ただし日焼けしすぎないように、日焼け止めも持ってきた」
「そうですよね、あとでヒリヒリしたら大変だものね」
未津木に言われて、日焼け止めも用意していた。
平日ではあるが、結構にぎわっていた。まずは場所取り。おお、いいところに木陰がある。松の木の下の小さな木陰を発見し、そこへシートを敷く。
さあ、これから海水浴の開始だわ。さあ、海斗さんも海パン姿でお互いの水着姿に気分が盛り上がってきた。
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