過保護お姉さんの戦い ~vs.瑠璃篇 4~
「あんな
宇津科さんの
「ねえお兄さん。このお姉さん、どうしたの? なにを言ってるの?」
一見シンプルな問いながら、それに答えるのは一朝一夕には難しい。ボクと宇津科さんが共有する物は、長い長い物語の彼方にあるのだ。
しかたがないので、ボクがこれまでの人生で学んだ教訓を交えて一般化しつつ説明することにした。
「まあ、つまりあれかな。女とカネは必要以上に増えると男を不幸にする、って話かな」
「おお。よく分かんないけど、お兄さん、なんかカッコいい……」
はっはっは。そうだろう、そうだろう。
なんだコイツ。生意気なだけのガキンチョかと思ったら、意外とモノが分かっているじゃないか。
その
「それと、この二つにはもう一つの共通点がある。つまり、どちらもボクには縁がないってことだ」
「おお。お兄さん、なんかすごくカッコ悪い……」
はっはっは。だよねー。カッコ悪いよねー。
「ねえ、じゃあその子誰なの? もしかして妹とか?」
ボクが自分のトラウマを発掘している間に回復した宇津科さんが、あらためて
「違うもん! 私のお兄ちゃん、こんなブサイクじゃないもん!!!」
断固とした口調で、女子中学生がボクに先んじてその質問に答える。
それにしても「この男は自分の兄ではない」というたったそれだけの事実を指摘するのに、こんな感じの悪い言い回しって必要なんだろうか。
「なんか、サッカー部の矢作っていう人の妹なんだって。アニキに用があるっていうからアテンドしてきたんだけど」
「ああ。C組の矢作の妹なんだ」
宇津科さん、どうやらこの子のアニキをご存知のようだ。
「宇津科さん、矢作って人のこと知ってるの?」
「まあね。ちょっとしたイケメンだって、女子の間じゃ騒がれてるから」
ほほう。どうやらこの矢作妹の話も、あながち大袈裟過ぎるというわけじゃないらしい。
「ていうか、なんで三前、矢作の妹と知り合いなわけ?」
「いや。どうやらお隣さんだったらしくて……」
それを聞いた宇津科さんが目を丸くする。
「へえ? 三前と矢作んちって、隣どうしなんだ」
どうやらそうらしいんですよ。
まことに遺憾ながら、ですが……。
「それはそうと、サッカー部だったらこっちじゃなくて、第二グラウンドのほうで練習してるんじゃない?」
宇津科さんがしれっとボクの努力をムダにして下さった。
第二グラウンドは校舎から一キロ弱離れており、体育実技の授業で使う時には準備運動がてらそこまで走らされるという、苦痛と疲労の代名詞とも言える場所だった。
「だいたい野球部とサッカー部の部室棟、あそこにあんだから当たり前じゃん」
そもそも、その情報自体初耳でした。ボク。
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