〜閑話休題〜 過保護お姉さんの秘密捜査
マズいですよねぇ、これ。
紳士の秘密の
とりま、別の場所への移動が必須条件ではあるが、この光る円盤たちの次の保管場所に相応しいのはいったいどこだろうか……。
グルリと一通り自分の部屋の内部を見回す。
ベッドの下……はない。こういうブツの隠し場所としてはありふれ過ぎている。ていうか、もはや古典の域に入る。
意表をついて机の引き出し? いや、文具とか借りにきたヒロ姉が普通に開けるよ。
その時、考えあぐねたボクの目にあるものが
……うむ、ここならさすがに見つかるまい。木を隠すなら森の中、か。
自分の才覚が怖い……。
「ねえ、ハルくん」
リビングのソファーでボーッとテレビを眺めていたら、ヒロ姉がポスン、と隣に座ってきた。風呂上がりなのか、シャンプーと石鹸がほのかに香る。
「どしたの、ヒロ姉」
「今日、ハルくんの部屋にあったブルーレイを借りたんだけど、『シャイナーウッズの狩人』って、あんな映画だったかしら?」
ドバッとヘンな汗が出た。
しまった。普通に木材採取のための森林伐採が行われたらしい。
そのタイトル、ボクがお宝を
「もっと神秘的で静かな雰囲気の映画だったような気がしたんだけど、久しぶりに見たらすごく
めっちゃ素敵な笑顔で見つめ返された。
冷ややかな目で見られでもしたほうが、いくらか羞恥心と罪悪感がまぎれるものを。
額を、こめかみを、首筋を、冷たい汗が幾筋も流れ落ちていく。
「ヒロ姉……」
「なあに、ハルくん?」
「ボク、もう一回お風呂入ってくる」
「うん。ごゆっくり♡」
恐るべし、ヒロ姉。
完璧と思われた秘宝の隠し場所を、こうもたやすく見破るとは。次こそヒロ姉の想像の及ばない究極の場所を考えなければならぬ。
とはいえ、あの頭脳明晰なヒロ姉の裏をかくのは至難の技だ。ちょっとやそっとのコンセプトでは通用しない……。
今、切実に思う。
四次元◯ケットが欲しい、と。
本棚、ナイトテーブル、クローゼット。
一つ一つ候補を吟味するボクの目に次に映ったものは……。
「これだ……」
我知らず、感嘆の吐息をもらしていた。
目につきやすいように思えて、実はその内部にまでは注意が及ばないという意外性。アカデミックなベール。そして、取り出しも収納も非常に簡易という副次的な長所まで備えている。
神はボクに味方した。
……いらない。
神の加護を受けたボクには、もはや四次元ポ◯ットすら必要ないのだ!
「ハルくん、ちょっと聞いて!」
夕食後、当番で食器を洗うボクのもとにヒロ姉が駆け寄ってきた。
「ど、どどど、どうしたの、ヒロ姉」
なんかもう、ヒロ姉に声をかけられただけでビクッとする。実際、今心臓が馬に蹴られたみたいに跳ね上がった。そろそろ家への
「ハルくんの持ってる英語のリスニングの参考書、付属のDVDが日本語じゃない! しかも『日常生活編』って言うわりにはシチュエーションに偏りがあるし。出版社にクレームの電話をしようかしら!?」
洗っていた皿が手から滑り落ちて、床で音高く跳ねる。メラミン製でよかった。
「ご、ごめんなさい、ごめんなさい! もう許して下さい!!!」
何の
……もう、ダメだ。
たとえ四次元ポケッ◯があろうとも、ヒロ姉の前にはおそらく無力に違いない。
「ハルくん……」
その呼びかけに恐る恐る顔を上げると、してやったりという顔のヒロ姉と目が合った。
「どんなに一生懸命隠し場所を考えても、場所を変える時に見られてたら無意味だと思うの」
は? ……ええ!?
「え、見てたの!? どこから!!? どうやって!!!? ちょっとヒロ姉、ホント怖い!!!」
「うふふ。教えてあ・げ・な・い♡」
誰か教えて下さい。
電脳の街アキバでは、隠しカメラ発見機とかも売ってるんでしょうか?
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