過保護お姉さんの戦い ~vs.佳澄篇 17~
「どうしてそういうことになるの? 宇津科さん」
ヒロ姉がさも心外というように目を見張る。
大変不本意ながら実のところ、このボク自身からしてヒロ姉と同意見だった。
さっきは思わぬ宇津科さんの言葉に楽天的になりかけたものの、やはり現実は甘くないのだ。他の人には甘いのに、アメリカのキャンディーバーくらい甘いのに、なぜかボクにだけは甘くないのだ。
ヒロ姉と同居していようがいまいが、ヒロ姉がボクの女の子との関わりに干渉しようがしまいが、どの道ボクに彼女ができるなんて可能性はほとんどない。ごくごくわずかな希望をこめて、敢えて「まったく」ではなく「ほとんど」と表現しておくけど。
要はボクに彼女ができるかどうか、という問題には、ヒロ姉の存在はまったく影響を及ぼさない。
ただ、たとえ彼女はできなくとも、学校や下校途中の道でのちょっとした女の子とのおしゃべり、あるいは夜にベッドに寝転がってのライントークくらいは期待しても別にバチは当たらないと思う。そんなささやかな安らぎにまでヒロ姉の影が差し込むのは、確かに
「私は別に、ハルくんに彼女ができるのを邪魔するつもりはないのよ?」
歌うような調子でヒロ姉がそう言葉を繋げる。
「ハルくんにふさわしい女の子でありさえすれば、ね。私だって、ハルくんが幸せになるのは嬉しいもの」
このヒロ姉の言葉、心の底からの本音だ。子供の頃からヒロ姉という人を知っているボクなら分かる。
だがそうではない宇津科さんは疑いのこもった目をヒロ姉に向けた。
「じゃあ、どんな女の子なら三前君の彼女にふさわしいんですか?」
「まず料理は和、洋、中を一通りこなせるのが最低限の条件ね」
微塵のためらいもなくそう言い放った。いや、ヒロ姉ならそこにプラスしてエスニックもいけるんだろうけど。
「掃除、洗濯は言うまでもないけど、常に自分自身の身だしなみにも気を配る子じゃないとね。成績はそうね……、予備校の全国統一模試で偏差値六十くらいがボーダーかしら。ああ、あと英語の他に外国語がもう一ヶ国語くらいは話せないと」
ヒロ姉が一つ言葉を重ねるたび、宇津科さんの目が丸くなっていく。
ああ、やっぱりダメだ。
これじゃあ「ほとんど」じゃなくて「まったく」ボクに彼女ができる可能性はない。
「もちろん、結婚したらハルくんの身の回りのことも完璧に用意できないとダメ」
「け、結婚!!!?」
ついに宇津科さんの目がまん丸になった。入学式の夜のボクとまったく同じ反応だ。
「……て、ていうか、そもそもそんな女の子いるわけないじゃないですか」
もうなんか、宇津科さんの顔が驚愕と
「あら、いるわよ。少なくともここに一人」
ヒロ姉があどけないとすら言えるような無邪気なしぐさで自分を指さす。
ボクも宇津科さんも、もはや
「いやいや。赤城さんがそうでもしょうがないですよね?」
「……どうして?」
宇津科さんの言葉に、ヒロ姉がごくわずかに首を
「
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