過保護お姉さんの戦い ~vs.佳澄篇 12~
大きく傾いた太陽の光が、ガランとした空き教室をオレンジ色の光で照らしている。
サッカー部か、ラグビー部か、間遠に聞こえてくる運動部のかけ声以外は物音一つしない。この教室には今、二人の人間がいるにも関わらず、だ。
一人は言わずと知れたこのボク。教室のほぼ中央、やや窓寄りの位置に置かれた椅子の上で
もう一人は女の子。机を挟んでボクの反対側、差し向かいになる形でもう一脚の椅子に座っていた。
明るい色の髪が、差し込む夕陽に照らされてさらに明るく輝いている。
体重を軽く背もたれに預け、組んだ脚の上で両手を握り合わせたその姿はもう威圧感たっぷりだった。
その姿勢におけるビジュアル上のメリット、すなわちスカートからいい感じに覗いているはずの脚は、二人の間に設置された机に遮られて残念ながら見えない。くっそう。
「それで。昨日のあれ、いったいどういうこと?」
目の前の少女、すなわち宇津科さんがおもむろに口を開いた。
「なんで私が赤城さんに牽制されなきゃならないわけ?」
今、ボクが置かれているこの状況。端的に説明するならまあ、事情聴取である。
昨夜、ライントークで
けれども救いだったのは、宇津科さんの口調がボクの予想したよりずっと柔らかかったことだ。表情も威圧的な姿勢のわりにはさほど険しくない。
つまり宇津科さん、思ったほどお怒りではない。
お怒りではないが、聴取に素直に応じなければ拘束期間は無限に延期、といったところみたいだ。
「えっと……、なんと申しますかですね。実はうちの姉? がですね……」
「いや。もう疑問形はいいから……」
宇津科さんが組んだ脚をほどき、机に頬杖をついてボクの顔を覗き込んできた。
「あのさ三前。誤解しないでほしいんだけど、別に私、怒ってるワケじゃないからね? 昨日の感じじゃ、三前に怒ったってしょうがなさそうな気がするし」
そう言いながらも、少し唇を尖らせて見せる宇津科さん。怒ってるワケじゃないけど、納得いってないことがある、と暗に伝えてくる。
「だけどなんなのよ、もう! あんたとどんな関係か、とか
むきーっ! とばかりに、宇津科さんが両腕を突き上げて小規模爆発を起こした。そして次の瞬間、ハッとしたように目を見張る。
ボクが恐れていた通り、ついに彼女がその状況ではある意味当然とも言える推論にたどり着いてしまった。
「もしかして私……、赤城さんにあんたとの仲を疑われたりしてる?」
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