第四十六話 大賢者コリウスを探せ!
「つまりそれはジジィの仕事だったんだよ!」
こう言ったのはリンドウさんだ。
「この図書館の顔はジジィだ。他の国との交渉やらは全てヤツが担ってたんだ。だからこそ事は厄介なんだよナァ!」
なるほど、そういうことなんだろう。
図書館の責任者でもあるコリウスさん、彼自身の失態と合わせて、他国に報告しなければいけないだけでもなかなか骨が折れる。
「他国に言えばどうなりますか?」
僕はカエデさんにうかがった。
「それは……どのような問題が起こるかということですか」
「そう、ですね。やはり問題になるんですか?」
「でしょうね。コリウスさんがいないと知れば他国の役人がこぞって訪問してくるでしょう。どの国もこの図書館を管理化に置くことを狙っているはずです」
カエデさんはそう説明してくれた。
確かにそうだ。おそらく僕の国とてそれは例外ではないだろう。
「では、内密に僕たちだけで解決に導いたほうがいいってことですね」
「──そんな! ラルクさんたちにこれ以上迷惑はかけられませんわ」
「いえ、大丈夫ですよ。もう僕たちも十分クビを突っ込んでますから。こうなったらとことん向き合います。それに……」
やはりコリウスさん以上に気になるところはあった。
「コリウスさんと組んでいる何者かがいるとすれば、それは僕たちの探してる人物かもしれないからです」
「そうなのですね。そういうことなら是非わたくしたちに、改めて協力していただきたいです」
「もちろんです。とりあえず今日はもう遅いので……」
「ええ、今日は休みましょう。また明日の朝から活動を開始しましょうね」
「ええ、お願いします。では、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
カエデさんはそう言ってにっこりと微笑んだ。
次の日の朝、僕たちは朝食を取りながら具体的なスケジュールを確認した。
「じゃあ、その廃墟には僕たちが行ってみます」
「わたくしがそこまで案内しますね」
「ええ、ぜひお願いします」
僕たちはカエデさんに案内してもらい、一番近くの廃墟まで散策に行くことにした。
「廃墟まではここから一時間ほどで着くと思います」
「わかりました。では出発しましょう」
僕たち一行は、カエデさんといっしょに廃墟となっている古城へと出発した。
古城までの道のりは特に何事もなく、進むことができた。
古城が見えて来た頃、少し風が強くなってきたのを感じた。
「なんだかイヤな風が吹きますね。見えてきました。あれが今は使われてない、かつてこの地を治めていた王のいた城です」
カエデさんがそうつぶやき、僕もうなずいた。
古城の前まで来ると、遠くから見ていたよりもはるかに大きく、僕たちは息を呑んだ。
「立派な城だ。いつ頃建てられたものなんでしょうか」
僕はカエデさんにそう聞いた。
「およそ100年前と言われています。おそらくここ20年ほどは放置されていると思います」
「そんなに……」
その時、カミーラが鼻をひくつかせながらこうつぶやいた。
「なんだか、匂いがするのですぅ! この城の中にはナニカがいるのですぅ!」
「ホントか!? カミーラ! じゃあ、ここにコリウスさんがいる可能性も……」
「さっそく行きましょう! ラルクさん!」
シンシアが僕の後ろからそうささやいた。
古城の外は、たくさんの植物に覆われていて年代を感じさせた。だが、城の中までは日の光が届かないためか、それほど植物に侵食はされていなかった。
城の中は静かだった。何十年も前から時が止まっていることを感じさせる。
「慎重に奥へ進もう。カミーラ、何か不審な気配がしたら教えてくれ」
「わかたのですぅ!」
ここでもカミーラの鼻が役に立った。
「カミーラさんは、とても頼もしいですね」
カエデは目を丸くしながらそう言った。
「ああ、ホントにね」と僕は言う。
「いつも助かってるんです」とシンシア。
僕たちはお互いに苦笑して見つめあった。
こうして、僕たちは古城の中を進んでいった。
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