第三十八話 英知の結晶、世界図書館へ
そういえば、城の兵士から地下牢のジュリアンの様子を聞いた。
彼女は今回の天竜族の村への放火、仲間を裏切ったこと、そして、ハイオークに捕まったこと、いろいろ重なって精神を病んでしまったようで、地下牢でもほとんど放心状態になっているようだ。
かつての仲間である『真紅の華』の元メンバーたちもジュリアンのことをよく思っていなかったので、誰も面会にも行ってないそうだ。
ジュリアンが元メンバーたちのことをバカにして、上から目線で接していたのはよく伝わっていたのだろう。
彼女は孤独だった。
そして、僕とシンシアとカミーラは、マリィを連れて世界図書館へ向かうことになった。
「レナードさん、マリィちゃんを連れていってほしいってどういうことですか? 君はどうするの?」
「ボクは、村の復興を手伝わなくてはなりません。なので行けないのです。代わりにマリィを連れて世界図書館の大賢者に会いに行ってもらえませんか」
「世界図書館の大賢者?」
「そうです。そこには知をつかさどる賢者の集団がいるそうです。彼らならマリィのドラゴン化の謎を解明出来るのではないかと思うのです」
「なるほど、マリィちゃんを連れていってほしいというのはそういうわけですか。ですがマリィちゃんがドラゴンになった場合、けっこうやっかいですよね」
「それなら大丈夫です」
レナードはそう言って、袋を差し出してきた。
受け取って中身を確認すると、白い丸薬がたくさん入っていた。
「これは?」
「それは、宮廷魔導師たちが作ってくれたクスリです。マリィが苦しみだしたら一粒飲ませてください。それでドラゴン化を食い止めることができます」
「こんなものができたんですね! すごい」
「えぇ、宮廷魔導師たちが、ボクの血を元に作りました」
「えぇ! 血を! そこまで……」
「マリィを守るためなら容易いことです。ボクたちの血は竜の血と呼ばれ、様々なクスリに使うことができます。それは今まで村の中だけの秘密でした」
レナードは今回の事件がきっかけに起きた村人たちの変化を語ってくれた。
「今回の村の復興については、城の兵士たちに助けてもらいました。国王にも大変感謝しています。彼は親身に我々の話を聞いてくれました。なので、こちら側も歩み寄ろうと考えたのです」
「そうだったんですね」
「村人たちの血栓は、この国の多くの人々を救います。ボクたちは出来得る限りこの国のために助け合って生きていこうと思いました。それが結果的にはボクたち天竜族の繁栄にも繋がるのです」
「なるほど……うん、そのとおりだと思います」
「なので、ラルクさん。マリィを頼みます。あなたたちになら任せられます」
「わかりました。じゃあマリィちゃんを連れて賢者たちに会ってきますね!」
こうして、僕たちはマリィちゃんを連れて、山を3つも越えた先にある世界図書館を目指した。
そして、一週間後。
道中いろいろあったが、なんとか世界図書館に到着した。
「おっきいのですぅ! すっごくおおきいのですぅ!」
カミーラは目を丸くしていた。彼女だけじゃなく、僕たちは圧倒的な大きさの建物に驚かされた。
「こんなに大きな建物があるんですね。びっくりしました」
とシンシアが言った。
「すごいよね。この中には世界中の蔵書が保管されてるみたいだよ」
僕は図書館の存在は知っていたが、来るのは初めてだった。
「本はどこにあるのですぅ? 読んでみたいですぅ!」
カミーラの村には本があまり無かったので、珍しいのだろう。
「本がおいてあるのは2階からだから。ここにはないよ。1階は人々が暮らす居住スペースみたいだ」
「図書館に携わる人々がここに暮らしてるんですねえ」
「すごい規模だよね。1階部分は一つの町のようになってるんだから」
僕たち三人はマリィを連れて、2階へと向かった。
吹き抜けの大階段は5階部分までいっきに伸びている。2階から5階には一般書が置いてあり、6階以降は専門書などが保管されている。
「6階以降は許可がないと入れないらしい。持ち出し禁止の蔵書が眠っている宝庫らしいんだ」
「なんだかすごいのですぅ! ワクワクするのですぅ!」
カミーラがはしゃいでいると、マリィも緊張がほぐれてきたようだ。
「あたし絵本が読みた〜い!」
レナードと別れてから、あまり喋らなかったマリィもようやくしゃべるようになってきた。
僕たちは、賢者たちに会う前に少しだけ図書館を見学することにした。
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