第三十七話 ジュリアンの断罪、村の復興

 僕とシンシアとカミーラは、ジュリアンを助け出して城へと向かった。


 ジュリアンに、自分の犯した罪を認めさせるためだ。


 城には、天竜族のレナードとマリィも来ていた。村の代表者として国王に面会するためだ。


 今回、天竜族の村が放火されて全て焼け落ちてしてしまった被害は、おそらくジュリアンによるものだ。


 その断罪をするために、僕たちはジュリアンを助け出して国王の元へと連れてきたのだった。




「ラルクよ。ご苦労だった。なんと、神ノ山に密かに生息していたハイオークの集落があったとか、ヤツらは人間にとって驚異の存在。集落を壊滅させたことは大いに喜ばしいことだ」


「はっ、ありがとうございます」


「そして、ジュリアンよ。天竜族の村を放火した容疑がかかっているが、本当か」


 ジュリアンは、ずっと伏せていた顔を上げてハッキリと答えた。


「はい、あたしはあの夜、魔が差してしまい罪を犯してしまいました」


「ふむ、なぜ、そのようなことを?」


「そ、それは……」


 ジュリアンは僕の方を見た。


「この者たちと戦闘で負けてしまい、その事実を受け入れることが出来ずに衝動にかられてしまいました」


「そうか。とても許される道理はない。他に言うことはあるか」


「はい、国王様。あたしのした大罪は許されることではありません。うううぅ、どうか寛大な裁きを……ううぅぅ」


 ジュリアンのすすり泣く声が響き渡る。


 国王は、一度周囲の人々を見回してから、ジュリアンにこう告げた。


「うむ、そなたを禁固刑に処す。死罪を免れただけでもありがたく思え」


 こうして、ジュリアンの断罪は終わった。




 そして、国王と面会した天竜族のレナードは、天竜族の村の復興を国王に要請した。


 国王はこれをこころよく引き受けて、その日のうちに兵士たちで復興支援部隊を組み出発させた。


 僕たちもレナードと共に、天竜族の村の復興のためにもう一度村に向かうことにした。


 その間、マリィは城の方に残ることになった。村に連れて戻ってはドラゴンに変化した時に落ち着ける場所がないので、城の中で魔導師たちがマリィの面倒を見てくれることになった。


 最高ランクの宮廷魔導師の言葉はこうだったそうだ。


「ドラゴン娘のお守りとはなんてやっかいだ。難易度最上級のクエスト並に難しい」


 言葉でそうは言っていたが、マリィは小さなかわいい女の子なので魔導師たちも楽しく遊んでめんどうを見てあげたようだ。レナードも安心してマリィを任せていた。




「今回は本当にありがとうございました。ラルクさん。復興まで協力していただいて」


 僕たちがレナードといっしょに村に戻ってから二週間が経ち、村の復興はほぼ終わった。住居もだいたい形になり、あとは少しずつ村人たちだけで復興を行っていくこととなった。


「またマリィを迎えに行かなければ。二週間も離れていたことは今までなかったので心配です」


 レナードはそう言って苦笑した。


「マリィちゃんも寂しがっているかもしれませんね。早く戻りましょう」


 僕はそう言ってレナードとともに下山して城に向かった。




「お兄ちゃーん!」


 マリィはレナードに会うなり抱きついた。久しぶりの再会だ。嬉しいのだろう。


 僕たちは国王に復興の経緯を報告し終わった後、昼食をとっているレナードたちと合流した。


「マリィちゃん、お兄ちゃんいなくて寂しくなかった?」


 シンシアがマリィに声をかけている。


「うん! マリィいいこだから頑張っていいこにしてたー」


「そっかー。偉いね、マリィちゃんはとってもいいこだよ」


 シンシアは子供の扱いに慣れている。僕はそんな二人の様子を微笑ましく眺めていた。


 隣にいたレナードが少し険しい表情で話しかけてくる。


「ラルクさん、少しお話が……」


「ん?」


「宮廷魔導師の方たちにマリィを任せていたのですが、やはりドラゴンに変化した夜が何回かあったようです。その都度、魔導師たち複数名で抑えてくれたとのことです」


「そっか……、やっぱりマリィちゃんのこと心配だよね」


「えぇ、それでマリィの体のことを調べてくれていた魔導師の方に言われたのですが、情報が少なすぎるということで世界図書館に行って調査してみるようにアドバイスをされました」


「世界図書館ですか。確かに、あそこなら世界中の情報が集まっていますね。何かわかるかもしれません」


「えぇ、それでラルクさんに頼みがあるのですが」


「なんでしょう?」


「マリィを連れて、世界図書館へ行ってもらえませんか」

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