Sランクパーティを追放された荷物持ちは、大聖女とイチャラブしながら成り上がる。ヘイト管理の重要性にようやく気付きましたか?~今さら戻ってこいと言われても、もう手遅れです~
『真紅の華』の華麗なる冒険活劇 Ⅵ ジュリアン視点
『真紅の華』の華麗なる冒険活劇 Ⅵ ジュリアン視点
「ハイオークに食われて、ここで死ぬんだわ……」
ジュリアンこと、あたしが絶望し顔を伏せた時、向こうの方でハイオークたちの雄叫びが聞こえた。
村にはハイオークたちの住居が立っており、それに隠れていてよく見えないが、何やらいろいろな音がする。
その時、一体のハイオークが宙を待っている姿が見えた。
「ええぇ!」
あたしは、思わず目を疑った。
2メートルほどもある巨体が宙を舞う。そんな光景が目の前で起こった。
だんだんと、男女のかけ声、ハイオークたちの叫び声が近づいてくる。
そして、とうとうあたしが張り付けにされている広場に彼らはやってきた。
現れたのは、ラルクという冒険者だった。
「ラ、ラルク! ああぁ!」
ラルクは、襲いかかってくるハイオークを軽やかな身のこなしでかわしていく。
その後方からは仲間の二人がついてきている。そのうちの一人はあたしがかつてパーティから追放したシンシアだった。
ラルクは、ハイオークたちをうまく一箇所に纏めるように立ち回っている。
「カミーラ! 今だ!」
「はいっ! なのですぅ!」
カミーラと呼ばれる少女が元気よく返事をして、剣をふるう。すると4,5体のハイオークたちがまとめてなぎ倒された。
あの少女はあたしの仲間を3人同時に相手にしたつわものだった。名前も知らない、見たこともない年下の女性冒険者があれほど強いなんて信じられなかった。
ラルクの方も目で追いかけるのがやっとのスピードで、ハイオークたちを翻弄している。
今、ハッキリとわかった。彼らは強い。あたしやあたしが捨てた仲間たちよりもはるかに強かった。
あたしは、彼らを下級冒険者などとバカにしていたが、それは検討違いだった。
「あ! ジュリアンさーん! 無事でしたか!」
ラルクはだんだんと近づいてきて、あたしに声をかけた。
「今助けますからー! もう大丈夫ですよー!」
その言葉に涙が溢れた。
「ううぅ、助けて……たすけてー!」
あたしが声を張り上げると、ハイオークのボスがあたしの方を睨んだ。
ボスは巨大な斧を手にして、あたしに向かってふりかぶる。
(まずい! やられる!)
「
その時、あたしの足元に光が現れた。光は円柱状にあたしの体を包み込む。
ボスがあたしに向かって振り下ろしてきた斧の一撃は、その光によって弾かれた。
ピキーン!
「す、すごい。助かったのね……」
その時、ボスは急に体の向きを変えてラルクの方に向かって飛びかかっていった。
「えぇ! 何? 何が起こったの」
他のオークたちも一斉にラルクの方に向かっていく。
何らかのスキルを使ったのか、ハイオークたちの注意を引き付けてラルクはまとめて行く。
「もう大丈夫ですよ。ジュリアンさん。その光の中にいれば安全ですしね」
「あなた! シンシア! どうして……」
「助けにきたんですよ!」
シンシアは、あたしがかつて追放した冒険者であり、さんざんバカにしてこき使った女でもあった。
それなのに、今はあたしを助けるために危険を承知でハイオークの村にやってきてくれたというのか。
「ううぅ、シ、シンシア……この光は、あなたが?」
「はい、この中にいれば安全ですよ。ジュリアンさん」
シンシアは、そう言ってにっこりと笑った。あたしを安心させるためにそう言ってくれたのがわかった。
ラルクの方を見ると、いっしょにいた女戦士と共に、ハイオークをほとんど倒していた。
そして、とうとう最後の一匹のボスだけになった。
明らかに他のハイオークと違うレベルの高いボスの攻撃を、ラルクはいとも簡単にかわして反撃した。
一撃、二撃、三撃目を入れたところで戦いは終わった。あっという間だった。
結局ラルクと女戦士二人だけで、ハイオークの集落を壊滅させてしまった。
「な、なんて強さ……」
あたしがそうつぶやくと、隣でシンシアがこう言った。
「そうなんです! ラルクさんは、とっても強いんですよ。だってわたしを助けてくれたんですから。わたしと出会ってからも更に強くなってます」
あたしは、あんな強い男を小馬鹿にしていたのか。結局何もわかってないのはあたしの方だったのかもしれない。
ラルクがこちらに向かってきてこう言った。
「ジュリアンさん。もう大丈夫ですよ。さっそくですが、いっしょに城に来てください。全て話してもらいますよ」
村の放火のことだろう。あたしは観念した。
こうして、ラルクたちに助けられたあたしは、いっしょに下山することになった。
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