第三十四話 ドラゴン娘、マリィ

 ドラゴン化したマリィが暴れたせいで、神殿の壁が崩れた。そして、そこから出てきたのは『真紅の華』のメンバーたちだった。


「やった! 外に出れるわよ! きゃああああ、あのドラゴンよ!」


 真っ先に顔を出したジュリアンがドラゴンになったマリィを見て叫ぶ。


 縄で縛られていたはずのジュリアンたちは、自力で縄を切ったのだろう。動けるようになっていた。


「マズイ! 彼女たちは非常に好戦的だからマリィを更に刺激してしまう!」


「レナードさん! どうしますか!」


「マリィから彼女たちを引き剥がしたい!」


「わかりました! 離れるよう言ってみます!」


 僕はジュリアンたちに向かって叫んだ。


「ジュリアンさん! ドラゴンから離れてください! 攻撃しないで!」


 ジュリアンは僕の顔を見てニヤリと笑った。


「はああぁぁ? あんたバカなの? せっかく竜の血を手に入れるチャンスが来たのよ。ヤルに決まってるでしょ!」


 ジュリアンたちは武器を構えて陣形を組んだ。


「いくわよ! 『真紅の華』フォーメーションクロッカス!」


 五人はキレイな陣形を保ったまま、ドラゴンとの距離を詰めていく。


「この前は初見でやられちゃったけど、今度はそうはいかないわよ!」


 単純な動きのドラゴンの攻撃を躱して、ジュリアンが右足に斬りかかった。


「ふんっ! この前やられた借りは返すわよ!」


 他の四人がドラゴンの注意を引き付けるように周囲を飛び回っている。そしてジュリアンの剣が、ドラゴンの鱗を削り取った。


「もらいっ!」


 ザシュッ!


「グギャアアアァァァ!」


 ドラゴンが悲鳴に似た唸り声を上げる。


「ああぁ! マリィ!」


 レナードは心配そうにドラゴンを見つめた。


「やったぁ! 鱗を剥がしたわ! 竜の鱗ゲットよ!」


 ジュリアンは嬉しそうに剥ぎ取った鱗を掲げている。


「ジュリアンさん! それ以上攻撃しないで! ドラゴンが暴れては村が危険にさらされます!」


「はあぁぁ? なんで下級冒険者のあんたの言うことを聞かなきゃいけないのよ! あたしたちを助けてくれなかったくせに! このドラゴンはあたしたちが仕留めるわ! いくわよ? みんな!」


「わかったわ! ジュリアン! 今度は剣をぶっ刺して血を採りましょう!」


「良いわね! 柔らかそうな腹を狙うわよ! 目もいいわね!」


 ドラゴンを仕留める気まんまんの彼女たちは、凶暴な作戦を立てている。


「やめてくれ! 竜の血ならボクの体から採ってくれて構わない! マリィを傷つけるのはやめてくれ!」


 レナードがジュリアンたちの前に立ちはだかる。


「何わけのわからないこと言ってるのよ! どきなさい!」


「待って、ジュリアン! 今ボクの体からって言ってなかった? 天竜族にも竜の血が流れているってことじゃない?」


「ははぁ〜ん! いいこと聞いたわね。 あとでじっくり話を聞かせてもらうわ! まずはドラゴンを倒すのが先よ! あんたはどいてなさい!」


 ジュリアンは立ちはだかるレナードを突き飛ばした。そして彼女たちは、一斉にドラゴンに飛びかかった。


「レナードさん、大丈夫ですか! 立てますか?」


「ラルク、すまない。彼女たちを止めないと」


「危険です。彼女たちはSランク冒険者で、腕は確かです。ケガじゃすみませんよ!」


「多少のケガならすぐに治る。ボクにも竜の血が流れているからな」


「その……さっき言ってたことホントなんですか? 天竜族に竜の血が流れてるって」


「ああ、天竜族にずっと伝わる秘密だ。外部の者には漏らさないのが決まりだ。だが今はそんなことも言ってられない。マリィを守らなければ!」


「レナードさん! 僕たちが彼女たちを止めます! あなたが血を流す必要なんてない! もちろんマリィちゃんも!」


「ラルク……」


 ジュリアンたち五人を止めるには、少々難しいかもしれないが、やるしかない!


「ラルクさん! 聖域を出しますか!」


 シンシアが向こうから声をかけてくれる。察してくれたようだ!


「いや、大丈夫だ! 聖域展開はまだとっておく。まだ詠唱を続けていてくれ。カミーラ! 僕たちだけでなんとかするぞ!」


「わかりました! ラルクさん、シンシアさん、気をつけて!」


「カミーラ、手を出して!」


「うううぅ? はい! なのですぅ」


 急に手を出してと言われて、カミーラは何のことやらわからないといった顔をしていたが、僕の言葉を信じて手を差し出してくれた。


 僕はカミーラの手を強く握った。



スキル『挑発』! 対象は『真紅の華』の五人! 威力は特大! 共闘カミーラ!



 すると、ジュリアンたちが一斉にこちらに向き、飛びかかってきた。


 狙いは僕とカミーラの二人だ。誰かと手を繋いでいる状態でスキル『挑発』を使うと、繋いでいる相手にもヘイトが溜まる。


「カミーラ、右側の二人頼めるか」


「むむむううぅ! 三人いっぺんにいけるのですぅ!」


「せえええぇぇぃ!」

「やああああぁぁぁ!」


 キキキン! キキン! キキキン! キキン! キキン!


 僕とカミーラは二人で、ジュリアンたち五人と一斉に剣を交えた。




 そして、僕とカミーラは倒れた。






──────────────────────


あとがき


読んでいただきありがとうございました。


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