番外編:地下水路迷宮に潜むもの

「ホントなのですぅ! キラキラのドブネズミを見たのですぅ!」


「なんだって? ドブネズミ?」


「そうですぅ! ギルドに来る途中に黄金に輝くドブネズミを見たのですぅ!」


「シンシアも見たの?」


「いえ、わたしは見てません。カミーラさんに言われて振り向いた時にはもういなくなってました」


「ドブに潜っていったからぁ! きっと地下にいるのですぅ!」


「そういえば……町の地下には地下水路が張り巡らされているという話を聞いたことがある。ちょっと行ってみるか」


「ラルクさん、それならこのクエストを受けていきませんか?」


「なるほど、『地下水路の大掃除、肥大化したドブネズミ10000匹の討伐』か。なかなかハードだな」


くさいのはイヤですが、黄金に輝くドブネズミは気になりますね……」




「ここだここだ、地下水路の入り口。あれ、封鎖されてる?」


「おう、あんたら。この地下水路には勝手に入ることはできねえよ。危ねえからな」


「一応クエストを受けてきました」


「なるほど、冒険者か。Bランクなら……まあ大丈夫だろう。気をつけろよ。最近はでっけえネズミの目撃情報も出てるからな」




「下水のにおいがかなり気になるね。カミーラ、鼻が効くから余計にきついんじゃない?」


「うううぅぅ! においが強烈過ぎて、鼻はとっくにマヒしてるのですぅ」


「アハハ! そうだよね」


「ラルクさん、見てください! 大きなネズミが大量にいます」


「肥大化したネズミがモンスター化してるってのはホントだったんだ!」


「ってえええええい! りゃりゃりゃりゃりゃ!」


「すごいですね、カミーラさん! 目にも留まらぬ剣さばきです!」


「100匹くらいいたのにあっと言う間に倒しちゃったね、僕の出番無しだよ」


「まだまだ倒し足りないのですぅ! 準備運動にもなりませ〜ん!」




「かなり奥まで来ましたね。地下水路がこんなに広がっていたなんて知りませんでした」


「僕もビックリしたよ。王都の地下にこんな広い空間があったなんて、ほぼダンジョンだよこれは」


「その割に他の冒険者さんはいませんね」


においがやっぱりネックだよね。ジメジメしてるし、汚いし」


「行き止まりなのですぅ! これで終わりですかぁ?」


「あら、なんでしょう。向こうの方、壁が崩れてませんか?」


「ホントだ。壁が崩れて、奥に行けるようになってる。ちょっと行ってみよう」




「ほわわわ〜! キラキラのネズミがいっぱいいるのですぅ!」


「す、すごい! ネズミが数千匹はいる! 向こうにあるのは黄金の塊だ!」


「黄金、ですか?」


「あの黄金から出る成分が水に溶け出して、ネズミも金色に染めてたんだ!」


「そんなこと、あるんですね……」


「ネズミがいっぱい襲ってくるのですぅ!」


「数が多すぎる。とてもさばききれない!」


聖なる地セイフティスポット!」


「シンシア! ありがとう!」


「効果時間は1分です! その間なら何百回でも攻撃を防ぎますよ!」


「ネズミたちが向こうからきてくれるから都合が良いね!」


「てえええええい! 凶暴なドブネズミたちを一掃するのですぅ!」




「はぁはぁ、やっと終わったね。これでちょうどドブネズミ10000匹の討伐も達成だ……」


「クエスト達成ですね」


「この黄金の山はとても持ち帰ることは出来ないな。とりあえずギルドに報告しに戻ろう」




「ラルクさん! あんたたちまたやってくれたな! お手柄だよ!」


「ギルド長! ありがとうございます!」


「あんな量の黄金をギルドに納品してくれるなんて、あんたたちには本当に助けられてばかりだな」


「いえ、あんな大量の黄金ですから。ギルドに報告したほうがいいと思って」


「商会だけじゃなく学者たちも大騒ぎだよ。あれはただの黄金じゃなかったみたいでよ。初めて発見される鉱物だったんだ」


「えぇ! そうだったんですか?」


「ああ、自由に形を変えられる金属だ。光沢があってフォークやスプーン、食器にも適してる。熱伝導率もいいから冷やした酒が上手く飲める。今後生活用品の使い道はたくさん出てくるだろうな」


「未知の金属だったんですね。たまたま見つけられてよかったなあ」


「ラルクさん、またお手柄だったな! またよろしく頼むぜ」


「ええ、任せてください!」


「よかったですね。ラルクさん」


「お手柄ですぅ。よかったのですぅ」


「二人のおかげだよ。ありがとう!」


「では、ラルクさん、また明日。おやすみなさい」

「ラルクぅ、おやすみなさ〜い」


「ああ、二人とも、また明日な」

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